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たねや
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大事なお菓子を包むのはデザイナーの務め。

「今の会長の教えなんですけど、世の中で最高のパッケージは『みかん』だって仰られたんです。おいしそうに見えるオレンジ色の皮で、落ちても大丈夫なクッション性もあって、真ん中に目を引く緑色のヘタもあって。そして、最後は土に還る。僕らはそれを目指してデザインをしています」

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左には作業台、右には店舗を模したディスプレイがあり、常に店舗の商品展開を意識して仕事を進めます

お菓子は、そのまま手渡すことはできません。包むもの、つまり、パッケージやショッパー、お菓子を包むフィルム、さらには店舗デザインにまで、お菓子がお客さまに届くまでに多種多様なデザインが関わります。お菓子とデザインは、切っても切り離せない関係です。

たねや・クラブハリエのデザインは、すべて自社内でおこなうのだそうです。

この『CAKE.TOKYO』を運営する株式会社BAKEも、デザインを自社で行います。一方で、お菓子づくりは自社でおこない、デザインは他社に依頼するところもあります。

「たねやグループにとって、社内のデザイナーがやるメリットってどんなところがあるのでしょうか」

と、まず聞いてみたところ、意外な返答がありました。

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自社内でデザインをすることは当たり前

返答の前に、まずはたねやのデザイナーが所属する「アート室」について、簡単に紹介します。

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これまで手がけたパッケージ。所狭しと並べられています

2017年8月現在、アート室には、アートディレクターが1名、たねやのパッケージ担当が2名、クラブハリエのパッケージ担当が2名、通販用の商品カタログや紙媒体を担当する方が1名在籍しています。

手がけるデザインは、多岐にわたります。和菓子、洋菓子のパッケージ製作から、ショッパー、手提げ袋、小袋、フィルム、さらには店舗のデザインまで。

また、営業部と相談して、デザインから商品開発がはじまることもあるのだそうです。アート室を率いるのが、今回お話を聞くアートディレクターの木村冬樹さんです。

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「元々アート室ができたきっかけは、今の会長の考えからなんです。『自分がつくる菓子は我が子のようなものだ』と。そのくらい大切な想いでつくっているのだから、お菓子に着させる“べべ(着物)”までこだわるのは親の務めだろうと言うんです。そんな想いがあるから、自社内でデザインをすることは当たり前だったんです。なので、外部にデザインを任せると考えたことは一切なかったですね」

と、さらりと話す木村さん。

木村さんは、デザインの専門学校を卒業後、新聞の折込チラシでたねやの求人を見たのがきっかけで入社。それ以来、18年間デザイナーとして働いています。

木村

僕はたねやの持っている根っこの部分にすごく共感できたんです。「うちは和菓子だけを売っているのではなくて、和菓子を通して“文化”を売っているんや」って。

たねやの考える文化を伝えるために、「ラ コリーナ近江八幡」のような建物を建てたり、季節によって景色が変わる場所をつくっているんです。そういったところがこの会社の魅力だと感じます。

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コストとクリエイティブの関係性

かつて『ほぼ日刊イトイ新聞』の特集のなかで、3人の経営者に“経営とデザイン”の関係性を取材する企画がありました。

経営にとってデザインとは何か。

上記の記事にもありますが、コストを削減する反面、クリエイティブが摩耗してしまう、なんて話もあるのではないかなと思っていました。たねやはデザインに対してどういうふうに捉えているのでしょう。

木村

今の社長は、父である現会長の教えを子どものころからずっと聞いておられるのでデザインに造詣が深いんですね。だからこそ、社長がたねやを引き継いだとき、社長の直下に「アート室」をつくったんです。

お菓子にとってデザインは、重要だと考えているからこそですね。

木村

もちろん。以前、社長にパッケージのプレゼンをしたときに、こういうことはできないのか?と言われてそれは予算的に厳しいとか、この短納期でこのロットは無理だとか、コストのことばかりを考えた返事しかできなかったときがあって。社長から一喝もらったんです。

「お菓子は食べなくても生きていけんねん!」と。

その言葉を聞いたときにハッとしました。お菓子って心に安らぎを与えるものだったり、人の心のゆとりをつくるものであったりと、お客さまの生活を楽しませる存在です。その意識を僕らも忘れたらダメだと社長から学んだんです。

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ラコリーナ限定で販売している「草屋根」。デザイナーの壁下千晶さんがラ コリーナのメインショップを描いたパッケージには、お饅頭が入っています
木村

2016年にラ コリーナ近江八幡に本社を移転したんですが、ここも社長のデザインに対する思いが現れています。

他部署との壁をなくすことで、コミュニケーションを取りやすくしたりカフェのように自由に仕事ができるスペースやボードゲームも用意することで、どこの部署であれクリエイティブな仕事をする空間をつくろうとしています。このオフィスは、デザインへの重要性を感じる場所です。

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和菓子と洋菓子のパッケージデザイン

たねやグループには、和菓子の「たねや」と洋菓子の「クラブハリエ」があります。続いて、それぞれのデザインの違いと特徴について聞いてみました。

木村

うーん。根底にあるものはどっちも一緒かなと思っているんです。

理想は「みかん」。おいしそうに見えるオレンジ色の皮で、落ちても大丈夫なクッション性もあって、真ん中に目を引く緑色のヘタもあって。そして、最後は土に還る。僕らはそれを目指してデザインをしています。

和菓子は、どちらかと言うと“包む”ところに重点を置いています。

和菓子はその季節でしか味わえない旬のお菓子がたくさんあります。例えばお歳暮や豆まきであったり、日本の文化に合わせて、お菓子がメインになるように、パッケージをデザインをしています。

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「オリーブ大福」のパッケージ。「産地直送」というテーマで緩衝材のようなデザインに。“FRAGILE(壊れもの注意)”のシールにもこだわりが垣間見えます
木村

その点、洋菓子に関しては季節のイベントに合わせたパッケージをつくっています。

例えばバレンタインだったらバレンタイン専用の箱をつくったり、春の季節だったら包装紙を桜色に変えて店舗を桜色で埋め尽くしたりとか。

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バレンタインのパッケージ
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春の季節のパッケージ

先ほど見せていただいたバームクーヘンのパッケージが、店舗ごとに違ったものになっていて、すごくびっくりしました。

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木村

はじめたのは確か、2002年ごろです。当時はmixi全盛期で。どこかのコミュニティで、うちのバームクーヘンのパッケージを集めてくださっている方がいて。

それで、各店舗ごとに違ったデザインを用意したら面白いんじゃないかと思ってつくりはじめたのがきっかけでした。もちろん、通常のバームクーヘンのパッケージの方が原価は安いんです。

でもお客さまが喜んでくださるならぜひともつくりたい、と。

木村

そうですね。お客さまのために喜ばれることをやる。デザイナーの目指すべきことかなと思います。

完成されすぎないデザイン

木村

たねやのデザインの良いところでもあり悪いところでもあるのは、“素人”なところ。

素人?僕はオシャレだと思ったのですが…。

木村

“完成されすぎないデザイン”というか。たとえば老舗の和菓子屋さんって、お漬物で言ったら京漬物みたいな、料亭のコース料理で最後に出てくる小鉢にはいっているようなものだと思うんです。でも、たねやの商品って、おばあちゃんがつくる沢庵みたいなものなのかなぁ…と。

もちろん、格式高い京漬物もおいしいですけど、実際、我々が食してホッと心が休まるのっておばあちゃんちのお漬物じゃないかなと思うんです。

かっこよくてクールなデザインではなく、ところどころイラストを入れたり、遊び心を入れたりして、どこか愛着があり未完成なところは、たねやもクラブハリエも共通しているかもしれません。

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アート室が手がけたラ コリーナの全体地図。イラストでカラフルに仕上げています

最後の質問になるんですが、今後どういうことをやっていきたいと思っていますか?

木村

そんなすごいことは考えてないです。つねづね、第一にお客さまのために僕らに何ができるか考えたときに、最高のものをつくるように努力すること、もうそれだけですね。

その後、お客さまの評価を真摯に受け止め真面目にやっていれば、真面目に評価してくださると思います。何をやるにしてもそこからぶれないことだったらいいかなって。

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たねやのデザインを担当されている壁下千晶さん。営業担当者とは頻繁に商品情報を共有し、デザインについて打ち合わせを重ねています(左)
木村

今のご時世、変な色気を出したら、すぐおかしくなりますよね。賞味期限の偽装とか、一時期問題にもなりましたし。

ただひたすら、お客さまの方を向いてものづくりをしようと心がけておけば、会社とお客さまの信頼関係は築けるはず。その信頼関係が「ブランド」になるんだと思います。当たり前のことなんですけどね。

最後に、今日出社されていたデザイナーさんみなさんでパチリ。

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このインタビューのあと、木村さんがぼそっとこんな言葉を漏らしていて、たねやのデザインに対する姿勢を垣間見たように思いました。

「大それたことは何にもしてないんです。記事になるようなことあるのかなって、毎回こういう取材受けると思うんです。デザインはこうあるべきだとか、経営とデザインはこういう関係であるべきとか。でも、真実をしゃべることが一番良いかなと。そこは嘘付かないようにと思って」

WRITER

平野太一

CAKE.TOKYO 編集者。あたらしいものとおいしいものを求めて、プライベート・仕事を問わず、実際に訪ねることをモットーに、日々活動しています。 Twitter : @yriica

PHOTOGRAPHER

三浦咲恵

1988年大分県生まれ。City College of San Francisco写真学科卒。帰国後、株式会社マッシュにてスタジオアシスタントを経て、2014年鳥巣佑有子氏に師事。2016年独立。現在、ジャンルを問わず、雑誌・Web・広告等で活躍中。

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