
虫がキキキと鳴く音、葉っぱが重なる音。田んぼではアメンボがスイスイーっと走り回り、トンボが花の上で休憩をしています。
「ラ コリーナ 近江八幡」(以下、ラ コリーナ)で耳をすますと、都内のオフィスで仕事をしていると聞こえない音が当たり前のように聞こえてきます。
ラ コリーナの真ん中にある田んぼで作業している方がいたので、広報の国領さんに聞いてみると、店内外の植物、田んぼ、畑を管理しているのは、たねやで働くスタッフなのだと言います。それに、田んぼのお米づくりもたねやで働くスタッフが総出でやっているのだそう。
話を聞きながら、ふと思いました。
「えっ、お菓子屋さんがどうして農業までやっているの?」と。
たねやには“農藝(のうげい)部門”があり、専門分野ごと3つの部門に分かれています。
有機農法でのお米や野菜をつくる「北之庄菜園」と景観づくりをする「ラ コリーナ造園」、たねやの店舗に山野草の寄せ植えを届ける「愛四季苑(はしきえん)」。
2ページ目では、北之庄菜園 園長の讃岐さんに、3ページ目では、ラ コリーナ造園 園長の都志さんに、4ページ目では、愛四季苑 園長の木澤さんに話を聞いていきます。
ちなみに農藝の「藝」という文字。これには「植物に手を添え植える」という意味があります。お菓子の素材でもある植物を大切に育て、そこから生み出されるお菓子ひとつひとつが愛情あふれる作品である、つまり農業は“アート”であるという考えからこの言葉を選んだのだそうです。
今回、まず話を聞いたのは、北之庄菜園 園長の讃岐和幸さん。
新卒入社後、和菓子の工場で働き、ヨモギをつくる自社農園「たねや 永源寺農園」や、商品の衛生管理の仕事を7、8年ほど経験したのち、今の菜園部門で働いています。
讃岐さんには、冒頭で書いた質問を投げかけてみました。
「たねやは、どうして農業をするのでしょうか」
WRITER
平野太一
CAKE.TOKYO 編集者。あたらしいものとおいしいものを求めて、プライベート・仕事を問わず、実際に訪ねることをモットーに、日々活動しています。 Twitter : @yriica
PHOTOGRAPHER
三浦咲恵
1988年大分県生まれ。City College of San Francisco写真学科卒。帰国後、株式会社マッシュにてスタジオアシスタントを経て、2014年鳥巣佑有子氏に師事。2016年独立。現在、ジャンルを問わず、雑誌・Web・広告等で活躍中。