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たねや
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すべてのお菓子は「農」に通ず。

[その2]

お菓子の原材料は、農業ありき

讃岐さんの主な業務は、ラ コリーナ内にある「北之庄(きたのしょう)菜園」で、手作業で野菜をつくること、田んぼで無農薬・有機栽培のお米を育てることです。

さっそく、讃岐さんに詳しく聞いてみました。

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讃岐

お菓子の原材料はお米や小豆など、ほとんどが農産物やその加工品でできています。私たちがお菓子をつくり続けていくために大切な農業を元気にするために、たねやグループとしてどんなことができるのだろうかと考え、その解答としてはじめたのが、この「北之庄菜園」です。

ここでは、とにかく手作業で農作物をつくること。農業に触れたことがない人が増えている今、田植えや植樹などを通して、社員にも農業の大変さを学んでほしいという思いが込められています。それがお菓子づくりの基本姿勢につながります。

ここでうまくいった(有機や無農薬の)農法は周りの農家さんにも知見を共有して、いずれ滋賀県中で広がったらうれしいとよく社長が話していますね。

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讃岐さん

ラ コリーナのオープン1年前から菜園はスタートしていたそうですが、あっという間に3年が経って、最初のころと今とを比べて、何か変わってきたことはありますか。

讃岐

最初、この土地の性質を知らずにやってきたんですが、ここは元々田んぼや畑じゃなくって、造成してできた土地なので、土がすごく“痩せて”いたんですね。お世話になっている大学の先生に調べてもらったら数値でも明らかで。まずは土を改良することからはじめました。

1年が経ってある程度土が肥えてきたのですが、水はけが悪いと育たない作物、例えば根菜類は難しかったです。なぜかというと、ラ コリーナは地形的に山と湖に挟まれているから。

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確かに!雨が降ると、山に降った雨が湖まで流れるから…。

讃岐

そう、造成した土地のすぐ下に水が流れているので、根菜類が腐ってしまうんです。このままだと育てることはできないので、2017年の春に土の量を増やし、高さを上げてもらったんです。

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手前はカボチャを、奥の竹柱が見えるところではキュウリを栽培中。敷地面積は約1,000㎡

たくさん土を足したから、あとは順調に育てるのみですか?

讃岐

いやいや、そんなことなくて。土を急増させたことで土の中の肥料成分にバラツキが多くなってしまいました。畑を見ていただけるとわかりますかね、カボチャ畑の手前の葉っぱは緑色が濃く、奥のほうが薄くなっているんです。

ある意味、スタートして1年目の振り出しに戻ってしまったわけです。1〜2年かけて土をつくっていけば、その辺も均一になってくるのですが、しばらく繰り返さないといけないですね。

自分たち自身が納得できるものをつくりたい

讃岐

北之庄菜園で育てる作物は大変だったんですが、逆に、田んぼでつくるお米のほうは、そもそも水の中でつくる作物なので、育っていく過程においては全然困りませんでした。1年目から (慣行栽培の)7割〜8割ぐらいのお米が収穫できたんです。お米の味を測る「食味計」があるんですけど、それで測っても80点後半ぐらい。

普通の米は、どのぐらいの点数ですか?

讃岐

だいたい80点前後。80点後半って実は結構いい点数なんです。ただ、田植え〜収穫まで手作業でやるからめちゃくちゃしんどいですけどね。

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大きな田んぼには、うるち米の「キヌヒカリ」と「日本晴」、棚田には古代米といわれる「赤米」と「黒米」、もち米の「滋賀羽二重糯」も植えたそう。詳しい田植えの様子は、こちら

工房棟に寄ったときに木製の道具が並んでいたのですが、道具も、もしかして自作ですか?

讃岐

そうなんです。田植えのときには、等間隔で苗を植えられるように木の枠を転がすのですが、それも手づくりです。

なぜ、ここまで手づくりされるのでしょうか。

讃岐

自分たち自身が納得できるものをつくりたい。そのためには、自分たちの手で土を育て、道具も手づくりする、に至りました。

手づくりへのこだわりがすさまじいですね。

讃岐

でも、最初は大変でしたよ。田植えでは、普段お菓子の製造や店舗で接客をしているスタッフ、つまり農業の素人が見よう見まねでやっていたので、まっすぐ苗を植えなければいけないのにどんどん曲がっていってしまうんです。だから次の年はまっすぐになるようあらかじめラインを引いてその線に沿って植えるようにしました。そんな試行錯誤を繰り返して、地道にやっています。

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感覚ではなく、理論で農業をする

先ほど、北之庄菜園が3年目のタイミングで、土地を造成したという話を聞いていて、思ったことがあります。農業は結果がすぐにはわからないですし、しかもそれが正解かどうかも分からないことも多そうです。そんななか、どういうモチベーションを持って、仕事をしているのでしょうか。

讃岐

確かにね、僕も以前工場で品質管理の仕事をしていたときは、その日試して翌日に結果がわかるんです。だからすぐに次の手も打てたんです。

今の仕事は、おっしゃるように年に1回。もしうまくいったとしても、その理由が自分が何かしたことによってできたのか、環境による影響なのかも確信はないんです。

そんななかでも、去年やったことをマメに記録して、それを必要なタイミングに読み返して。去年を鑑みて今年はこうしてみようって、ちゃんと準備をすることが大切なんです。

なので、今年の田植えはすごく早く終えることができました。

環境に左右される部分は多いながら、自分の過去の経験から導かれる法則のようなものは持っていらっしゃるんですね。

讃岐

そうですね。最終的には、一からつくった北之庄菜園や田んぼでしっかりと、野菜や米がつくれるということを、何とか立証したいと思っています。

僕は大学で科学を専攻していて、当時大学の先生が「科学で説明できひんものはない」と言っておられたんです。

はい。

讃岐

昔の農業は、「〇〇したから(偶然)うまくいった」というように成功理由が曖昧になりがちです。

なので今でもいろいろな先生方にも力を借りながら、感覚的になりがちな農業を少しでも理論的にしていきたいです。

いつか、ラ コリーナでマルシェを

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北之庄菜園

例えば今後、農藝部門への投資を回収していくというような話はされているんですか。

讃岐

ないですね。儲けることが僕らの任務じゃないっていうのは、社長から何度も言われていますので。無駄遣いはもちろんだめですけど(笑)。

そうなんですね!

讃岐

ただ、ラ コリーナに来て菜園をつくる話が来てから、「いつかマルシェをしたい」とは言われています。

この北之庄菜園で採れた野菜とか、近隣の農家さんでつくられた野菜とか、ラ コリーナのマルシェで販売できたらいいなぁって。

たねやがつくる野菜、食べてみたいです!

讃岐

まだここの畑じゃ収穫量が足りないですし、土日だけやったとしても、こじんまりとした規模になってしまいます。10軒ぐらいの農家さんにご協力いただいて、ようやく賑わいが出ると仮定すると、出店していただく農家さんをどう探していくか。必要な法令諸々も勉強して、売り場をつくっていく必要もあります。課題は多いですが、やりがいでもありますね。

もしかしたら何年後かには、ここら辺にマルシェができている可能性も、なきにしもあらずなんですね。すごく楽しみです!


続いてお話を聞いたのは、ラ コリーナ造園 園長の都志憲治(つし けんじ)さん。

都志さんは、たねや勤続15年目。12年間販売スタッフとして、東京や大阪、名古屋など、百貨店を中心に販売を担当していたのだそう。そこからいろんなタイミングが重なって農藝部門へジョブチェンジ。2017年6月現在は、8名いる部門の園長ですが、最初は、”まったくの素人” だったと言います。

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WRITER

平野太一

CAKE.TOKYO 編集者。あたらしいものとおいしいものを求めて、プライベート・仕事を問わず、実際に訪ねることをモットーに、日々活動しています。 Twitter : @yriica

PHOTOGRAPHER

三浦咲恵

1988年大分県生まれ。City College of San Francisco写真学科卒。帰国後、株式会社マッシュにてスタジオアシスタントを経て、2014年鳥巣佑有子氏に師事。2016年独立。現在、ジャンルを問わず、雑誌・Web・広告等で活躍中。

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