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たねや
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すべてのお菓子は「農」に通ず。

[その3]

50年後の「森」をつくる仕事

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「もともと肌は白いんです。もう今はずいぶん黒くなりましたけど」と都志さん

ラ コリーナ造園の仕事は、端的に言うと、ラ コリーナの景観づくり。例えば、あぜ道の部分。今は雑草が生えていますが、元は栄養分がない真砂土という土で、雑草すら生えてない土地だったのだそうです。そこに近くの八幡山の植物を植えたり、田んぼの周りに流れる小さな川をつくったり。

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他にも、次ページで話を聞く「愛四季苑」で育てる山野草を置く木製の棚をつくるなど、幅広い仕事をしています。

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都志さんは販売員から農藝スタッフへジョブチェンジしたとお聞きしました。これまでやっていた仕事から、全然違った仕事をするわけで、どういう心境の変化があったんでしょうか。

都志

今だから正直に言ってしまうと、12年間続けてきた販売員という仕事に限界を感じていたんです。将来はどうしていきたいんやろう?って。

そんなことを悩みながら、漠然と「畑」をやってみたいなと思っていたタイミングと、ちょうど地元滋賀に畑つきの家を買ったタイミング、この農藝部門に誘ってもらったタイミングが重なって、縁あってチャレンジさせてもらったんです。最初は、ほんまに素人でしたよ。

ちなみに、最初に取り組んだ仕事ってなんですか?

都志

最初の仕事は、石の上に松を植えることでした。「七つ石」と呼んでいるんですけど、これは、ラ コリーナの建築デザインをされている藤森照信先生のアイデアです。ただ、先生はどうやって植えるかまではおっしゃらないんです。僕たちは、まったくやり方がわからないのに(笑)。

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都志

1回やってみて、「他にいい方法がないか」と言われたら、またやってみる。「形がちょっと悪いね」と言われたら、また直す。その「七つ石」の仕事をやったのがめっちゃ雪の降る時期でね。寒いなぁ寒いなぁって言いながら、もうひとりの相方と震えながら取り組みました。

思い返すと、あの頃から楽しかったんです、なぜか。もちろん難しいことばかりです。やっぱり自然が相手なので。でも、できたときの感動はひとしおなんです。

自然に対する見方も変わってくる

農業をはじめてから実感したことってどんなことがありますか?

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都志

そうですね、今年は梅雨の間も雨が全然降らなかったですよね。ラ コリーナでは、近くの八幡山から下ってくる水を貯水池に溜めて、そこからポンプで送って水をまいているのですが、雨が降らなさすぎて、毎日ヒヤヒヤしていたんです。

僕らにとっては憂鬱な雨でも、農業の方にとっては、恵みの雨ですよね。

都志

最近、雨が降らなさすぎて貯水池の水がなくなった日があったんです。どうしようかなと悩んでいたのですが、その日の夜に、ちょうど降ったんです。そのときの雨は、恵みの雨だと感じたなぁ。

今でこそ蛇口をひねったら水が出ますけど、昔の人は水場まで重たい水を取りに行って植物に水やりをしていたと思うと、命がけで農業をしてたんやなと感じるんですね。

水を巡って争いがあった、なんて歴史ではありましたもんね。

都志

あと、仕事をしていると見える景色も変わりました。その辺を歩いていると見つける落ち葉も何となく宝物みたいに見えてくるんです。

他にも、ラ コリーナ造園主体で行っている「どんぐりプロジェクト」という活動があります。八幡山に落ちているどんぐりを拾い集め、そのどんぐりから苗木を育て、ラ コリーナの様々な場所に植えています。10万本を目指して2009年にスタートしてから、今やっと3万本なんです。

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2015年11月下旬に植えた135本の苗。これらが数十年後、森になることを願って
都志

10〜20年で林、50年で森になると言われています。そう思うと、僕の寿命ギリギリで森になるぐらい。

自分の仕事、つまり、今の取り組みが成果として目に見えるのが、生きているうちに見れない可能性もあるわけですよね。どうして都志さんはそんなに楽しそうに仕事をできるのでしょうか。

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都志

僕の場合は、森を子どもに見せてやりたいからですね。

ちょうど農藝部門に入るタイミングで子どもができたんですね。子どもって、ほんまにかわいいんです。そのとき、この子のためにきれいな景色を残してあげられたら本望だなと思ったんです。

そして僕の子がまた子どもを生んだときに、たぶん同じような気持ちでその子のことを思うんやなと思うと、今自分が木を植えている意味は十分にあるんちゃうかなと思います。

わぁ。なんかすごくじーんときました。子どもに森を見せてやりたい、か…。自分が未来へ投資をしているという感覚、なるほどなぁと思いました。

(最後に、愛四季苑 園長の木澤さんにお話を聞きます!)

【次ページ】季節のお菓子には、季節の山野草を

WRITER

平野太一

CAKE.TOKYO 編集者。あたらしいものとおいしいものを求めて、プライベート・仕事を問わず、実際に訪ねることをモットーに、日々活動しています。 Twitter : @yriica

PHOTOGRAPHER

三浦咲恵

1988年大分県生まれ。City College of San Francisco写真学科卒。帰国後、株式会社マッシュにてスタジオアシスタントを経て、2014年鳥巣佑有子氏に師事。2016年独立。現在、ジャンルを問わず、雑誌・Web・広告等で活躍中。

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