ふわふわケーキ「アンジュ」に心いやされる、世田谷の老舗洋菓子店「プラチノ」
CAKE.TOKYO編集部
創業30年以上になる老舗洋菓子店「プラチノ」。その名を全国に知らしめたのはふわふわ食感のレアチーズケーキ「アンジュ」です。テレビや雑誌などに取り上げられ、芸能人の中にもこのケーキのファンが少なくありません。
ケーキが大ヒットしても手作りのおいしさにこだわり、むやみに店舗を増やすことなく、誠実にお菓子作りに取り組んできた「プラチノ」。
その歴史やお菓子作りのこだわり、そして「アンジュ」誕生秘話をお聞きしました。
目次
穏やかな街の一角に佇む老舗洋菓子店
「サザエさん」の原作者、長谷川町子さんが長く住んだ街として知られる「桜新町」。時間の流れまで穏やかに感じられる街の一角に洋菓子店「プラチノ」があります。
ガラス張りの大きな窓がある明るい店舗
「プラチノ」は地元・世田谷で30年以上愛されてきた老舗洋菓子店。創業者であり、シェフパティシエでもある田勢 克也さんが夫婦二人で作った豪徳寺の小さな店からスタートし、今では、上町と桜新町に2店舗を構えています。
今回訪ねたのは桜新町店。「桜新町」駅から徒歩2分ほど、緑の並木道が心地よい駅前通りにあります。店舗入り口にある丸い日よけが、まるでヨーロッパにある洋菓子店のよう。店内は白を基調にした明るい雰囲気で、気軽に入ることができます。
左:店舗入ってすぐの棚には手土産にぴったりな焼き菓子が並んでいます / 右:お菓子好きならたまらない空間です
店内に入って、すぐ目に飛び込んでくるのがズラリとケーキが並んだショーケース。イチゴを使ったフレジエやモンブランといったおなじみのケーキと並んで、スペシャリテの「アンジュ」も銀紙に包まれて、出番を待っています。
平日にも関わらず、開店と同時に次々とお客様が訪れて、ケーキを買っていく様子に変わらぬ人気ぶりがうかがえます。
食べ飽きることがないシンプルなケーキ
高校の頃から手に職をつけて、商売をしたいと考えていた田勢さんは、華やかなケーキにあこがれ、パティシエを目指します。
学校卒業後、すぐに入店したのは、今や伝説と謳われる九段下にあった名イタリアン「ラ・コロンバ」。洗い場やサービス、魚、肉担当などを経て、3年目にして、ようやくデザートを担当するようになります。
優しい語り口に人柄がにじみ出る田勢 克也さん
田勢さん
「レストランでは、洋菓子店では扱わないような素材に触れたり、知識を身に付けたりすることができました。例えば、バー担当になったこともあり、お酒の種類やワインに使われているブドウの品種に詳しくなりました。
このときの知識があるので、洋ナシのコンポートにきりっとした味わいのシャルドネ合わせるといった工夫ができます。洋菓子店とは違った発想ができるのが、僕の強みなのかなと思います。」
その後、「ラ・コロンバ」の先輩に誘われ、神宮前「リストランテ マニン」のシェフパティシエに就任。当時はイタリア料理ブームの真っ只中、田勢さんも各店から引っ張りだこで3軒のレストランを掛け持ちする忙しさでした。
そんな多忙を極める中、独立して小さな洋菓子店をオープンしました。
シンプルだけど、食感や香りにひと工夫ある繊細なおいしさがあるケーキ
念願の店で届けたいのは、見た目はシンプルだけど、中身にこだわったケーキです。
田勢さん
「飾り立てるより、素材の良さや丁寧な手作業から生まれる繊細なおいしさがあるケーキを作りたいと思いました。派手ではないけど、実は希少価値のあるプラチナのようなお菓子を作りたいと思い、店名を『プラチノ』としました。」
「プラチノ」では、当時はまだ洋菓子店では珍しかったティラミスなどイタリアンレストランでいただけるようなお菓子を販売。ティラミスブームの影響もあり、店はオープンして間もなくから大繁盛します。
朝作ったケーキが午後には売り切れてしまうぐらいの人気ぶりでした。
「若いスタッフから教えられることも多いんですよ」と語る田勢さん。スタッフへの温かいまなざしを感じます
その後、少しずつスタッフや店舗を増やし、今では上町店、桜新町店の2店舗で田勢さんの薫陶を受けたスタッフたちがケーキを作っています。もちろん、味の要は田勢さんです。
田勢さん
「お菓子を作るうえで手作業の部分が大切だと思っています。ただ、スタッフの労働環境も大事ですから、すべてを手作業でというわけにはいきません。既製品を使うにしても、自分たちの手をできるだけ入れる。それにより『プラチノ』ならではの味が生まれると思うんです。」
ふわっと夢のようにとろけるケーキ「アンジュ」
手前の真っ白なケーキが「アンジュ」。カシスのソースを下に敷いています
「プラチノ」と言えば、ガーゼに包まれた真っ白のレアチーズケーキ「アンジュ」(¥572)を思い浮かべる人も多いでしょう。
25年前に登場して以来、各種ランキング上位に入ったり、メディアなどで芸能人が「お気に入り」のお菓子として紹介するなどして、その知名度は全国レベル。今も不動の人気を誇るロングセラーです。
「アンジュ」はフロマージュブランというフレッシュチーズと生クリームで作ったレアチーズのムース。
中に忍ばせた甘酸っぱいカシスジャムがアクセントになっています。ガーゼを使って水切りするというフランス伝統の製法で作られるため、ムースを包んだガーゼの上からさらに銀紙で包む形で販売されています。
ふんわり丸い形が愛らしい
「アンジュ」のベースはフランス菓子「クレームダンジュ」。
レストラン時代にこのお菓子のことを知り、チャレンジしたという田勢さん。けれど、そのころは材料のフロマージュブランが手に入らず、断念します。その後、安定してフロマージュブランが手に入るようになり「アンジュ」が生まれたのです。
味の決め手となっているのは、良質なフロマージュブランと乳脂肪分高めの生クリーム。ふわふわと軽い口当たりでありながら、味わいにしっかりとしたコクが感じられるのはこの2つの素材にこだわっているからなのです。
「軽いけれど、食べ応えがあるというのがお菓子だと思います。どちらも高価な材料ですが、そこを妥協してしまうと違うお菓子になってしまいます」と田勢さん。
カットをすると柔らかいムースに包まれたカシスジャムがトロリ。
ふわふわとはかなく溶けていく食感とともに口いっぱいに広がるミルキーなコクと優しい甘さ、その甘さを際立たせるカシスの酸味。軽い食感だけでは終わらない奥深い味わいに「アンジュ」が長く愛される理由があるのだなと実感します。
「アンジュ」は公式Webサイトのオンラインストアからお取り寄せすることができます。ケーキはお店での製法そのままで、急速冷凍したものが届けられます。いつでも、好きな時にいただけるのがうれしいですね。
「プラチノ」を支えるクラッシックとモダン
5~6人分ぐらいはありそうな迫力ある大きさです
「プラチノ」のお菓子の中には、レストラン時代に作っていたレシピそのままに作っているものがあります。
それが直径20㎝ほどのココット型に入った「クレームキャラメル」(¥2,700)。厳選した卵と牛乳を使い、伝統的なレシピで作られた“かためプリン”です。卵と牛乳のバランスが絶妙で、芳醇なバニラの香りにレストランデザートの風格が感じられます。
左:レストランのようにカットしていただきます / 右:ほろ苦いキャラメルに濃厚な生クリームがぴったり。生クリームもセットで付いてきます
こだわりは陶器製ココット型。この大きさで、かつ陶器の型に入れて焼くことで、じんわりと中まで優しく火が入り、プルンと弾力がありつつも、くちどけがなめらかな仕上がりになるのだそう。
ココット型は次回来店時に返却すると、価格を少し安くしてくれるサービスがあります。リピーターのお客様へのうれしい気配りです。
新作もどんどんと並ぶ
チョコレートと抹茶の色の取り合わせもモダンなケーキ
ショーケースの中には「アンジュ」や「クレームキャラメル」といった定番ケーキのほかにスタッフが考えた新作ケーキも並びます。
「抹茶・オ・ショコラ」(¥580)は厨房のメインを担うため新しく入店したパティシエが作った新作。香り高い抹茶のムースの中には、ほろ苦いチョコレートクリームとくちどけの良いココア生地が隠れています。パティシエのフランス菓子の名店で研鑽を積んできた経験と「プラチノ」の伝統が合わさって生まれたケーキです。
「彼のセンスを生かした新しい『プラチノ』のお菓子。それを僕も楽しみにしているんです」と語る田勢さん。これからどんな「プラチノ」のケーキが生まれるのかワクワクしますね。
笑顔の食卓の真ん中に置きたいクリスマスケーキ
左:苺のトルテ。生クリームの白とイチゴの赤の彩りでクリスマス気分が盛り上がる / 右:ブッシュドノエル。鮮やかな緑色のピスタチオクリームは華やかな気分にしてくれます
一年で洋菓子店がいちばん、華やぐ季節、クリスマスがやってきます。「プラチノ」のクリスマスケーキもご紹介しましょう。
同店では毎年、5種類のクリスマスケーキが用意されます。毎年、いちばん人気なのが「苺のトルテ」。イチゴと生クリームをふんだんに使った、クリスマスにぴったりのケーキ。
生クリームは苦手という人におすすめなのが「クリーミーチーズケーキ」。「プラチノ」定番人気の濃厚ベイクドチーズケーキをクリスマス仕様に仕上げています。
毎年、内容が変わるのがブッシュドノエル。
今年は、しっとりとしたチョコレートスポンジにピスタチオクリームを合わせた「ノエル・ピスターシュ」。濃厚なピスタチオクリームはチョコレートとの相性が抜群です。
そのほか、大人向けのお酒をしっかり使ったケーキと、子ども向けの甘いバナナクリームを使ったケーキがあります。どのケーキにしようかと家族でワイワイ悩むのもこの時期ならではの楽しみですね。
ちなみに田勢さんは大人向けの「デリス・ショコラ」がお気に入りだそうです。
クリスマスプレゼントになりそうな、かわいいパッケージに入った焼き菓子
30年以上の歴史のある「プラチノ」には親子3代で通う人も少なくありません。お話をお聞きして、田勢さんのスタッフへの優しいまなざしと、伝統にとらわれず柔軟な姿勢でお菓子作りに向きあう姿が印象的でした。
作り手たちの優しく温かい気持ちがこもっているお菓子。これからも長く人々に愛されるお菓子の数々を届けてくれそうです。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
SHOP INFORMATION
NAME | プラチノ 桜新町店 |
---|---|
WEBSITE | https://platino.jp |
ADDRESS | 東京都世田谷区新町2-35-16 サラ・グラディオ1F |
TEL | 03-3426-3451 |
OPEN | 9:00~19:00 |
CLOSE | 木曜日 |
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