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【ひとくちのふうけい】幻のピーナッツ「遠州小落花」とともに|「杉山ナッツ」が挑む、世界一のピーナッツバターとその先にある未来

UPDATE:

CAKE.TOKYO編集部

静岡県浜松市中央区、海からの風が吹き抜ける砂地の畑。ここで育てられているのは、静岡県の希少な在来品種「遠州小落花(えんしゅうこらっか)」。かつて、世界一を獲得した“落花生”だ。
生産者は「杉山ナッツ」の杉山孝尚さん。
土づくりから収穫、焙煎、製品化まで一貫して手がけ、落花生の新たな可能性を広げている。
“ひとくちのふうけい”第3弾では、杉山さんの畑を訪ね、ピーナッツバターに込められた物語を紐解く。

目次

浜松・舞阪町の風に吹かれて

貝殻混じりの砂地

JR浜松駅から車でおよそ30分。海沿いの風景が広がる西部エリア、舞阪町に入ると、空気がふっと塩気を帯びる。
遠州灘から吹く強い風“遠州のからっ風”が松林を揺らし、浜名湖のほとりには低く広がる畑が続いている。
この地は、かつて海だった。長い時間をかけて干拓され、今では肥沃な農地となったその土には、今もなお海の記憶が残っている。

会計士から農家へ——運命を変えた一枚の記事

杉山孝尚さん

かつてアメリカで会計士として働いていた杉山さん。多忙な日々の中でも、日曜日に読む「ウォールストリート・サンデー・ジャーナル」は欠かさない習慣だった。
ある日、その一面に目を留めた一文があった。

“ENSHU PEANUT”——。

「遠州?」
思わず二度見したその言葉が、杉山さんの運命を大きく動かすことになる。
記事によると、そのピーナッツは1904年のセントルイス万博で“世界一おいしいピーナッツ”と称され、金賞を受賞した品種だという。

それが、かつて自分の故郷・遠州で栽培されていた——その事実に、杉山さんは震えた。
もともと大のピーナッツバター好きだった杉山さんの胸に、ひとつの思いが芽生える。

「世界一おいしいピーナッツでピーナッツバターを作ったら、どんな味がするんだろう」

好奇心はやがて、決意へと変わった。

「世界一おいしいピーナッツバターのメーカーをやろう」

そう決意し、杉山さんは帰国する。
しかし、地元で「遠州小落花」を買い付けようと農協を訪ねると、すでにこの品種を栽培している農家は一軒も残っていなかった。

諦めきれず、組合に残っていた古い資料を手に、当時「遠州小落花」を育てていた農家の住所を一軒ずつ訪ね歩く。
そしてある家で、「昔、畑だったのはそこだよ」と案内された裏庭に、奇跡のように自生している遠州小落花を見つけたのだ。

当時手に入った遠州小落花は、両手におさまるほどだったという

手に入った種は、わずか200粒。 両手にすっぽりと収まるほどの量しかなかったそう。

——この手の中にある種がなくなったら、遠州小落花は本当に消えてしまう。

そう実感した瞬間から、杉山さんの“農家としての人生”が始まった。
突き動かしていたのは、ただひとつ。
「世界一のピーナッツを使ったピーナッツバターを、どうしても食べてみたい」という、純粋で強い想いだった。

たった200粒の種から。農家としての一歩

提供写真

しかし、目の前には想像以上の現実が立ちはだかっていた。

「農家の資格がなければ、畑は貸せない」

農地を借りるには、自治体の認定を受けた「農業者」である必要があることを初めて知った。
杉山さんは市の農業講習に通い、収支計画と作付け計画を自ら作成。農業委員会へ提出して、ようやく“農地を借りる資格”を得た。

杉山さん

「家の近くのちっちゃな空き畑を見つけて、地主さんのところへ行って『貸してもらえませんか』と頼み込んだんです」

快諾を受けて畑を借りると、まずは草刈りからのスタートだった。耕運機もなければ、農機具も持っていない。すべて手作業。ゼロからの農業がはじまった。
そこからの3年間は、無収入で農業を学ぶ日々。育てるのは、たった200粒の「遠州小落花」——自分の手のひらに収まるわずかな命。

杉山さん

「どうやって育てるのか、誰にも教えてもらえなかった。だから、図書館に朝から晩までこもって、あらゆる資料を読み漁りました。過去の新聞、農業文献、漢文書も読みましたね(笑)……“遠州小落花”に関する記述は、ほとんど全部読み尽くしたと思います。」

内側にピーナッツを隠すように積み上げることで、動物に食べられないようにしている

誰にも頼れないからこそ、すべてが手探りだった。種まきの時期も、土の配合も、水の管理も——。数え切れないほどのトライアンドエラーを繰り返しながら、杉山さんは少しずつ「遠州小落花」の育て方を身体で覚えていった。

ときには、農作業の道具も自分で改良した。「この作業、もっと効率よくできないか」と考えながら、金属や木材を手に、自作の農具をいくつも作った。

そうして積み上げてきた10年。両手に収まった200粒の落花生は、いまや年間3トンを超える収穫量を誇るまでに。
杉山さんの畑には、今年もまた、たっぷりと実をつけた遠州小落花が風にそよいでいる。
かつて消えかけた品種は、いま、確かな命としてこの地に根を張っている。

加工へのこだわり──“語れる味”を届けるために

作り置きはせず、注文を受けてから製造をするこだわり。

杉山ナッツのピーナッツバターは、ただ「無添加でおいしい」だけでは終わらない。
素材の持つ力を最大限に引き出し、「語れる味」として届けるために、あらゆる工程に細やかなこだわりが詰まっている。

はじまりは、家庭用のフードプロセッサー1台。手探りでの製造だった。

杉山さん

「最初は本当に手作業でした。1日に作れる量なんて知れてますよ。けれど、だからこそ見えてくる“味の輪郭”があるんです」

現在はアメリカ製の業務用グラインダーを導入し、独自にカスタマイズ。

焙煎温度、豆の粒度、皮の残し具合、油の出し方。
落花生の規格や収穫時期によって、最適な条件をすべて細かく変えている。東京の顧客にはスッキリした味わい、関西では香ばしさを前面に出すなど、地域ごとの嗜好に合わせた商品設計も行う。

杉山さん

「たとえば同じ落花生でも、“遠州小落花”と“千葉半立”では香りや油分の出方がまったく違う。それに合わせて、焙煎も削り方も全部変えます。まるで料理のようですよ」

この丁寧なアプローチが、杉山ナッツのピーナッツバターを「ひと口で記憶に残る味」にしている。
多くの加工品メーカーでは、“B品”や規格外品を使って商品を製造することが一般的だ。

だが杉山ナッツでは、その常識を覆す。
あえて最高等級の“A品”だけを使用してピーナッツバターを作っているのだ。

杉山さん

「普通は“もったいない”って言われます。でも僕は、“一番いい素材はそのまま食べてこそ”って思ってる。余計なことをしなくても、“素材の力”で感動を与えられる。それを証明したいんです」

手間とコストはかかる。しかしそれ以上に、A級の落花生が持つ“香り・甘み・コクの“純度”を届けることに価値を見出している。

地域とともに育てる、“一人一株農業”の広がり

一人一株農業の取り組み

杉山さんは落花生づくりを、地域の子どもたちと一緒に楽しんでいる。きっかけは、我が子が小学校に入学したときだった。

杉山さん

「1年生の時に朝顔を植えるんですよ。で、その後、2年生になるときゅうりやらトマトやら野菜を育てて。でも3年生になると、なにもやらなくなっちゃう。校庭の隅に積みあがった空のポットが気になったんですよね。」

そんな中、「うちの落花生を育ててみませんか」と提案したことが、児童一人ひとりが落花生を育てる「一人一株農業」の始まりだ。

杉山さん

「最初は植えて、収穫して、家に持ち帰るだけだったんです。でも“ピーナッツバターが食べたい!”って声が出てきて。じゃあうちで加工してあげようって」

そうして生まれた手づくりのピーナッツバターは、今や販売まで子どもたちの手で行われている。パッケージデザインもすべて子ども自身が担当し、1人ひとつ、自分のブランドをつくって出荷するのだ。
売上の使い道も、子どもたちが考える。ある学校では、その売上で校内のエアコンを修理したこともあるという。

ピーナッツもラベルもすべて子ども自身で作る

杉山さん

「自分たちの手で育てたもので、学校が良くなるって、めちゃくちゃ誇らしい体験になると思うんです。卒業してからも“あれ、俺たちが直したんだぜ”って言えるしね」

現在は浜松市・磐田市の4校でこの取り組みが続いており、特別支援学級でも導入されている。総合の授業として年間15回近く杉山さんが訪れ、子どもたちと土を触り、落花生を語る。

授業の中で、落花生の栽培だけでなく、落花生が育つ土や堆肥の話にも広がっていく。

杉山さん

「うちの肥料は、基本的にすべて地域にあるもので作ってます。牛のふん、落花生の殻、モク…それらを発酵させて堆肥にしています。“モク”を使った堆肥って、文献にちゃんと書いてあったんですよ。昔の人は、海からモクを拾って、それで畑を肥やしてた。そういう知恵を復活させたい」

その流れで、漁師や酪農家との連携も生まれた。牛舎の床に落花生の殻を敷いたところ、牛の関節が保護されるようになり、牛も快適に過ごせるように。汚れた殻は堆肥化されて、再び畑へ戻る。
「結果的に、すごく自然な形で地域の循環ができてきたんですよ」と、杉山さんは話す。

この“つながり”こそが、杉山ナッツの農業の本質だ。循環型の仕組みは、最初から設計したわけではない。だが、必要に応じて考え、動いた結果が、地域に新たな価値をもたらしている。

杉山さん

「子どもたちにそれを伝えられるのが嬉しいんです。“こんな素材が地元にあるんだよ”って。農業だけじゃなくて、地元の資源の価値も一緒に学べる」

地域の過去を紐解き、今あるものを使い、未来へつなげる。その営みは、子どもたちの記憶の中に「自分たちがつくった」という実感として、きっと深く刻まれていくはずだ。

杉山ナッツがつくる“これからの農業”

穏やかに笑う、杉山さん

無農薬、無添加、無塩──。
「杉山ナッツ」のピーナッツバターには、ふくよかで、香ばしく、滋味深い味わいがある。

杉山さん

「うちのピーナッツバターには、いっさい何も入れてないんです。でも、おいしいって言ってもらえる。それはもう、素材の力なんですよ」

杉山さんはそう言って、穏やかに笑う。大きな味つけはしない。香料や油でごまかさない。素材そのものの“輪郭”をくっきりと浮かび上がらせるために、農業からこだわる。

杉山さん

「農業って、“育てる”っていうでしょ。でも僕は、“引き出す”ことだと思ってるんです。土の力、種の記憶、空気や風や光の流れ──それを引き出すには、ちゃんと自然と対話しなきゃいけない」

草を見つめ、土に耳を傾け、菌を育てる。ときに虫の声に耳をすませ、ときに風の流れで天気を読む。自然とともに生きる暮らしは、数字や効率だけでは測れない。

杉山さん

「畑って、毎日違う顔を見せてくれるんです。昨日まで元気だったのに、急に葉っぱが元気なくなったり。その小さな変化に気づけるかどうかが、素材の質に直結する」

日々の積み重ねは地味で地道だ。けれど、その連続が「味」として現れる。そして杉山さんが見つめているのは、土の中の落花生だけではない。

未来を担う子どもたちにも、彼の視線は向けられている。

ご紹介した商品はこちら

SHOP INFORMATION

BRAND 杉山ナッツ
ADDRESS 静岡県浜松市中央区雄踏町宇布見1411-3
WEBSITE https://www.sugiyamanuts.com/

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