日本のお菓子文化を築いてきた森永製菓が、新コンセプトのチョコレートショップ「TAICHIRO MORINAGA」を期間限定でオープン中。110年の歴史を持つ大企業ならでは蓄積データに裏打ちされた高度な技術を、今の時代に合った新しい表現方法に昇華したチョコレートのおいしさは、まさに「をかし」な体験。本プロジェクトの開発に携わったお二人にお話をお聞きしました。
「今、ココ」だけのとっておき!お菓子をこえる、「をかし」な体験を
森永製菓が手がける期間限定ショップということで、大きな注目を集めていますね。まずは、コンセプトを教えてください。
村瀬コンセプトは“お菓子をこえる、「をかし」な体験を。”ちなみに「をかし」とは、古来から「美しい、見事だ、趣がある、心が惹かれる」といった様子を表す言葉です。
1899年、まだ西洋菓子が日本になかった時代に、創業者の森永太一郎はキャラメルやマシュマロのおいしさを広めるべく奮闘しました。
未知の驚きを体験した明治時代の人々と同じように、新しいおいしさを驚きとともにお客さまにお届けしたい。森永製菓が110年という年月をかけて磨き上げてきた技術を生かして、これからの新たな100年を担っていけるような新しいお菓子づくりを実現できたら……。そんな思いを胸に立ち上げたのが「TAICHIRO MORINAGA」です。
チョコレートができるまでの工程が楽しめる、新作全5種を限定発売
聞いているだけで胸が高鳴ります。どのようなチョコレートがいただけるのでしょうか。
小野いまでは国内外のありとあらゆるチョコレートが日本でも手に入りますが、いちばん日本人が長く親しんできたチョコレートと言えば、やはり「ミルクチョコレート」だと思います。森永製菓としてはこのおいしさの原点に立ち返り、今回はミルクと砂糖が織りなすおいしさを徹底的に追及することにしました。
また、チョコレートができるまでの工程において様々に変化するチョコレートの風味や食感、その進化を体験いただける商品も展開しました。
商品を通してチョコレートの製造工程に着目して、商品化されたということに、まず驚きました。商品のラインナップと、それぞれの魅力について教えてください。
ハイクラウン
小野まずは、1964年に発売され、一世を風靡した森永チョコレートの決定版とも言える「ハイクラウン」。
発売当時のラインナップである「ミルク」「ナッツ」「クランチ」のほか、新しくダークミルクを加えた全8種類のラインナップをご用意しました。パッケージやサイズ感もいまの時代に合わせて一新し、コスメのようなコンパクトさとスタイリッシュさを意識しています。
ニブ&ニブチョコレート
続いて、ローストしたニブの野趣あふれる風味を楽しんでいただけるのが「ニブ&ニブチョコレート」。ニブとは砕いたカカオ豆のことで、これらはチョコレートを作る最初の工程を楽しんでいただける商品です。
収穫されたカカオ豆をローストし、粗く砕いた状態のニブは、直接食べるのはもちろん、サラダなど料理のトッピングにもおすすめ。カカオ豆の香りや味わいをダイレクトに味わうことができます。ニブチョコレートは、ニブをミルクチョコレートでコーティングしたもの。セット販売ですので、ぜひそれぞれ食べ比べてみてください。
リファインドチョコレート
こちらは、形成前のチョコレートを微粒子化する「リファイニング」という工程で、1ミクロン単位の粒子の違いを追求して来た森永の技術から生まれたのが「リファインドチョコレート」。
こちらはチビチビ舐めるのではなく、ぜひティースプーンにこんもりとすくい上げ、そのままゆっくりと口に運んでみてください。息を吹きかけると飛び散ってしまうので、食べるときは注意してくださいね(笑)。粉雪のようにしゅわっととろける微粒子の甘い味わいが格別です。16ミクロンと30ミクロンの2種類入りで、繊細な違いが楽しめます。
森永製菓が誇る「火の魔法」がふんだんに生かされた、奇跡のようなチョコレート
この他、「エアレーションチョコレート」と「ABURI」は、完成後のチョコレートをさらに進化させたものだとか。
村瀬森永製菓が世界に誇れると自負しているのが、「火の魔法」と私たちが呼んでいる、”ベイクド”、つまり”焼き”の技術です。
エアレーションチョコレート
村瀬「エアレーションチョコレート」は、「エアレーション(圧力をかけて微細な空気を混ぜ、チョコレートをふんわりなめらかにする技術)」によって常温では触れることができないくらいに柔らかくしたチョコレートを、ベイクド技術によって手に持てるくらいの硬さに仕上げました。濃厚な味わいと、淡雪のようなふんわりとした食感のハーモニーが魅力です。
ABURI
村瀬「ABURI」は、森永独自のベイクド技術を進化させた焼きガナッシュ。
醤油やみりん、酒粕などの発酵素材を独自の方法で炙り、うまみ成分であるアミノ酸を反応させて奥深いコクを引き出しました。食感は、外はこんがり、中はしっとりが楽しめる、新感覚のチョコレートです。
まさに「をかし」な驚きに満ちたラインナップですね。開発のどういうところに苦労されましたか?
村瀬そうですね……開発は苦労の連続でした。というか、いまも苦労している最中です(笑)。私たちが普段の仕事で大切にしていることは、品質の安定した商品を大量生産することで、安価で良質なチョコレートをより多くのお客さまに届けること。ですから、凄腕のショコラティエの手作業のみによってつくられ、ひとつひとつ形の違う高級チョコレートのような商品は、企業の性質上なかなかつくることができません。
せっかく森永太一郎の名の下に新しい挑戦をするのなら、自分たちにしかできないことをしなくては意味が無い。そこで今回選んだのが、「大量生産のノウハウと手仕事の融合」です。今回発表した商品はすべて、工場の機械も使いつつ、工程のどこかに“手作業”を取り入 れているんです。
小野「エアレーションチョコレート」や「ABURI」の火を使った工程も、大量生産することは難しい特別な技術です。それをこの値段で販売することは、正直、ビジネスとしては赤字覚悟な手間とコスト。それでも新しいチャレンジをすることに意義があると考えて、日々プロジェクトの新製品に取り組んでいます。
ずっと持っていたけれど、大量生産商品ではなかなか生かせる機会がなかった森永製菓独自の技術を、この機会にお披露目することができてとてもうれしいです。
お客さまの反応はいかがですか?
村瀬「ハイクラウン」は、涙を流して懐かしがってくださるご年配の方がいらっしゃったり、「化粧品みたいでかわいい!」とたくさん買ってくださる若い女性の方がいたりと、幅広いお客さまに好評です。
「リファインドチョコレート」は粉のまま食べるというスタイルが新鮮なようで、ありがたいことに品切れが続出しています。どの商品も性質上大量生産はできないものなので、追加生産がかかるたびに大変なのですが、スタッフ一同、嬉しい悲鳴を上げています。
確固たる地位を築きながらも新しいことに挑戦し続ける森永製菓の精神に、改めて感動しました。
村瀬近ごろのショコラティエブームもあり、日本でも「bean to bar」というスタイルがどんどん浸透していますが、森永製菓は1918年に日本で初めてカカオからの一貫製造をスタートさせていますから、実は元祖「bean to bar」なんです。
おいしくて、美しくて、趣があって、人の心を動かすような……。森永太一郎から受け継いだお菓子づくりの精神を、これからの100年につなげていけるよう、常に新しい道を模索しながら前に進めたらと思っています。
■ 教えてくれた人
新領域創造事業部 村瀬光隆さん(左)
スペースブランディングユニットゼネラルマネージャー。「TAICHIRO MORINAGA」の企画とブランディングを手がける。学生時代、卒論の研究テーマに森永製菓の社史を選んだほどの自社マニア。
テクニカルディテクター/チョコレートソムリエ 小野隆さん(右)
会社ではチョコレートのレシピ開発に携わり、プライベートではおいしいショコラティエを求めて世界中を旅する、生粋のチョコレート好き。チョコレートを愛するあまり、お給料の半分がチョコレートに消える月もあるとか!
リファインドチョコレート 1296円
ハイクラウン 各 257円
エアレーションチョコレート 5本セット 1512円
ABURI(あぶり) 1512円
SHOP INFOMATION
NAME | TAICHIRO MORINAGA |
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URL | http://www.morinaga.co.jp/taichiro/ |
ADDRESS | 東京駅グランスタ(〜2月26日)、エキュート品川(3月4日〜3月14日)、大丸梅田(3月1日〜3月14日)など、東京・大阪・名古屋等で順次展開予定。詳細はHPで確認を。 |
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