いきなりですが、「家の誕生日」という企画をご存じでしょうか?

その名の通り「家の誕生日」を祝う企画なのですが、人の誕生日を祝うことはあれど、家の誕生日を祝うことってそうそうないはずです。偶然Twitterのタイムラインに流れてきたこのサイトで “家のケーキ” を見た瞬間、リアルすぎる…!と、びっくりしてしまいました。

家の誕生日

ちなみに、元の家はこのような形です。

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調べてみると、この企画の運営者は、東京のリゾート注文住宅を請け負う、大熊工業株式会社の建築事業部KAJA DESIGN。

メインで担当したのは、KAJA DESIGNの総合企画室室長・鈴木晴江さんと、元カヤックで現株式会社ブルーパドル代表・佐藤ねじさん。そして、今回のケーキの作成に携わった、出沼麻希子さん/翔太さんご夫妻の計4名です。

どうして建築会社がこんなことまで…? 実際どうやってつくっていったの…? いろんな疑問を思い浮かべながら、吉祥寺にあるKAJA DESGINのハウスギャラリーで話を聞いたのですが、そのこだわりようにびっくりしてしまいました。

まずは、どんなふうにこの企画がスタートしたのか、経緯から聞いてみました。聞き手は編集部の平野です。

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写真左から、鈴木さん(KAJA DESIGN)、出沼麻希子さん、出沼翔太さん(カヤック)、佐藤ねじさん(ブルーパドル)

1歳になった“家”を、家族みんなで祝いたい

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鈴木私たちKAJA DESIGNは、オーダーメイドでリゾート住宅の設計・建築をしている会社です。そのリゾート住宅の心地よさを、どうしたらもっと多くの方たちにお伝えできるのだろう?と考え、出会ったのがカヤックさんとブルーパドルさんでした。

KAJA RESORT LAB.

私たちは、家は完成したら終わりではなく、住んでからがはじまりだと思っています。住んでから良いところも出てくるだろうし、もっとこうした方が良かったかもしれないと感じることもあるだろうし。それらを含めて、長く良いお付き合いをすることを目指しています。

カヤックさんたちとブレストをしていく中で、「人に誕生日があるように家にも誕生日があってもいいよね」というアイデアが出て。じゃあ1年を過ごした家を “家族の一員” として誕生日を祝うのはどうだろう?と提案してくれたのがきっかけです。そして、お祝いだったらケーキだよねということから着想を得て生まれた企画が、「家の誕生日」でした。

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ねじそのケーキは、普通のものを持っていっても特別感がないので、“きちんと家の形をしたケーキ”が届けられたら面白いんじゃないかと思いました。でもどうやって、誰がつくるの? というところで一旦ストップしてしまって。ネットでいくつか調べてみたんですが、ケーキにイラストを描くぐらいしかなく、自分たちのつくりたいイメージに合う方がなかなか見つからなかったんです。

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ねじそんなとき、ふと、カヤックの出沼(翔太)くんの奥さんが、ホテルのパティシエを経験されていて、お祝い事のときに主役の似顔絵ケーキをつくってくれていたことを思い出して、一回相談してみたんです。

そういう経緯で企画がスタートしたんですね。出沼さんは今回の依頼があったとき、どう思いましたか?

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出沼翔太カヤックのイラスト名刺にも描いてもらっているのですが、無類の甘いもの好きで。学生のときに建築を専攻していたこともあって、いつか建築の仕事をしたいなぁと思っていたんですね。そんなときに企画の相談をいただいたんです。すごくうれしかったですね。

今回依頼を受けるにあたって、実際に使用した建築図面を読んでいるときが一番楽しくて。図面を見ていると、そこに空間を感じるんです。ここには中庭が気持ちよさそうだとか。

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出沼さんがケーキの構成を決めるのに使用した、1階平面図

出沼麻希子今回私が家ケーキをつくったんですが、「ここには吹き抜けがあるから、ここをどうにかつくりたいんだけど…」って言われたんですけど、この図面には吹き抜けがあるようには見えなくて。笑 私はパティシエの知識を、彼は建築の知識を活かして、相談し合いながらケーキづくりを進めました。

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パティシエ知識と建築知識を活かした、息の合った家ケーキづくり

実際どうやってケーキをつくったのか、ここからは、出沼さんが撮影した「家ケーキ」制作ムービーをご覧ください。

出沼麻希子主人に図面を読み解いてもらって、実際の家の60分の1サイズでつくりました。建築模型だと50分の1が多いんですが、あいにく箱のサイズがなくて…。

最初は、土台となるスポンジケーキづくりから。家の形に合わせて、中央のくぼみができるよう、左・中・右と3つに切り出しました(左上)。その3つをバタークリームでつなげて(右上)、大きな1階をつくりました。くぼみの側面を塗った後で、2階部分のスポンジケーキの下に板を敷いて(左下)、重ねました(右下)。

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出沼麻希子そして、バタークリームを全体に塗った上で(左下)、壁の仕上げが異なる部分にはココアで色を変えたバタークリームを塗り、パレットで模様をつけ(右下)、屋根部分にフルーツをのせて完成です(上)。

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こうして完成したケーキがこちら!

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出沼麻希子実はドアや窓部分のクッキーも、既製品ではなく一つ一つ焼いているんです。

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鈴木今回私がお客さまの元へ直接手渡しでお届けしたのですが、フルーツをのせていただいたところが好評でした。子どもたちが取り合いになるくらい。笑

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鈴木今回の家ケーキの目的は、家にそっくりなケーキをつくることではなく、家の誕生日をケーキで祝ってご家族に喜んでもらうこと。ケーキにうまく華やかさが加わり、とってもよかったです。

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ケーキづくりと家づくりは、実は似ている部分が多かった

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ねじケーキ屋さんが使う道具って、左官屋さんや大工さんが使っているような道具と似たものが多いんです。そこで、ケーキを建築物と見立てたときにその作業は何に相当するのか、表現にこだわりました。クリームで壁部分を塗っている様子は、まるで左官職人のようですよね。


出沼翔太できるだけ実際の家に忠実につくりたかったため、窓部分はケーキに目印をつけて同じ位置と高さにしてもらったりと、妻と何度も相談しながらやりました。

まるで“大工”と“監督”のように、何回もやり取りをした上でベストな形に持っていく、その関係と似ている気がします。ケーキづくりと家づくりがこんなに似ているなんて、何だか思いも寄らなかったです。

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これからも家の誕生日をお祝いしていきたい

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鈴木家は、住んでからがはじまりです。自分たちが歳をとるにつれて家も歳をとるように、「家の誕生日ケーキ」で、自分たちの家をもっと好きになってもらいたいなと思っています。

今回お客さまにすごく喜んでいただいたので、今後も提案していこうと考えています。時間もお金もかかりますが、それよりも喜んでほしい気持ちが強いんです。

今後は、まず引き渡しのタイミングで一回相談させていただき、お客さまのご希望にに合わせた内容で、ご自宅の誕生日をお祝いしていきたいと思っています。

最後に、この企画をやってすごく良かったと思いました。ワインやお酒ならラベルだけつくればいいので簡単ですが、自分でもできること。でも、このケーキは絶対自分ではできない特別感がありますよね。

それにこういう裏話は、サイトや動画ではなかなか全部伝えきれないので、こういう風に記事化していただいてすごくうれしいです。

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ケーキには、他のものでは代替できない特別感があります。それが、自分たちが住んでいる家の形をしたケーキだったら? 僕だったらすごくすごくうれしいだろうなぁと思います。

今回お話を聞いた「家の誕生日」企画は、住みはじめて1年経つ家への感謝と、ずっと住んでいく家への未来に目を向ける、素敵な企画だなぁと感じました。奇跡的なコラボで生まれたこの企画、次回作は未定だそうですが、今後も続くそうなので、次回はどんなケーキができるのかすごく楽しみです!