【シナモンロールに導かれ/東逗子】真心たっぷり巻き込んで。「クルクルシナモン」


フードイラストレーター
まるやまひとみ
シナモンロールが好きだ。
吸い込まれそうな渦巻き、半分に割った時の縞模様。
そのアーティスティックな姿に何度陶酔したことだろう。
溶けてしまいそうな甘さと芳香に満たされ、私の奥底に眠るシナモンロールの記憶を呼び起こす。
もっとシナモンロールのことが知りたい。シナモンロールに会いたい。
シナモンロールは私をあちらこちらに連れ出し、縁を繋いでくれる。
さあ、今日も今日とてシナモンロールを求め西へ東へ…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある日降り立った東逗子駅で、私の心に人を灯す「シナモン」の文字が目に入る。
思わず足を止め覗き込めば、カウンターに愛らしい渦が整列。
「クルクルシナモン」は、2023年9月にオープンしたシナモン専門店。
シナモンロールをメインに、シナモンをふんだんに取り入れたお菓子やランチがいただける。
シナモンに魅せられた店主とシナモンに取り憑かれた私がここで出会ってしまった。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
目次
シナモンロール専門店ではない“シナモン専門店”

黒を基調としたスタイリッシュな外観だが、中に入ると…
まだ人通りの少ない午前11時。
東逗子駅から道なりに1分ほど進んでいくと辿り着く。
大きなガラス窓に描かれたシナモン、看板のシナモンロール。
2度目の来店となるこの日、慣れたような素振りで扉を開ける。

ふわっと押し寄せるシナモンの香りとやわらかい空気が包み込む。
店内を満たすシナモンの芳香に思わず深呼吸。
香りにたぐり寄せられレジへ向かうと、奥には焼けたばかりのシナモンロールがぷくぷくと顔を出し、おめかしされるのを今か今かと待っている。

シナモンとバターの香りが空気に乗って混ざり合う。
焼き上がったシナモンロールにフレーバーごとのトッピングなどを施し、見た目にも誘われるシナモンロールが完成。
定番の「オリジナル」を筆頭に、季節のフレーバーも加えた5種類ほどが並ぶ。
アップルパイやエッグタルトなどの焼き菓子も人気だ。

瓶入りのホールスパイス。シナモンスティックは細いほどグレードが高くなる。
パンも焼き菓子も全て、スリランカから取り寄せたセイロンシナモンが使われている。
カシアシナモンは大量に摂取すると体に負担がかかるのに対し、セイロンシナモンは生薬としても利用されるほど健康効果が高いとされるスパイス。
子供も大人も安心して食べられるようにと素材選びから鮮度に至るまでこだわり抜く。

スパイスと同様に、コーヒーも鮮度が大事。
シナモンはスティックを専用のグラインダーで粉末にして使用。
挽きたてのシナモンは格別の香りだ。
今年に入りコーヒーも自家焙煎をスタート。
小さいお店だからこそ新鮮さを大切にし、素材本来の香りを堪能してもらえるよう工夫している。
一番のファンが近くにいる心強さ

お化粧を済ませ、ショーケースにスタンバイ。
コロナ禍で仕事先が不安定になったのを機に起業を考えた店主。
カフェの開業を夢見た頃を思い出し、教室に通いながらパンやお菓子作りを勉強した。
どんなお店にしようか。
すでに頭の中には構想があった。
「シナモンロールを買いに行こうと誘うと付いてきてくれる」というほどシナモンロールが大好きな息子さんに触発され、一緒に食べているうちに店主もシナモン好きに。
その効能や風味をより深く味わえるのメニューとしてシナモンロールを看板メニューとしたお店を開くことを決意。

膨れた頭がお辞儀をし、選んでもらえるのを心待ちにしているかのよう。
一方で、開業にあたり「シナモン専門店」というコンセプトに周りから否定的な意見もあったそう。
しかし、「やりたい」という強い意志と、誰よりもファンでいてくれる息子さんの支えで気持ちは揺るがなかった。
試作を食べた息子さんからの的確なアドバイスにより完成度を増したシナモンロール。
オープン依頼、多くのシナモン好きが「クルクルシナモン」を目指して訪れている。
家族への愛、シナモンへの愛が包まれたシナモンロール(イラストあり)

illustration by まるやまひとみ
今回いただいたシナモンロールは
●オリジナル ¥300(税込)
●チョコナッツ ¥350(税込)
●シナモンチーズ ¥340(税込)
天然酵母と北海道産小麦を使った風味のいい生地に、挽きたてのシナモンパウダーと種子島産粗精糖を合わせた香り高いシナモンシュガー。
全シナモンロールのベースとなっており、フレーバーによってシナモン量のバランスや表面のトッピングを変えている。

手前からオリジナル、チョコナッツ、シナモンチーズ。
アイシングのシャリッとした歯触りがどこか懐かしい「オリジナル」。
とろける甘さに乗って広がるシナモンの澄んだ香りになんとも癒される。
ぎゅっとした生地は、口の中でしっとりミルキーにほどけていく。
アメリカンでも、北欧風でもない、どこか懐かしくてやさしい、まるで“お母さんの味”のようなシナモンロールだ。
レンジとトースターの二刀流で温めれば、シナモンシュガーとバターがじゅわじゅわと染み出し卒倒するおいしさに。

外から巻き取りたい気持ちと断面を眺めたい気持ちが交差する瞬間。
こぼれるほどのヘーゼルナッツをスイートチョコレートと一緒に巻き込んだ「チョコナッツ」。
口の中でシナモンとチョコが仲良くお互いを引き立て合っている。
チョコの旨味にシナモンのアクセント、ヘーゼルナッツの香味と奥行きが楽しく、焼けたチョコのほろ苦さでどんどんやみつきに。
チョコ好きにもシナモン好きにも嬉しい配分だ。

甘さがない分シナモンもややひかえめ。
一粒のピスタチオが慎ましい「シナモンチーズ」は、なんと驚きの甘くないシナモンロール。
常連さんからの要望で生まれた朝食にぴったりの食事系シナモンロールだ。
クリームチーズのコクとまろやかさ、そしてシナモンパウダーのシンプルな作りで、小麦の甘みやシナモンの香りが繊細に感じ取れる。
個人的おすすめは、かぼちゃのポタージュとの組み合わせ。
シナモンロールの新たな可能性が切り開かれた。
お客さんの意見を取り入れつつ、よりシナモンを味わってもらえるようにと日々熱心にスパイスと向き合う。
今年の春にはシナモンロールファン待望の新商品も完成した。
シナモンに溺れたいあなたのために

シナモンロール界の横綱ともいえる貫禄。
●プレミアム ¥450(税込)
シナモン量2.5倍という驚愕のシナモンロール。
「もっとシナモンを入れてほしい」というお客さんからの要望に応えたという渾身の一品。
シナモンに負けないようプレーンとは異なる生地で作られており、重量感のあるたくましい姿。

生地も香りも豊満で、なんとも魅惑的。
表面にはシナモンとアーモンドのクランブル。ザクザクの音もプレーンには無い響きだ。
かぶりつくとジリジリと舌に照らしつけるようなおびただしいシナモンに衝撃を受ける。
大きく膨れた生地は噛むほどに小麦の香りと甘みがあふれ、喉の奥までシナモンを連れてゆく。
エスプレッソに合いそうな負けん気の強いシナモンロールにシナモン好きはノックアウト。
シナモンを欲しているあなた、ぜひチャレンジを。

断面の違いもこの通り。
シナモンがもたらす安心感

シナモンをベースに数種類のスパイスを配合したチャイ。
お菓子だけでなく、ランチのルーロー飯やトマトキーマカレー、ドリンクにもシナモンが惜しみなく使われている。
チャイはアイスだとよりスパイスを感じられるとのことでいただいてみると、きび糖のやわらかな甘みのあと、切れ味のいい生姜と折り重なるスパイスのシャープな印象がじつに爽快。
気温の上がったこの日、ゴクゴクと飲みきってしまった。

逗子の工務店から出た端材をアップサイクルしたプレート。
近所の子供たちはもちろん、息子さんもシナモンロールを食べにお店に来てくれるそう。
地元の人たちとの交流を欠かさず、地域に根ざすお店として前進し続ける「クルクルシナモン」。
街のパン屋さんのような存在感が、シナモンロールに懐かしい気持ちを抱かせる。
渦巻くような香りと思いに包まれながら、ひと口ごとに頬がゆるむ。
私のシナモンロール探訪はスタートしたばかり。

さあ、あなたもシナモンの世界へようこそ。
SHOP INFORMATION
SHOP | クルクルシナモン |
---|---|
WEBSITE | https://www.instagram.com/kulukulucinnamon |
ADDRESS | 神奈川県逗子市沼間1-2-15 |
TEL | 046-813-0569 |
OPEN | 11:00~17:00 |
CLOSE | 日・月・祝日 |
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