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Bean to Bar特集 第3弾として、今回訪問した先は、渋谷区富ヶ谷。千代田線・代々木公園駅、もしくは小田急線・代々木八幡駅から、5分ほど歩くと見つかるお店です。コンクリート打ちっ放しでクールな外観が印象的。外観の模様は、Minimalのチョコレートのデザインを模しているのだそう。

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今回お話ししていただいたのは、Minimalを運営する株式会社βaceの取締役、田淵康佑さん。

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お話を聞いていくうちに、外観やロゴだけでなく、チョコレートの形状、食感など、Minimalならではのこだわりが詰めこまれたお店なのだとわかりました。その内容を対談形式にまとめました。聞き手は、編集部の平野です。

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カカオは農作物だからこそ、農家さんまで直接会いに行く

まずは、簡単にMinimalさんについて教えてください。

田淵Minimalは、2014年12月にオープンしたBean to Bar専門店です。店名のMinimalの通り、最小限の原材料であるカカオと砂糖だけでチョコレートをつくっています。添加物やミルクは一切使っていません。なので、カカオのクオリティが命なんです!

そのカカオ豆のこだわりについて教えてください。

田淵カカオ豆が獲れるのって、赤道の南北緯度20度くらい。中南米を起源として、ぼくらは、三大陸すべて(アフリカ大陸、アジア大陸、中南米大陸)のカカオ農園に行っているんです。アジアだったら、ベトナム、フィリピン、フィジー、インドネシア。中南米はニカラグア、アフリカはガーナの農園に行って、農家さんと会って話をして、豆を仕入れています。特に現地での発酵などまで深く入り込んでいるのはフィリピンとニカラグアのカカオ豆ですね。

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田淵チョコレートはお菓子なので、「加工品」っていう印象が強いかもしれませんが、原材料のカカオは「農作物」なんです。なので、農家さんたちにいかに質のよいカカオ豆をつくっていただけるかで、クオリティーが決まると言っても過言ではないので、長期的に見て、農家さんときちんとパートナーシップを組んでいます。

なるほど。もうひとつの原材料である、砂糖にはどんなこだわりがあるんですか?

田淵カカオ豆の多様な個性をチョコレートの風味にダイレクトに表現するために、クセが少ない国産の甜菜糖(グラニュー糖)を使っています。

きちんとした技術や知識を持った「チョコレート初心者」たち

MinimalさんのBean to Barチョコレートには、どのような特徴がありますか?

田淵ぜひ、一度食べてみてください!

(食べながら)…ザクザクしてる?

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田淵ザクザクとした食感を感じてもらえたかなと思います。ふつうのチョコレートはカカオ豆の粒子を15〜20μm(=1/1000m)まで細かくすりつぶしているので舌では食感を感じられないのですが、Minimalは35~40μm前後でつくっています。

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田淵チョコレートの世界では、「滑らかさ」が非常に大事なポイントなんですけど、ぼくらは「カカオをおいしく食べられる方がいいんじゃない?」と考えています。

チョコレートで食感があるものは初めてです。

田淵もともと、製造責任者の朝日が、イタリアでバリスタ、ソムリエ、パティシエとして3年間ほど修行してきたこともあって、素材のフレッシュな風味を味わえることがよいのだと考えているからです。なので、滑らかじゃないとダメ、ということもないですし、こういう食べ方をしないとダメ、ということもないです。「チョコレート」という捉え方に関して初心者だからこそ、新しいチョコレートや楽しみ方の提案をして、チョコレートの枠をもっと広げていければいいとさえ思っています。

田淵Minimalのチョコレートのデザイン。割って一口で食べるところや、好きなサイズで選べるところ、シェアするところなど、形状がユニークです。

たとえば、どんなものがありますか?

田淵最近だと、同じ農園(フィリピン)の同じ時期に収穫した発酵前のカカオ豆を使い、発酵方法のパターンを5通り変えたBean to Barチョコレートの食べ比べセットですね

田淵カカオ豆には、収穫した後「発酵」というプロセスがあって、フィリピンでは木箱に入れてバナナの葉っぱを使って発酵させるんですね。日本って発酵文化なのでノウハウがたくさんあるはずだと考え、東京農大の教授を訪ねて、お酒の発酵について教えていただいて。その後フィリピンで仲良くしている農家さんのところに行って、教わった発酵をカカオに応用して新しい風味を生み出す実験してみたんです。

実際、、どうなったんですか?

田淵ナッツのようなまろやかなものから、酸味が強くてベリーっぽいものまでできたんですね。まったく同じ地域で同じ日に収穫されたカカオ豆なのに。そうやって発酵方法だけで風味を変えたチョコレートは、Bean to Barだからこそできる商品づくり。日本で初めてで、世界でも例のないものです。(※すでに販売は終了しています)

ところで、朝日さんがコーヒーからチョコレートの世界に移ったのはどういう経緯があったんですか?

田淵修行から帰国してからはコーヒーショップをやっていたんですけども、そのときにカカオ豆を偶然手に入れたことがあって。チョコレートをつくってみて、豆の産地によってこんなに味が違うのか! とびっくりして。

コーヒーと同じように、カカオでも豆でここまで違うのか、と。

田淵そうです。そのカカオという素材を表現することに魅了されてチョコレートづくりにシフトし始めたのが、2011年くらい。日本のBean to Barスタイルの作り手の中では、かなり初期かなと思いますね。

好きな味の傾向を知ることからBean to Barに興味を持ってもいいはず

豆の産地を強調するブランドもある一方で、Minimalさんは味の傾向でパッケージ化していて。これまで話を伺う中で、カカオ豆にこだわっていることは伝わってきましたが、どうして、あえて味の傾向をパッケージにしているんですか?

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田淵おっしゃるとおり、一般的なBean to Barのブランドって「マダガスカル産 70%」のように、産地を強く打ち出しているところが多いです。だけどぼくらの場合は、「NUTTY」「FRUITY」、「SAVORY」の3つのカテゴリーで商品を展開しているんですね。それぞれ、ナッツっぽいもの、フルーツっぽいもの、スパイス系っぽいものというように。

田淵そもそもの話なんですが、お客さまの立場に立ったら、産地がどこだからというよりも、「これが好き」だとか「これってこういう味なんだな」と感じてもらう方がいいと思うんですよね。

なるほど。。確かに。

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田淵ぼくたちとしては作り手なので、産地が、農家が、焼き方が…、などなど、こだわればいくらでも話ができるんですが、一方で、あまりにも話がマニアックであってはいけないと思っているんです。

はい。

田淵少なくともまだ、「Bean to Bar」ってまだまだ始まったばかりの分野です。例えば、じぶんがコーヒーやワインに関して興味を持っていったときに、すごく複雑で何も覚えられないくらいの大量の情報をもらったら、「分かる人には分かるかも知れないけど、じぶんには分からないな」と思っちゃうんですね。

その気持ち、わかります。

田淵Bean to Barっていう新しいカテゴリーがあって、1枚が1000円くらいする決して安くない商品じゃないですか。そういうところにわざわざ足を運んでいただいたお客さまが、「おもしろいけど何も記憶に残らなかったな」と感じてしまうと、次につながらないんです。お客さまが記憶しやすいものって何だろうと考えて思いついたのが、「味の傾向」だったんです。

傾向から「好き」を選ぶと、じぶんの中に軸ができる気がします。

田淵「NUTTY」というカテゴリーの中で、「前回はハイチ産がおいしかったので、次はホンジュラス産を試してみます」というふうに、違う産地のものを選んだり、「今度はFRUITYを選んでみようかな」と違う傾向のものを選んだりと、次が選びやすいんですね。

シンプルな素材にこだわり続ける「Minimal」ができるまで

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ここまで聞いてきて、Minimalさんがどうやってできたのかを聞きたくなってきました。田淵さんは、代表の山下さんや製造責任者の朝日さんとは、どういう流れで一緒に仕事をしているんですか?

田淵途中でやりたいことが一致した、っていうのが正しいかもしれないですね。山下とは大学の友人で。山下は前職のコンサルティングファームで働く中で、日本のものづくりの技術の高さを知って、独立してビジネスをやりたいと思っていたのだそうです。そうして、様々なジャンルで調べていく中で、朝日と出会ったんだそうです。

田淵さんは、これまでどのようなことをやられていたんですか?

田淵もともとは、国際協力や地域振興に興味があって。最初はITベンチャーに勤めていたんですけど、その後、ベトナムの開発会社で社長をしたり、沖縄県で行政と一緒に、事務局長としてIT産業に関する地域振興をおこなっていました。

そこから、チョコレートとどう関わっていったんですか?

田淵ちょうど、作り手と消費者の両方に関わるスモールバッチな事業をやりたいと考えていたころで。そんなときに、山下が「Bean to Bar」っていうスタイルが来ているらしいよ、っていう話をしてくれて。話を聞いているうちに一緒にやりたいなと思って仕事をしはじめましたね。

ところで、ロゴもシンプルですね。どんな意味合いが込められているんですか?

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田淵ロゴを構成する丸と四角は、丸がカカオ豆のBean、四角が板チョコレートを示しています。また、下部分に三本線があるんですけど、チョコレートをつくるときから食べるときまで、3プレーヤーがいます。カカオ豆をつくる農家さん、チョコレートをつくる僕たち、もうひとつはチョコレートをたのしむお客さま。3つのプレイヤーが合わさってたのしむカルチャ—だと思っています。

ちなみに、お店の場所を「富ヶ谷」にしたのは理由があるんですか?

田淵富ヶ谷って、小さいけど想いの強いお店が多くて。ブルックリンみたいな、ものづくり文化があるんです。あとは、あえて最寄り駅からあまり近くない場所にお店を構えることで、店頭でスタッフと話しながら試食してみて、ゆっくりと選んでいただけるようにしたことも特徴ですね。あとは、お客さまの4割が男性というのも特徴かもしれません。

珍しいですね!

田淵コーヒーとかワインのような嗜好品文化がチョコレートにもあるんだ、って言うところに興味をもって入ってくる方が多いですね。今では男性のお客さまが3、4割になっていますね。

Bean to Barは、コーヒーに次ぐ嗜好品になれるんじゃないか

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最後に聞きたかったことなんですが。Minimalさんは、今後Bean to Barはどうなると思いますか?

田淵今って「Bean to Bar」が流行ワードみたいな感じになっていて、おしゃれなチョコレート屋さん、素材チックなチョコレート屋さんっていうふうに見られているのかもしれないですが、ぼくらはコーヒーに次ぐ「嗜好品」になれるんじゃないかと思っているんです。

…と言うと?

田淵Bean to Barって、カカオ豆ごとにレシピを変えて、豆の粒度ひとつひとつをテストしながらこだわってつくるスタイル。それってワインやコーヒーと似ていると思うんです。

確かに!

田淵ふだんお菓子としてしか見えていなかったお客さまに、カカオについて説明したり、試食してもらっておいしさを体感してもらったりして、これからも長く続くカルチャ—になるよう、まずは目の前のお客さまがチョコレートをたのしんでもらえるような取り組みをこれからもしていきたいと思っています。

ありがとうございました!