【横浜・日本大通り】横浜の街にフランスの風景を映し出す「CAFE de la PRESSE(カフェ ドゥ ラ プレス)」
フードイラストレーター
まるやまひとみ
横浜・日本大通りの一角に佇む、気品漂うクラシカルな建物。
1929年に関東大震災後の復興事業の一環として建てられた「横浜商工奨励館」は、現在、横浜市認定歴史的建造物に指定され、改修を経て2000年に「横浜情報文化センター」として再オープン。
石造りの重厚な外観や、当時の面影を残す内装からは、この場所が積み重ねてきた歴史が感じられる。
大理石の階段を上がった2階、歴史をそのまま留めたような雰囲気の中に一軒のカフェがそっと息づく。
「CAFE de la PRESSE(カフェ ドゥ ラ プレス)」は、1階のフレンチレストラン「アルテリーベ」の姉妹店として「横浜情報文化センター」の開館とともに開業。
パリの街角を思わせるクラシカルな空間には、やわらかな光が差し込み、やさしい表情を見せる。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
パリのカフェに流れる空気を感じてほしい
大きく開かれた扉の向こうは別の国
2階へ続く大理石の大階段に足をかけるだけでちょっぴり貴婦人になれたような気分。
一段一段を踏みしめながら上がっていくと、カフェはすぐ右手に。
アール・デコ調の趣に包まれた内装へと一歩足を踏み入れた瞬間、現代の喧騒から少しだけ離れたような、不思議な感覚になる。
フランスの社交場を思わせる上質な空間
コンセプトは、オーナーが暮らしていた経験のあるフランスのカフェ。
開港以来、海外の文化を受け入れてきた横浜と歴史的建造物に、パリのカフェ文化を重ねる。
店名の「カフェ ドゥ ラ プレス」は「記者のためのカフェ」という意味で、同フロアに「日本新聞博物館」があることから、新聞記者たちが集うカフェをイメージしたそう。
コース仕立てにいただけるランチタイムには家族や友人と訪れた人たちがテーブルを囲み、一層にぎやか。
デザートにドリンク、アルコールまで充実しており、心ゆくまで非日常を堪能できる。
竣工当時のままという柱や高い天井
できるだけ本物の質感を大切にしたという内装。
フランス・パリから輸入した錫(すず)のカウンターをはじめ、テーブルや椅子、食器類にいたるまでフランス製で統一。
重厚感のある質感は、グラスやカップを置くだけでも空間に心地よい空気が流れ、本場フランスのカフェの雰囲気を作り出す。
それらは、単なる装飾ではなく、この店の雰囲気をつくる大切な要素として息づいている。
季節をかたどる手づくりのケーキ
日本大通りを象徴するイチョウの形が美しい季節限定の「アップルパイ」
「カフェ ドゥ ラ プレス」のケーキや焼き菓子は見た瞬間から心が華やぐ色、かたちであふれており、訪れるたびに選ぶ楽しみがある。
季節感を演出しながらも、クラシックなお菓子が持つそのものの美しさ、素材の印象が消えてしまわないよう、ヨーロッパらしい「きちんとした味」で満足感を得られることを意識している。
シンプルがゆえに奥深く、素材の質がダイレクトに現れる。
だからこそテーブルウエアに乗せた瞬間、より特別なひと皿に感じられる。
ケーキは持ち帰りも可能。3号サイズの小さな「ザッハトルテ」はギフトにも喜ばれる。
本場フランスの味を大切にしつつ、この店を訪れるお客さんが心地よく味わえるバランスで「カフェ ドゥ ラ プレス」らしい味に仕上げている。
中でもお店の個性を表す看板メニューとなっているのが「ザッハトルテ」。
その背景には、1階にあるレストラン「アルテリーベ」の存在がある。
ヨーロッパのサロン文化や、オーストリア・中欧の音楽文化を映し出した世界観のなかで、この一品は自然とそのポジションを確立していった。
ショーケース内でひときわ存在感を放つ漆黒の艶。グッと心を惹き寄せるその姿が、席に着いてからも頭から離れない。
「カフェ ドゥ ラ プレス」に来たら外せないエスプレッソメニューとともに、窓越しの木々を眺めながらいただこう。
甘くて優雅な横浜の午後
ザッハトルテ
illustration by まるやまひとみ
「ザッハトルテ」は、しっかりとしたチョコレートの密度に、ほのかな酸味が輪郭を与えるウィーンの伝統的なチョコレートケーキ。
深く濃厚なチョコレートは、コーヒーと一緒に味わうと、またさらに引き立つ。
こちらで提供されるコーヒーは、フランスのカフェでも主流だというエスプレッソ。
イタリア製の希少なエスプレッソマシンで抽出され、店の世界観を表現したオリジナルドリンクもメニューに並ぶ。
「ザッハトルテ」 ¥600(税込)/ コーティングのチョコレートに線を描くひと工夫で可憐な印象に。
チョコレート生地にアプリコットジャムを重ね、表面を艶やかなチョコレートで覆う。
濃厚さの奥にほのかな酸味が差し込み、味に奥行きを生んでいる。
添えられた生クリームとともにくちに運べば甘さがやわらかくほどけ、余韻が静かに広がっていく。
フォークを入れると断面からじゅわっとアプリコットジャムが輝き出す。
スポンジよりは重く、ブラウニーよりは軽いほどよい生地感。
ひかえめな甘さがチョコレートの濃厚さを際立たせ、アプリコットのやさしい酸味と響き合う。
生クリームといただくことでより風味が高まり、華々しい香りが鼻を抜ける。
クラシックの旋律にも似た繊細さと力強さ。
このケーキにぴったりなのが、エスプレッソの効いたアレンジメニュー。
記者たちのカフェ
「記者たちのカフェ」¥900(税込)/ エスプレッソの濃厚さ、ミルクの白さが際立つ。
名前もパフォーマンスもユニークでコーヒー好きの心に響く「記者たちのカフェ」。
ダブルエスプレッソとスチームミルクが別々のピッチャーで用意されるので、好みに注いでいただくスタイルだ。
「日本新聞博物館」があることから、パリの気難しい記者たちが自由に味わえるようにと考案されたもの。
パリのカフェではただコーヒーを飲むだけではなく、新聞を読んだり会話をしたり、一人で考え事をしたりと、生活に根づいた文化がある。
エスプレッソの力強い香りを感じたあとに、自分好みにミルクを加えることで少しずつ変化する味わいを楽しんでほしいとの思いが込められている。
自分の手でつくる過程は、記憶に残る一杯になる。
エスプレッソとミルクがカップの中で混ざり合い、深いブラウンから徐々にベージュに変わっていく。
自分でつくるからこそ見られる、この瞬間ほど特別なものはない。
エスプレッソの香ばしさに少しずつ生乳の淡い香りが移っていく。
泡もちょいと拝借…
エスプレッソはキレのある苦味だが、クレマのまろやかさに包まれた豊かな風味とクリーミーなミルクが絶妙に融合。
ピッチャーに残ったきめ細かいミルクフォームを添えて、そのくちあたりも堪能しよう。
「ザッハトルテ」の余韻が残るくちに含めば、ほのかなミルクの甘味もあいまってビターチョコレートのテイストに。
砂糖で甘さを加えたら、ロマンチックな気分は最高潮。
今、ここで過ごす時間。窓の外に流れる時間。切り離されているようで重なり合う、ほっとする感覚。
慌ただしい日々に疲れた時は立ち止まって、ただ席に座り、何もせずに過ごしてもいい。
時間を消費するのではなく、時間と向き合えるとっておきの場所
のんびりしていると、徐々に陽が落ち着きはじめる。
日本大通りのイチョウ並木。季節によって色を変える風景は、一枚の絵葉書のように静かに佇んでいる。
さらに視線を遠くへうつせば、歴史的な街並みが横浜らしい空気をつくっている。
観光で訪れる人にとっては横浜らしい時間を感じる場所として。
地元の人にとっては日常で自然に立ち寄れるカフェとして。
多様な文化を受け入れ独自の品格を育ててきた横浜のように、はやりに流されず、「カフェ ドゥ ラ プレス」の価値を少しずつ積み重ねていきたい。
カップに手を添えコーヒーの温かさを感じながら、固結びだった心の糸をゆっくりとほどいていく。
SHOP INFORMATION
| SHOP | CAFE de la PRESSE(カフェドゥラプラス) |
|---|---|
| WEB | https://cafedelapresse.jp |
| ADDRESS | 神奈川県横浜市中区日本大通11 横浜情報文化センター2階 |
| TEL | 045-222-3348 |
| OPEN | 10:00~20:00(L.O.19:30) |
| CLOSE | 月曜日、火曜日 |
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