見事な鋏(はさみ)さばきから生まれる、まるで生きているかのような飴細工の金魚

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今日は、手塚さんの飴細工の実演を拝見しながらお話を伺います。手が休みなく動いて、ものすごい早さで飴細工ができてきますね。会話しながら手の動きがさまたげられることはないのでしょうか……。

手塚大丈夫です! 金魚はもう数えきれないほどつくっているので、完全に頭とは別回路になっているんですよ。

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いま使っているのは、バーナーと、鋏(はさみ)1本ですか?

手塚まずは電気鍋で90℃まで溶かしてやわらかくした飴を丸い形に整えてから、鋏を使って形を整えていきます。この小さい鋏が飴細工にはとてもよくて、片手で握ったまま、まるで自分の指先のように操ることができるんです。

鋏の使い方で全然違う仕上がりになるので、いちばん最初に鋏を入れる瞬間は、今でも毎回緊張します。ちなみにこの鋏は、名産地である兵庫県小野市の鋏職人の方にオーダーメイドでつくっていただいたものです。

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鋏を入れるたびに美しいヒレができて、目が離せません。透き通った飴の色がとても美しいですね。

手塚飴はそのままの状態だと透明なのですが、空気を含ませながら練るとだんだん白く濁ってきます。美しい透明感のままで仕上げるためには、やはり技術が必要です。あとは、最初から色を着けた飴もあるのですが、やはり金魚などの美しさを出すには透明の飴が合うような気がして、好んで使っています。飴細工に使われる飴はすべて私のオリジナルの配合です。

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この金魚の造形は、伝統的なものなのでしょうか?

手塚金魚のモチーフは昔から存在するようですが、このデザインは私のオリジナルです。飴細工のデザインはいろいろなものがありますが、やはり透明感のある飴は、魚やイカなど、水生生物との相性がいいように思います。

わあ、もう完成しましたね! あっというまのできごとで、魔法を見ているようでした。透明の飴がきらきらと輝いて、金魚がいまにも動き出しそうです。

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手塚飴はどんどん固まるので、だいたい3〜5分で成形しなければいけません。飴細工は手早さ勝負なんです。形が整ったら、しばらく飴細工を横に回転させて中までしっかり固めて、最後に彩色をすれば完成です。

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ずっと飾っておきたいくらいきれいですね!

手塚専用の飾り箱に入れた状態でお渡ししますので、湿気にさえ注意すれば半年以上もちますよ。その他、お好みの形でオーダーも承っています。ペットの動物の飴細工を頼まれる方も多いですね。

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やはり観賞用というのが主な用途でしょうか?

手塚そうですね。食用の飴としては「ボンボン飴」や「うちわ飴」がおすすめです。

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江戸の日常生活に欠かせない「うちわ」をモチーフにしたキャンディーに伝統的な和柄を施した、ソラマチ店限定の「うちわ飴」630円。

“ダサくない”生き方を求めて、花火職人から、独学で飴細工職人へ

手塚さんは、21歳で「アメシン」を立ち上げていらっしゃいますが、どうやってこの世界に入られたのですか。

手塚まったくの独学です。小さなころから粘土や造形は好きで、手を動かしたりものをつくったりする世界で生きていきたいと思っていました。でも、10代の頃は花火師をやっていたんですよ。

えっ、花火師ですか! 花火師から飴細工職人への転身というのも、珍しいですね……。

手塚昔から日本独自の伝統に興味があったので、国家資格を取って花火師として志をもって働いていたのですが、日本古来の花火よりも輸入品の安い花火が横行するなど、花火の業界もいろいろ問題をかかえていることが分かって。だんだん違和感を感じるようになり、「中国の花火工場の責任者をやってくれ」と言われたのをきっかけに業界を離れました。

花火職人をやめるか悩んでいたときに、花火師の先輩が「悩んだときは、自分のやっていることをダサいと思うかどうかをよく考えろ。ダサいと思ったら終わりだぞ。ダサくない生き方をしなくちゃだめだ」って背中を押してくれて。その先輩の言葉は、いまでも折に触れては思い出します。

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なんてかっこいい先輩なんでしょうか……。

手塚花火師をやめてから、子どものころに父から「おまえはものづくりが好きだし、飴細工職人にでもなれば?」と言われたことを思い出して。

飴細工を調べてみたら、誰もが知っている立派な伝統工芸であるのに、資料もほとんどなければしっかりと技術を後世に伝えている組織もなく、伝統工芸としては壊滅状態にあることを知りました。これは、自分がはいる隙間があるぞと思い、そこからはひたすら独学でした。

飴細工をアピールすることで職人という仕事を花形にしたい

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この世界に入って改めて気づいた、飴細工の良さはありますか。

手塚今実演をしてみせたように、ものづくりの過程がそのまま表現活動になるライブ感は、飴細工ならではだと思います。ゼロから完成までをお客さまの前で行うので、ごまかしがきかない。あとは、手を加えだすときりがない彫刻などと違って、飴が固まってしまうまでの約3分の間にすべてを仕上げなくてはいけないという緊張感も面白い。

確かに、先ほどの飴細工を拝見していて、即興ライブのような高揚感がありました。できあがるのが物ではなく飴だというのも粋でいいですね。

手塚飴細工は、やればやるほど上達していく技術だと思います。自分自身、毎日のようにこうして金魚をつくっていると、金魚の表情がどんどん進化していくんですよ。去年のいまごろつくった金魚と、いまつくったこの金魚では、自分の中ではかなりの違いがあります。

手塚さんはテレビCMや番組など、いろんなメディアにもひっぱりだこですね。飴細工実演も一種のパフォーマンスですし、繊細ながらも華やかなイメージがあります。

手塚見てくださった方の記憶に残るとうれしいですね。自分が飴細工を極めることで、廃れていた飴細工という文化は実はこんなにかっこいいんだってことを「アメシン」を通して伝えたい。そのために、実演販売や飴細工教室など、いろんな形で飴細工の魅力を伝えていきたいと思っています。

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■ 商品リスト

「金魚」1個 3480円(値段は時期により変更になる場合があります)
「うちわ飴」630円
「ボンボン飴」650円

■ 教えてくれた人

手塚新理さん
手塚工藝株式会社代表。1989年、千葉県生まれ。幼少より造形や彫刻に勤しみ、花火師を経て、独学で飴細工を始める。2013年、東京浅草に飴細工の工房店舗「浅草 飴細工アメシン」を設立。2015年、飴細工の実演が見られる「アメシン ソラマチ店」を開店。現在、7名の弟子をかかえる。

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