益子陶器市の魅力は、普段なかなか話す機会のない作家さんと直接言葉をかわしながら、お買い物ができること。作り手の方の想いや作品ができるまでのストーリーを聞くと、うつわにとても愛着がわいてきます。
今回お話を伺った若手陶芸家の広瀬佳子さんも、作品が売れることを「お嫁に行く」と表現しているほど、まさに我が子のように大切に一品一品作りあげているのだなと感じました。
シックな色味と、エレガントなかたちが魅力の広瀬さんのうつわは、特に女性から大人気で、CAKE.TOKYOチームが広瀬さんのテントに到着したころには、すでにこの洋皿シリーズは完売……(泣)。
素朴なお菓子も、一気に上質感を漂わせる洋皿のパワー! うつわ選びのセンスが身につくと、料理の腕前も上がったように思われるそうですよ。
陶器市での人気ぶりからも、今後の活躍がますます期待される陶芸家・広瀬佳子さんに、お話を伺いました!
陶芸を始めたきっかけを教えてください。
広瀬もともと文化史に興味があり、大学生の頃から美術館でアルバイトをさせてもらっていました。学芸員として働くのが当時の目標で、勉強と称してジャンルを問わずに展覧会を見ていくうちに、うつわの展示会にも興味をもつようになりました。
広瀬大学を卒業した翌年頃に、ルーシー・リーやハンス・コパーの大規模な展示が都内でたまたま続けて開かれていたのですが、作品だけでなく制作過程を知ったことで、プロセスに宿る熱意を感じたのです。それ以来、モノを生み出す側に立ちたいと思うようになり、陶芸を始めました。
ものづくりのテーマについて。どんなことにこだわって作陶されていますか?
広瀬材料は磁器土を使っています。理由は大きく分けて二つあり、一つは焼成温度が高く丈夫かつ透光性があることと、もう一つは粒子が細かいので、生地が滑らかな質感に仕上がることです。
広瀬制作方法は作りたい形にあわせて、ろくろや石膏型を使った鋳込み(カップや小鉢など)、たたら(角皿や洋皿など)を使い分けています。釉薬(素焼きの陶磁器の表面にかけ色味や光沢を与える化合物)は自分で調合したものを数種類使っています。磁器土の生地としての丈夫さと、釉薬による鮮やかな色合いを合わせもつことで、華やかなうつわをいつもの食卓で安心して使っていただけるようにと思っています。
作品のインスピレーションはどんなところから得ていますか?
広瀬直接的には中国磁器、イングランドのアンティーク食器、日本の民芸品をよく目にしていました。現代美術の展覧会にも、よく足を運びます。ものの見方を考える上で、現代美術は様々な視点を与えてくれるので、刺激になります。
広瀬作品の雰囲気には、江戸文化の色に対する感覚を参考にしています。一例を挙げますと、江戸っ子たちのあいだでは茶色や鼠色が微妙な色合いの差でたくさん種類があり、とても人気を博していたそうです。ニュアンスを愛したおしゃれな江戸っ子に敬意を込めて、青みがかったグレーの釉薬は青鼠(あおねず)と呼んでおります。
「益子」という土地の魅力を教えてください。
広瀬町の方々の懐の深さと、同業者がたくさんいるので、困った際に助けあえることです。
好きなお菓子があれば教えてください。
広瀬スコーンと甘納豆です。スコーンはプレーンのものをクロテッドクリームを付けて頂くのが好きです。甘納豆は、金沢にある「かわむら」さんの甘納豆が甘過ぎず、お豆の美味しさが感じられ、後味もさっぱりしているので大好きです。
広瀬さん、ありがとうございました!
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