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【旅とおやつ。岐阜編その2】なにげない日常に華を添える。器から食卓の提案を。

UPDATE:

フードイラストレーター

まるやまひとみ

前回ご紹介した通り、岐阜県は焼きものの一大産地。
私が岐阜へ訪れることになったきっかけも、岐阜にある陶磁器メーカーさんでした。
多治見市のお隣に位置する土岐市。
豊かな自然に囲まれたこの地で長年に渡り私たちの食卓を支えている食器の生産工場があります。
この記事では“器”に着目し、食事からスイーツまでを二つの記事に分けてご紹介しますので、いつもと違う視点でご覧いただけたら幸いです。

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

目次

「土から食卓までを。」がテーマの体験型複合基地

倉庫をリノベーションした「KOYOBASE」

訪れたのは、1964年創業の陶磁器メーカー、光洋陶器株式会社さん。
土岐市駅からは徒歩で20分ですが、勾配があるのでタクシーで向かいました。
運転手さんから焼き物の話や途中に見つけた神社のことなどお話してもらい、ワクワクがさらに膨らみます。

「KOYO BASE」エントランスには1970年代に作られていた器たちが。

光洋陶器さんは創業以来、アメリカやヨーロッパなど海外に製品の輸出を行う事業を行っていました。
海外の暮らしに合わせた大きなお皿やポットなどが多く作られていたそうです。
エントランスに飾られた当時の器を見ると、個性的な柄に温かみを感じられ、どことなく和のおおらかさも伝わってきますね。
20年後には日本のホテルやレストラン向けの食器も扱うようになり、現在は私たちの食卓にも並ぶ暮らしに欠かせない存在となっています。

私が光洋陶器さんを知るきっかけになったのは、コーヒー業界で有名な「ORIGAMI ドリッパー」。
コーヒー好きなら一度は目にしたことがあるのでは。

「世界一のコーヒードリッパー」としてバリスタに愛されているORIGAMI ドリッパー

折り紙のような美しいヒダ状のコーヒードリッパーで、機能はもちろんのこと、カラーバリエーションの豊富さからインテリアとしても人気が高いコーヒー器具です。
私も自宅で愛用していますが、このドリッパーを作っているのも光洋陶器さんなんです。

今回メインで紹介するのは工場に隣接するショップとカフェが一体となった施設「KOYO BASE」。
偶然の出会いからこちらを取材させていただけることになり、運命を感じすぐに岐阜行きを決めました。

器の個性を魅せる洗練された内装

自社で作られた器を通し、触れ、味わい、作って学ぶことで魅力を知ってもらいたいと、倉庫として使われていた場所をリノベーションし、2023年にオープン。
2階に上がるとショップとカフェとワークショップルームがあり、高い天井の広々とした空間に器がずらりと並んでいます。

季節のしつらえを楽しむ美しいテーブルコーディネート。

岐阜県は焼き物に必要な粘土が採れるため、美濃焼をはじめとする陶磁器の文化が根付いています。
毎日の食卓に並ぶ食器が一体どのようにして作られているのか。
「KOYO BASE」では工場で作られた器の販売と、食を通した使い方の提案がされています。

形・色・絵柄、好みや自宅の雰囲気、好きな食べ物に合わせて選べるバリエーションの豊富さ。

機械と職人の最強タッグ

光洋陶器さんでは事前予約制で様々な体験が可能。

製造工場を見学できる「KOYO Factory」では、原料となる土と水を練る作業から、絵付け、焼成に至るまで、器作りの工程を間近で見ることができます。
生産の現場を間近で見ることができる貴重な機会。
大きな機械に囲まれた通路を進みながら、器作りの工程を順を追って説明してくださいます。
一部撮影不可となっていますので、撮影の際はスタッフさんにご確認を。
実際に行って体感していただきたいので、ここでは大まかにご紹介します。

練り上げた粘土は型のサイズに合わせて必要量がカットされる。

1万点を超える個性豊かな器は全て土から始まります。
土に水を混ぜ、空気を抜きながら練る「土練り」をする機械。
練り上げた粘土が棒状になって出てきました。

型に乗せた粘土を回転させながらコテで挟む「ロクロ成形」

カットした粘土は機械で引き延ばされ、それぞれの型に沿った器の形へと変わります。
多品種を製造するため、型の種類も膨大。
周囲には積み上がった型がずらりと並んでいました。

機械作業の間でも職人の手が必要。

最先端のテクノロジーを駆使して製造されている光洋陶器さんですが、機械ではできない細かい調整などは職人による目利き、手作業を欠かしません。

成形されたORIGAMI ドリッパー。すぐにでも使えそうなほど精密。

ロクロ成形で作れない形のものは「鋳込み成形」と呼ばれる泥状の粘土を型に流し込む方法で成形。
繊細な形をしている「ORIGAMI ドリッパー」も「鋳込み成形」で作られており、型に流し込んで乾燥させてから取り外します。

細かい部分まで職人さんが一つ一つ丁寧に仕上げている。

はみ出した部分などを職人さんが手でならし整えます。
自分が使っているドリッパーがこのように1個1個手作業で作られているのだと知って、私も今まで以上に丁寧にコーヒーを淹れようと気が引き締まりました。

乾燥させた器が大きなトンネルの中へ。

焼成は二度行われ、一度目は低温で素焼きします。
素焼きをすることで土の中の有機物を焼くことで不純物がなくなり、絵付けがしやすくなったり、より良質な器になるのだそう。

器は縮むことを考慮して1・2割大きめに作られている。

「BASE shop」には素焼きと本焼きで変化するサイズや色艶を比較した展示もされていいるので、ぜひ見てみてください!
ひとまわりどころか、ふたまわりくらい違っていて驚きです。

素焼きのあと、特殊な印刷方法で絵付け作業が行われ、釉薬をかけて本焼きをすることで光沢のある滑らかな器ができあがります。

完成した製品になにやら赤いチェックが…

しかし、できあがった全ての器が世に出るわけではありません。
最後に目視による検品作業が行われ、基準に満たないものはほとんどが廃棄されます。
一目でわかるヒビやカケから、よく目を凝らさないとわからないような小さな穴や斑点も見逃さず、高品質のものだけが私たちの元に届くのです。

職人さんが多くの時間と労力をかけてできあがった製品。
人と機械が協力することで効率が向上し、品質の維持にも繋がっています。
100%機械に任せるのではなく人の手が加わるからこそ、器に表情が表れるのだなと改めて感じました

テーブルから地元の良さを伝える

店内は土や素焼きの器をイメージするような風合い

併設されているカフェダイニングでは、地元の食材を取り入れた地産地消のメニューがいただけます。
大きな窓からやわらかな太陽光が差し込む開放的な店内。
広く落ち着く空間で、器と食が結びついたランチやスイーツを堪能できます。

コーヒーはもちろん「ORIGAMI ドリッパー」で。

コーヒーは、バリスタが淹れたような本格的な味わいを再現できる全自動ドリップマシン「POURSTEADY」で抽出。
「ORIGAMI ドリッパー」との相性も抜群で、スタイリッシュなデザインが店内の雰囲気にもマッチしています。

カフェで使われている器がメニューごとにコーディネートされている。

カフェで提供されている料理も全て光洋陶器さんで製造された器を使用。
使い方や組み合わせも工夫されています。
目で見て、手で触れ、舌で味わう。
実際に使用感がわかると新しい器にも挑戦しやすく、シリーズものなどは揃えたくなりますね。

今回は器と合わせておすすめのメニューを教えていただいたので、そちらをご紹介します。

地元の恵み満天!岐阜のごちそうカレー(イラストあり)

illustration by まるやまひとみ

ランチにいただいたのは
●農園野菜のスパイスカレー

カフェダイニングのメニューには地元食材が使われていて、その日、その季節によって少しずつ装いが変わります。
中でもスパイスカレーに添えられている野菜は農園さんから直接仕入れているもので、届くお野菜によっていろんな彩りを楽しめるのもこの場所ならでは。

お重のような品のある佇まい。

スパイスカレーは二段重ねになった器で運ばれてきました。
上段のプレートには「季節野菜のつけあわせ」が乗っていて、蓋のようにスタッキングされています。
これを開けると…

まるで玉手箱のような演出!

充満した香りが一気に放出され、湯気とともにスパイシーな香りが鼻をくすぐってきます。
下段のボウルには岐阜のブランド豚・飛騨豚をホロホロになるまで煮込んだカレーと、美濃地方で栽培されているお米「ハツシモ」のごはん。
食欲を増進させる奥深くもエネルギッシュな一品です。

色も味もカラフル。採れたての味は格別!

素揚げの野菜はみずみずしくも味は濃く、にんじんはクミンや胡麻で和えるなど、野菜の風味が引き立つように作られているのが伝わってきます。
野菜もごはんも噛むほどに溢れる甘味や旨味。
それぞれで食べてもおいしく、カレーと合わせてもスパイスに負けない食材の奥深さが際立ちます。

器が気に入れば購入できるのもここならでは。

「蓬莱」と名がつくスタッキングプレートとスタッキングボウル。

器を目で見るだけでなく、実際に触れたり使ってみて購入できるのが嬉しいです。
どんな料理を乗せようか、どんな器を組み合わせようか、考える時間は私にとって至福の時。
私もこのプレートとボウルのひと回り小さいサイズをセットで購入しました。
ボウルに温かいおそばを入れて、プレートに薬味や天ぷらを添えてもいいなあ…
お正月にはお節を乗せるのもいい!
和洋折衷で使える器は一つあると重宝するのでおすすめです。

器は使うほどに深みを増し、経年変化による美しさを感じられます。
大切に作られた器は、長く大切に使いたいですね。

次回は絵付け体験の模様と、カフェのスイーツをご紹介します。
お楽しみに!

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