【東京・蔵前】焼菓子店「torinos(トリノス)」のピュアな素材が伝える“おいしさ”と“気づき”
創り手を訪ねる取材ライター
Yui Ichihara
スイーツやカフェの聖地「蔵前」で老若男女に愛される焼き菓子店「torinos(トリノス)」。
幼い頃からお菓子作りに情熱を注ぐオーナーパティシエ・末弘麻里子(すえひろまりこ)さんがつくる、「季節の果物」と「平飼い卵」を使ったこだわりの焼き菓子と出会えます。
torinosは2017年に曳舟エリアにオープンしましたが、再開発に伴い閉店。そして2023年7月に新天地・蔵前エリアにて再スタートを切りました。変わりゆく環境の中でも変わらずに、日常のおやつでありたいと願うtorinos。そのおいしさの裏側を尋ねました。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
目次
美大卒のオーナーが手がける、カントリースタイルな店内
都営大江戸線・蔵前駅から徒歩10分ほどの場所にある「torinos」。
店内に入ると焼き菓子特有の甘くて香ばしい香りに包まれます。カウンターにはクッキーやフィナンシェ、マドレーヌなど、世代問わずおいしさを分かち合えるクラシカルな焼き菓子が並びます。
アンティーク家具のぬくもりが感じられる店内/併設のフラワーショップは末弘さんの旦那さまが経営
オーナー・末弘さんは、幼い頃からカフェ経営に夢を抱きながらも美術大学に進学。当時は「自分の店の内装を自分で作れるようになりたい」という想いがあり、インテリアデザインについて学んでいました。
経歴に関係なく、自分の店を作りたいという気持ちが強かった末弘さん
大学卒業後は1年間の会社員を経て、ようやく飲食の道へ。カフェのアルバイトとしてキッチン業務に励んでいましたが、「このままではダメだ」と意識が変わる出来事があったそう。
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ウェディングケーキづくりを任せてもらう機会があったのですが、趣味でやっていたお菓子作りとは違い、プロとしての製菓の基礎はなく、作れなかったんです。それがとても悔しくて。本気でお菓子作りに向き合おうと、製菓学校に通いはじめました。
製菓専門学校を卒業した後の就職先では、焼き菓子の製造・販売を担当。現在の根幹となる知識や技術を身につけていきます。
そして3年半後には「torinos」をオープン。「鳥の巣のような居心地のよさを感じられるように」との想いで店名を名付けました。
颯爽とカメラを構える末弘さん/デザインしたロゴはパッケージに
幅広いクリエイティブ能力をもつ末弘さんは、インテリアコーディネートやお店のロゴデザイン、商品撮影などを自ら手がけています。「torinos」はまさにデザインと製菓、2つの武器を持つ末弘さんならではの作品なのかもしれません。
定番の「レモンケーキ」&季節のフルーツを楽しむ「タルト」
そんな「torinos」が手掛けるスイーツの中から、CAKE.TOKYO編集部注目のラインナップをご紹介します!
まずは定番の「レモンケーキ」(¥363)、そして季節のフルーツを使った「苺のタルト」(¥638)です。
皿の上左:レモンケーキ、皿の上右:苺のタルト ※時期によってフルーツは変わります
「レモンケーキ」はレモンを皮と果汁の丸ごとを使用した、爽やかな焼き菓子です。しっとりとした生地の上にはシャリシャリ食感のアイシング。どこか懐かしげなハーモニーを生み出し、食べ応えも抜群です。
「苺のタルト」は、生地のバター感と、旬を迎えたエネルギッシュなフルーツをのせた胸が高鳴るコンビネーション。土台の生地とフルーツの間には、アーモンドクリームとサワークリームを。いちごの甘さにまろやかなコクと酸味がプラスされて、味わいを豊かにします。
まんまるシルエットにメロメロ!「tori クッキー」
かわいい!とSNSで話題になり「torinos」の存在を一気に広めた「tori クッキー」(各6枚入り/¥385)。その名の通り、鳥の形をしたクッキーです。
左:「tori クッキー(ココア)」右:「tori クッキー(ミルク)」
型は末弘さんのオリジナルデザイン。「ロビン」という名のヨーロッパ駒鳥がモデルなのだとか。
味はミルクとココアの2種。どちらも国産の小麦を使用しています。味ごとに生地の配合が変えられおり、ミルクは薄く、嚙みごたえのある食感で、ココアはサクサク・ホロホロのやさしげな食感を楽しめます。
ヘルシースイーツとしても注目の「パブロバ」
「torinos」にはイートイン限定のメニューもあります。そのひとつが、メレンゲにクリームとフルーツをトッピングした「パブロバ」(¥1,350/時期によってトッピングされるフルーツは変わります)。小麦粉やバター不使用であることから、低カロリーなスイーツとしても一目置かれつつあります。
初めて食べるスイーツにドキドキ……
「torinos」にはメレンゲ単品の商品がありますが、焼き上がりを確認する際、砕いて中の様子を見ます。毎回必ず出てしまう「崩したメレンゲ」がもったいないと、食材を大切にする気持ちから「パブロバ」が生まれました。
メレンゲは、生のスライスアーモンドをまぜて1時間半かけてじっくりと焼き上げます。無糖の生クリームとフルーツをのせて、不規則なビジュアルを楽しみながら崩して食べます。
「torinos」の魅力を一段と深めるおいしさ
アーモンドのしっかりとした味わいと、焦がしキャラメルのような甘い香ばしさ。「サクッ」「くしゅっ」と不思議な食感と口溶けが心地よく、フルーツのみずみずしさも口の中で弾けます。
パブロバとベトナムティーの“ツウ”なペアリング
イートインの際はドリンクもぜひ。やさしい甘さの焼き菓子は、コーヒーよりもお茶や紅茶の方が合います。
おすすめは、ベトナム茶葉を使った「ウーロン」(¥550)。紅茶に近い味わいの高発酵のお茶で、華やかな香りが特徴。束の間のティータイムを盛り上げてくれます。
ピュアで気持ちのいい素材が、心も体も満たす
「torinos」の焼き菓子は「素材ありき」で考えることが多いと末弘さんはいいます。その最たる例が「平飼い卵」です。
「平飼い卵」とは、窮屈なケージの中で飼われた鶏が生んだ卵ではなく、地面に放ち、自由に動き回ることができる状態で飼育された鶏が生んだ卵のこと。畜産動物のストレス軽減を重視する「アニマルウェルフェア」の観点から、近年関心が高まっています。
インコを飼っているという末弘さん。鳥への愛情は人一倍
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平飼い卵は、動物福祉の観点でぜひ使いたいと思っていました。私は鳥が好きですし、健康な鶏が産んだ卵はやはり使っていて気持ちがいいです。
末弘さんが平飼い卵の主な仕入れ先に選んだのは、千葉県木更津市の「耕す」農場。餌の配合にこだわりを感じるといいます。
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餌は、卵の味や見た目に影響します。スーパーでよく見かける卵の黄身はオレンジ寄りの色ですが、これは餌にパプリカなどを混ぜて調整されたものが多いです。一方でお世話になっている農場さんの卵の黄身は薄いイエローで、卵本来の色をしています。基本の餌に加えて、同じ農場内ででた野菜くずやジビエ肉の残渣などで栄養を与えているそうなので、生命力ある自然な味わいの卵なんですよ。
ひとつひとつのお菓子に、末弘さんなりのやさしさと工夫が詰まっている
素材へのリスペクトは卵だけではありません。
たとえば、小麦粉は輸入物ではなく、農薬が少ないとされる国産のものを。砂糖は白砂糖を避け、体にやさしいとされている「きび砂糖」や「てんさい糖」を積極的に使います。これらのピュアな素材から生み出される焼き菓子は、心身ともに満たされ、心地よいおいしさを提供しています。
10年、20年、変わらずにあり続けること
オープンから6年が経つ「torinos」。店はもはや自分の一部だと末弘さんは語ります。
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最近はスタッフも増えて、私がいない営業日もあるのですが、そわそわしちゃって。(笑)それくらいお店は人生の一部です。地域の人たちに愛されて、10年…20年…これからもお店を続けられたらそれだけで幸せ。以前の立ち退きのように、なにが起こるかわかりませんから。とにかく変わらずに続けられることが、今のいちばんの願いです。
普遍的な日常こそ愛おしいこと。全ての生き物にやさしくあること。「torinos」の焼き菓子は、人生の大切なことも教えてくれるようでした。
お店に訪れた時は、かわいい駒鳥の置物も見つけてみて!
SHOP INFORMATION
SHOP | torinos(トリノス) |
---|---|
WEBSITE | https://torinos2017.com |
ADDRESS | 東京都台東区三筋2-14-1ハイツあかね1階 |
TEL | 03-5829-9124 |
OPEN | 平日 11:00~18:00(※月曜のみ13:00~19:00) 土日 11:00~18:00 |
CLOSE | 火曜日 |
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