【シナモンロールに導かれ/兵庫】川西をシナモンロールの街に!「BAKERY CINANO(ベーカリーシナノ)」
フードイラストレーター
まるやまひとみ
シナモンロールが好きだ。吸い込まれそうな渦巻き、半分に割った時の縞模様。
アーティスティックな姿に何度陶酔したことだろう。溶けてしまいそうな甘さと芳香に満たされ、私の奥底に眠るシナモンロールの記憶を呼び起こす。
もっとシナモンロールのことが知りたい。シナモンロールに会いたい。シナモンロールは私をあちらこちらに連れ出し、縁を繋いでくれる。
さあ、今日も今日とてシナモンロールを求め西へ東へ…
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宝塚本線・川西能勢口駅周辺は、再開発によりできた商業ビルや住宅街が広がる暮らしに寄り添った街並みが印象的。
自然もあり空が広く感じられ、空港のある伊丹市と隣り合っているため上空を飛ぶ飛行機が近い距離で見られるのも楽しい。
東口を出て大型スーパーなどを通り過ぎ5分ほど、閑静な住宅街へ。
スンと香るシナモンの匂いに鼻がピクッと反応する。
ここは民家が立ち並ぶディープゾーン。古民家の2階に掲げられた“北欧シナモンロール”の大きなタペストリー。
この絶妙なアンバランスな風景こそ「BAKERY CINANO(ベーカリーシナノ)」への入口だ。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
空気のように存在する裏路地ベーカリー
看板の“シナノケン”に思わずにっこり
「ベーカリーシナノ」は2019年にお隣の伊丹市でベーカリーカフェとしてオープンし、2022年に川西へと移転。
もっとパンに力を入れたいと思い、移転を機にメニューを絞った。
細い路地の一角、風景と馴染むように立つ古民家。かわいらしい外観と店先から漂う甘くあたたかな香りに誘われ、近寄らずにはいられない。
我慢できずに準備中の様子を覗き見。
店主とスタッフの息の合った作業ぶりで続々とパンが積み上がっていく。
通りがかった人たちも匂いに誘われて立ち止まる。やはりシナモンには不思議な引力があるようだ。
看板商品のシナモンロールだけでなく、シンプルなパンからサンドイッチまで豊富なので、翌日以降の分もとまとめて買う人が多い。
続々と覗き込む近所の人たちの姿から、地域に根ざしたベーカリーであることが伝わってくる。
ヨーロッパテイストの噛み締めたくなるパン
定番に加え、時期によって少しずつラインナップが変わる。
「ベーカリーシナノ」の看板商品であるシナモンロールは、国産小麦、石臼挽きの全粒粉、生乳100%のバターなど、無添加・手作りにこだわった生地と自家製の具材で毎日の食卓に安心を届けている。
インド産のシナモンにカルダモン、種子島産のきび糖と、それぞれの素材が味を引き立て合う「噛むほどにおいしさが増す」パン。
もともとパン好きだったという店主は、ヨーロッパを旅した際に出会ったハードなパンや、シアトル系コーヒーの流行とともに日本に上陸したシナモンロール専門店のリッチなシナモンロールなどに衝撃を受けたそう。
しかし、「日本ではなかなか好みのパンに巡り会えない。」その思いが独立の原点となった。
どっしりと風格のあるシンプルなパンも。
ヨーロッパの一部では「黒パン」と呼ばれるパンが国民食として親しまれている。
ライ麦を多く使った硬めのパンで、栄養価も保存性も高い。毎日食べてほしいから少しでも健康的に。
シナモンロールの生地にも全粒粉を加えており、小麦の自然な味わいが広がり、素朴で飽きがこない。
スパイスと小麦が共鳴し、口の中で繊細なフレーバーが生まれる。どのパンも国産小麦ならではの歯切れのよさで硬すぎず食べやすい。
小さなシナモンロールにはパールシュガーをトッピング。
シナモンロール好きにとって、シナモンロールの中心は最も甘くシナモンが濃厚なご褒美部分。
極楽へと誘う最後のひと口だが、お子さんがこの部分ばかりを食べてしまうというお客様の声を聞き、Sサイズのプチシナモンロールを作った。
お子さんに喜ばれるだけでなく、私のような欲張りな大人には「いろんな味を食べてみたい」という気持ちにも応えてくれている。
北欧好きの心に刺さるこの形。
自分の信念は曲げることなく、お客さんの声を汲み取り活かしていく。こうした柔軟性もお客さんとの距離を近くし、リピーターを増やす。
私のように遠方であっても繰り返し食べたくなるおいしさの向こう側には、街と人を思いやる作り手の心がある。
「“川西といったらシナノのシナモンロール”と言われる名物になることを目指している」との力強い言葉に私も背筋をシャンと伸ばし、袋いっぱいのパンを大事に大事に抱えながら帰路につく。
新幹線でのつまみ食いを我慢して、自宅でゆっくりと味わい尽くそう。
日々の糧になる、シナノ流シナモンロール(イラストあり)
illustration by まるやまひとみ
今回いただいたシナモンロールは
●シナノのシナモンロール ¥330(税込)
●くるみといちじくのシナモンロール ¥430(税込)
●カネールブッレ ¥400(税込)
「ベーカリーシナノ」の代表格3種。
「くるみといちじくのシナモンロール」は秋の風物詩と言える一品だ。
外のポスターを見たら買わずにはいられない、こだわりのカネールブッレも外せない。
手に持つだけで粉の密度が伝わってくる。
プレーンにはクリームチーズやバターなどを混ぜ合わせた特製アイシングがぽってりと。
ほんのり感じる塩気がコクを加え、味わいに立体感を与える。1度食べ始めたら止まらない、クセになる独特の風味と食感こそ「ベーカリーシナノ」の特徴だ。
焼きすぎず、でもしっかりと。しばしトースターとにらめっこ。
リベイクのコツは、トースターでやや焦げがつくくらい。トースターで焼くことで粉の香ばしさが立つうえ、アイシングもじゅわじゅわと濃密に。
さわさわとそよぐような歯触りと、セミハードなみちっとした食感。噛むたびに滲み出る旨味に全粒粉の力強さを感じる。
上顎にコツコツとノックする惜しみないくるみ。
「くるみといちじくのシナモンロール」はアイシングをかけない分、生地に加える乳製品や砂糖の量を変えて味を深める。
秋に旬を迎えるいちじくは川西市の特産品のひとつ。農家さんから直接仕入れている川西産いちじくをお店のオーブンでドライにしているため鮮度が高く、果肉がジューシーだ。
生地の旨味にプチプチ弾けるいちじくの繊細な甘さが移り、くるみの香ばしさが後を追う。しかしながら、このいちじくも生育が厳しい状況にあるそう。
地産地消に力を入れている「ベーカリーシナノ」とともに、私も買って食べて生産者さんを応援していたい。
来年も会えることを願って。
ストックホルム風の成形。
リボンのようにふっくら焼き上がった「カネールブッレ」。通常のシナモンロールよりややリッチな生地に仕上げており、リベイクすると香ばしさが増して旨味が強調される。
カルダモンはやさしく爽やかに駆け抜けて、ナッツの香味が華やかさをプラス。本場に寄せつつも「ベーカリーシナノ」らしさが健在。
味比べという名の贅沢2個食べ。
通常サイズのフレーバーで気になっていたココナッツのSとプレーンのS。ミニチュアのような姿がなんとも愛らしい。
きゅっと詰まったフィリングの甘さでコーヒーが進む。ココナッツはシャクシャクと軽く、シナモンとあいまってエキゾチック。
Sサイズだけのフレーバーもあったので、1種類ずつ買って手土産にしたら喜ばれそうだ。
スパイス好きの王道コンビ。
お土産ならこちらもおすすめ。近所にお店を構える「スパイスカレーミルズ」オリジナルの7種のスパイスで作られたマサラチャイティーパックはスパイシーなパンにぴったりで、私もリピート買いするほど気に入っている。
「ベーカリーシナノ」特製キーマカレーが入ったカレーピロシキとの相性も抜群。もちろんシナモンロールにも合わせてぜひ。
作りたいパンから求められるパンへ
かなり惹かれた「こしあんバター」。小春日和でバターが溶けそうなため泣く泣く我慢…
「ベーカリーシナノ」には、どこか力みのない空気が漂う。
このやんわりとした雰囲気と重みのあるパンの“ギャップ”がたまらない。
店舗だけでなく、「川西小花レトロ街フェス」など、川西全体を盛り上げるイベントも積極的に開催。
街の発信源としての役割も担っている。店主の穏やかな人柄からにじみ出る地元愛と情熱は、地域の人々にも浸透してきた。
シナモンロールが川西を知るきっかけになり、川西の活性化に貢献できたら嬉しい。
私にとってはすでに「川西はシナモンロールの街」だ。
シナモンロールで一杯が川西の定番になる日も近い。
最後にもうひとつ、自家焙煎コーヒーもおすすめしたい。奥様が手焼きで焙煎したコーヒー豆で淹れてくれる。
雑味がなく、後味は甘くやわらか。パンの風味に寄り添った軽いテイストだ。エネルギッシュなパンとコーヒーが、心身の疲れを癒してくれることだろう。
少し足を伸ばしていつもと違う風景を見に行けば、こんな楽しい出会いが待っているかも。
SHOP INFORMATION
| SHOP | BAKERY CINANO(ベーカリーシナノ) |
|---|---|
| https://www.instagram.com/cafe_cinano | |
| ADDRESS | 兵庫県川西市小花1-5-14 |
| OPEN | 10:00〜18:30 |
| CLOSE | 日・月曜日 |
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