スイーツの定番ってなんでしょう? ふと”いちご”が頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか。リンゴやバナナと同じく子供の頃から親しんできたフルーツだけど、いちごと聞くと、どこか特別な感じがしますよね。
いちごの上に帽子のような生クリームが乗ったかわいい見た目のイチゴシャンデ。半分に切ってみると、断面の美しさに思わず、わっと声が上がります。
生クリーム、いちご、クッキー、そしてチョコレートと、4つの食感が見事なバランスでおいしさを奏でる不思議なお菓子「イチゴシャンデ」を生み出したオザワ洋菓子店を訪ねました。
オザワ洋菓子店があるのは、後楽園と上野の真ん中、文京区本郷三丁目。会社や学校、住宅が混在するこの街にぴったりと馴染む角のお店、それがオザワ洋菓子店です。お話をお伺いしたのは、二代目シェフの小澤武志さんと奥様の利得さんです。
イチゴシャンデ誕生秘話
オザワ洋菓子店は、創業して何年になりますか?
武志さん父がこの場所で店を始めて、もう50年くらいになりますね。僕は二代目で、昔から変わらず家族経営です。こんな小さな規模ですが、自家製にこだわってつくり続けています。
お店の看板メニュー「イチゴシャンデ」はどのようにしてつくられたのでしょうか?
武志さんイチゴシャンデは先代が考案しました。僕が小学校低学年の頃にはもうあったから、今から40年くらい前ですね。いちごと何か他のものを組み合わせたらおいしいものが出来るんじゃないかと、色々試行錯誤した結果この形が生まれたようです。でも当時は、地元の人だけが買いに来るお菓子っていう感じだったんですよ。
利得さんそうそう、近所の小学生がお小遣いで買えるぐらいのお菓子だったから。昔はイチゴシャンデを求めてわざわざ買いに来るっていうお客さまはいなかったんですよ。広く知られるようになったのは20年くらい前。メディアで紹介してくれたのをきっかけにじわじわと評判になっていって……。今みたいに有名になったのはここ10年くらいですね。
いちご以外のフルーツで試してみたりは?
武志さんいくつか試してみたんですけど、一番相性が良かったのがいちご。ちょこんとした姿もかわいらしいですしね。
気になる「イチゴシャンデ」という名前。商品名の由来は何ですか?
利得さんいちごのシャンデリアが由来なんです。昔のいちごって今のものと違ってもっと小さくて、ちょっと角のある細長い形だったんですよ。それがろうそくみたいに見えたから、いちごとシャンデリアを合わせて語呂がいいからっていうので「イチゴシャンデ」になったんです。
イチゴシャンデのおいしさの秘密
主役のいちごは爽やかな酸味を感じる、さっぱりとした甘みが印象的でした。
武志さん今のいちごってすっぱいのを改良して、どんどん甘いいちごになってるんですけど、イチゴシャンデに使ってるものは、少し酸味のあるものをあえて選んでいます。甘すぎるとおいしくないんです。いちごは北関東周辺の産地から、その時々でいいものを使っていますが、栃木のとちおとめが多いですね。
素材のままのいちごを食べるよりも、いちごのフレッシュさやジューシーさを感じました。そして時間が経っても生クリームがふわふわなのに驚きました!
武志さん生クリームは、ゆるいと形が崩れてしまうので、9分立てくらいの固さにしています。いちごの鮮度や生クリームの食感が保たれているのは、上からチョコレートでコーティングをしてるからでしょうね。
チョコレートが素材のおいしさを閉じ込めてるんですね。ちょっぴりビターな中にも甘みがあって、それがいちごの甘酸っぱさを引き立てているように感じました。チョコレートにも何か秘密はありますか。
武志さん香りを意識して3種類のチョコレートをブレンドして使っています。他のケーキで使っているものとは全く違う、イチゴシャンデだけのオリジナルブレンドですね。
ふんわりとした生クリームとパリッとしたチョコレート、それからいちごの食感にプラスして、最後にザクザクのクッキーという組み合わせが新鮮でした。クッキーにはどのようなこだわりが?
武志さんそれはつくってる本人に聞いてみますか?
久さんバターと卵を多めに使って、メリケン粉は少なくしてます。配合は企業秘密だけどね。
利得さん商品として並んでるクッキーとはまた別につくっていて、イチゴシャンデのクッキーはシャンデ専用の配合なんですよ。
売り場の隣にある工房にお邪魔して、先代がイチゴシャンデをつく作る様子を見学させてもらいました。先代の久さんは84歳というお歳ですが、テンポよく仕上げていく手際の良さに現役の職人の誇りを感じさせます。
イチゴシャンデは1日に何回つくられるんですか?
武志さん平日はだいたい2回ですね。ホワイトデーやバレンタインのようなイベントごとがあると3回はつくります。
1台150個。土曜は3回はつくるとおっしゃってましたよね。ということは……450個!この作業を先代の久さんは40年も毎日続けてるんですね。すごいです……。
サイズを展開するイチゴシャンデ。実は特大があるとラッキー?
イチゴシャンデには、小、大、特大と3つのサイズがありますね。
武志さん最初は「小」だけだったんです。でも同じいちごの箱の中にも小さなもの、大きなものがあって。それをより分けて「小」と「大」の2種類にしてたんですが、それなら大サイズのいちごも別に仕入れようということになって。でも今度は大サイズのいちごの中にも大きいものが(笑)。それで「特大」も生まれたんです。特大が出来たのはここ10年くらいですね。
一番大きな特大が末っ子なんですね。小と大はショーケースの一番上に並んでますが、特大だけは一番下にありますね。
武志さん特大はいつもあるわけじゃなくて、大きないちごがあるときだけなんですよ。ちょっと特別だから、別の場所に置いてあります。
クリームから食べるか、それとも下のクッキー?!いやいちごから? イチゴシャンデはどこから食べるか迷ってしまいます。オススメの食べ方はありますか?
利得さん「小」だと一口でそのままパクっと食べてもらいたいですね。冷蔵庫でしっかり冷やしてから食べるのがオススメ。冷えたいちごとパリっとしたチョコレートの食感がおいしいですよ。
イチゴシャンデの他にも様々な商品が並ぶショーケース
ケーキも焼き菓子も常時かなりの種類が並んでますよね。創業当時から並んでる商品はありますか?
武志さん同じ味のものはひとつもないですね。プリンやシュークリームは定番としてありますが、どれも味を更新していますね。
イチゴシャンデの他に人気の商品は何ですか?
利得さん今の季節だとコーヒーロール。夏場になると置けないので7~9月はお休みなんですけど、中のクリームがバタークリームなので、とても素朴な味わいで人気がありますね。これだけ買いにくるお客さまもいるくらい。あとは、意外にもアップルパイ。
アップルパイ、気になってたんです。きれいなパイの層に思わず見入ってしまって。
利得さんアップルパイって他のケーキに比べると地味なんだけど、なぜか人気があるんですよね。うちの特徴は、シナモンなどの香辛料を使ってないので、小さなお子さまでも食べやすいところだと思います。
これから小澤さんが挑戦してみたいことや、今後のお店の展望をお聞かせください。
武志さんどんどん新しい素材が出てくることによって、これまで出来なかったことが出来るようになってきました。でも、今まで通りやっていきます。特別なことはなく、この先もずっと着実にやっていきたいですね。
2代目シェフの武志さんと先代の久さんが工房で忙しく作業をしている間、接客を担当していた奥様の利得さん。シャンデの食べ方や持ち歩きの注意点などを、お客さま一人ずつに丁寧に伝えていました。商品を持って常連さんを送っていったり、お客さまと楽しそうに会話する姿が清々しかったです。今でも時折小さなお子さんが小銭を握りしめて、イチゴシャンデを買いに来ることもあるのだとか。
初めてお店に行くと、素朴でこじんまりとしたお店に驚くかもしれません。でも店内に入れば、武さん、利得さん、先代の久さん、取材当日は会えませんでしたが、先代の奥様の和子さんがあたたかく迎えてくれます。そして、たくさんのお菓子でいっぱいのショーケースに思わず笑顔になるでしょう。
SHOP INFOMATION
NAME | オザワ洋菓子店 |
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URL | https://www.instagram.com/ozawayougashiten/ |
ADDRESS | 東京都文京区本郷3-22-9 |
TEL | 03-3815-9554 | OPEN | 10:30~18:00(※ケーキが無くなり次第、閉店) |
CLOSE | 日曜日・月曜日 |
※他、臨時休業する場合があります