東京から北陸新幹線で90分。上野、大宮、高崎、軽井沢の次の駅・佐久平駅から、さらに車で20分ほど行くと視界に飛び込むオレンジ色の大きな切妻屋根。

その建物が今回お邪魔した、長野県佐久市にある洋菓子店「Bremen(ブレーメン)」。日本でも珍しい、青ばつ(青大豆)を使ったスイーツをつくっているお店です。

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(写真 左から、高橋さん倉本さん片岡さん)

扉を開けると、ロバがお出迎え。

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さらに、窓からはロバ・イヌ・ネコ・ニワトリが覗いていて、まさにグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」がモチーフになっているお店です。

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グリム童話「ブレーメンの音楽隊」は、ドイツの大都市ブレーメンで音楽隊になるという一つの夢に向かって、ロバ・イヌ・ネコ・ニワトリが旅をするというお話。その道中、困難に直面しても皆で知恵を出し合って解決していきます。

店名「Bremen」の由来は、青ばつスイーツ誕生とお店の新規開店を支えた4人の立役者とブレーメンの音楽隊を重ね合わせたことに由来しています。

一人でも欠けていたら実現できなかった、奇跡のようなストーリーをご紹介します。

“ブレーメンの音楽隊”が結成するまで

1人目 : ロバこと、オーナー高橋さん

「私がね、“ロバ”なんですよ」

そう語るのは、Bremenのオーナー・高橋さん。

生まれも育ちも佐久市だという高橋さんは、佐久といえばこれ! という銘菓をつくりたいと、ふつふつとした思いを抱えていたと言います。

そこで注目したのが、「青ばつ」。佐久の老若男女に親しまれている青ばつをメインに据え、和菓子にも洋菓子にも使えるあんこをつくろうと決めました。

【そもそも、青ばつとは?】
青ばつとは青大豆のことで、佐久地域では日常的に食べられているもの。見た目は枝豆と似ていますが、枝豆は大豆が成熟していない時期の豆のことを言うのに対して、青ばつは成熟している豆で、枝豆よりも栄養価が高いと言われています。

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2人目 : イヌこと、片岡さん

青ばつスイーツをつくると決めたものの、滑らかな舌触りのあんこにするためには、高度な技術が必要でした。

例えば、小豆だとことこと煮ているうちになめらかなペースト状になります。しかし、青ばつの場合はそのまま熱しただけではコリコリとした食感が残り、滑らかにならないのです。

どうしたらいいのだろう…と、途方に暮れていた高橋さんが出会ったのが、“イヌ”こと片岡さん。

片岡さんは、大阪のあんこをつくる食品会社に勤めていたころ、白大豆、黒大豆、赤大豆、そして青ばつをペースト化する研究をしていました。その中で青ばつのあんこが豆の風味とほのかな甘みが残り一番おいしいと感じ、事業化した方です。

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もっと青ばつのあんこを広めたい…。そう思っていた時に高橋さんと出会い、一緒に佐久の銘菓をつくることを決意したのです。

アイデアと材料、そしてあんこの技術が揃い、次はパティシエ探しの旅に出たロバとイヌ。

3人目 : ネコこと、パティシエ倉本さん

次に出会ったのが、“ネコ”こと、地元出身のパティシエ・倉本さん。その頃倉本さんは専門学校卒業後、神奈川で4年間修行をし地元に戻ってきたばかりでした。

昔から地元で自分の店を持ちたいという夢があったという倉本さん。佐久の銘菓をつくろうと声をかけてもらい、地域のために何かしたいと参加を決めました。

4人目 : ニワトリこと、田村さん

そしてその「いつか」を実現させたのが、“ニワトリ”こと田村さんとの出会いでした。最初の出会いは、お店の影も形もなかったころ。オーナーの高橋さんは当時を振り返ってこう話してくれました。

「軽い気持ちで、もし就職活動して良いところなかったらちょっとうちでケーキつくらない?って話をしたんですよ。そしてね、去年の秋ごろにメールが来て、『高橋さんのところが第一志望です』って言うんです。まだお店はもちろん、会社自体できていないところにねえ…第一志望って言われてもこっちも困るよって思いました(笑)」

しかし、田村さんの入社がきっかけで、わずか半年という短期間で会社設立から店舗オープンへと至りました。つまり、ロバ・イヌ・ネコ・ニワトリが集まったからこそ、洋菓子店「Bremen」と青ばつのスイーツが誕生したのです。

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こだわりの新銘菓、”青ばつスイーツ”

青ばつを使ったスイーツの中でも特におすすめしたいのは、2年がかりで完成させた「青ばつのモンブラン」と「青ばつのクッキー」です。

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青ばつのモンブラン(421円)

青ばつのモンブランは、青ばつのあんこ・きな粉と生クリームをふんだんに使った一品。一口食べると青ばつのまろやかな風味がふわっと香り、爽やかな甘さが後を引きます。お客さまからも「まったりとしたふくよかな美味しさが、リピートしたくなる懐かしい味わい。」「甘すぎず、素材の味をそのまま感じることができて、子どもも大人も楽しめる!」と大好評。

モンブランは生菓子のため、地元の方や観光で訪れた方に楽しんでもらいたいと言います。

今後はイートインスペースを設けて、青ばつあんを使ったぜんざいや、地元の牧場から取り寄せた生乳で青ばつソフトクリームの販売も考えているそうです。

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青ばつのクッキー(540円)

青ばつのクッキーは、まさに“佐久の銘菓”になり得る逸品です。

柔らかい緑色に、ころころした丸い形がとても可愛いクッキー。口に入れると、サクッときた次の瞬間にはホロッと溶け、繊細な甘みが口いっぱいに広がります。

今後は軽井沢地域でも購入出来る予定なので、ぜひ新たな長野土産として注目してみてくださいね。

Bremenの自慢はパティシエ。自由な発想から生まれるケーキの数々

Bremenの自慢は、パティシエだとおっしゃる高橋さん。

「うちのコンセプトは”自由”なんです。あらかじめ決められたメニューだけをつくると、せっかくの職人の腕がもったいない。パティシエには今まで自分が思い描いた洋菓子があるんです。それをここで出して欲しいと」

ショーケースには青ばつを用いたお菓子以外にも、贅沢な苺のショートケーキやチョコレートムースのコスモ、オレンジのブリュレなど、宝石を散りばめたような見た目もおいしいケーキがたくさん並んでいます。

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ショーケースに並んだケーキは、取材当日は完売するほど人気でした

これらは全て、倉本さんオリジナルのスイーツです。

「彼の場合はつくるもの、見ても食べても感動の連続なんです。おかげでちょっと太っちゃって(笑)」

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(写真 左から、片岡さん倉本さん高橋さん)

“ブレーメンの音楽隊”がこれから目指すこと

4月のオープン初日から完売御礼で、大盛況のBremen。

まだ音楽隊の物語は始まったばかりですが、今後の展望についてお伺いしました。

「やはり一番は、社員にも言うんだけども、ただ儲けを追うのではなく、福祉のお手伝いをすることです。普段なかなか洋菓子を口にできない人にも気軽に食べてもらえたらいいなと。

後は、青ばつのクッキーが世の中に広まったらいいなって。佐久の銘菓をつくろうという思いでやっているだけなんでね。それが広まってくれたら最高です」

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東京から、約2時間。

長野県佐久市の新銘菓、青ばつスイーツを堪能しながら、ロバ・イヌ・ネコ・ニワトリの物語を覗いてみませんか?

SHOP INFOMATION

NAME Bremen(ブレーメン)
URL https://twitter.com/BremenSaku
ADDRESS 長野県佐久市内山7174-3
TEL 0267-78-5902
OPEN 10:00-18:00
CLOSE 月曜日・水曜日 (祝日の場合は営業)

※他、臨時休業する場合があります