札幌に住む人が必ずと言っていいほどオススメする「森彦」。前回の記事では、お店づくりの哲学についてお話を聞きました。

札幌に行ったら一度訪ねてほしい。また通いたくなる「森彦」代表 市川さんの哲学。

店舗をつくる上で “空間価値” を一番大事にして考えられた店舗について、(「モリヒコ アンド ジ オルタナティブ」を除く)5店舗に代表の市川さんとお邪魔してきました。

僕は、自分がこれまで感じたことがない体験をしてみたいんです。全店舗コンセプトが違うことで、僕自身がお客さんと同じ気分でいたい。次にどんなお店を創るのか想像できない…いい意味で期待を裏切り続けたいです。

MORIHICO SHOP INFO

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1)森彦本店

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札幌市内の地下鉄東西線・円山公園駅を降りて閑静な住宅街を数分歩くと、小さな古民家が見えてきます。近くの住宅とは一線を画す風情ある建物。ガラガラと扉を開けると、香ばしい珈琲の匂いがたちこめます。

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一杯一杯丁寧に、ネルドリップで淹れてくれるコーヒー。

1996年に改築したこの木造の古民家は、すでに70年近く経っているのだそう。森彦代表の市川さん曰く、「円山に25年くらい前に移り住んだときは森彦のような木造民家は至る所にあったんですが、冬は寒いし夏は暑いしで、どんどん取り壊されていってしまった」とのこと。

市川当時は「リノベーション」のようなしっくりくる言葉がなかったんですが、森彦の改装は、近隣の雰囲気までも大切にしてつくったんです。あの窓から見えるのはお隣の庭なんですけど、まるで自分たちの庭のように眺めたりしているわけなんですよね。昔から、遠くの山や隣の風景を、背景として取り入れてることを「借景」といいます。

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市川2階に昇るときは急な階段しかないんですが、それもまた良し。お客さんは、おっかなびっくりしながら昇るんです。「まるでおばあちゃんやおじいちゃんの家に来たみたいだ」ってよく言ってくれます。

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珈琲は、スタンダードブレンド2種類(深煎りフレンチブレンド/中煎りマイルドブレンド)とストレート4種類(浅モカ/深モカ/フレンチコロンビア/フレンチマンデリン)。浅モカ、深モカは、それぞれ「浅煎りモカ」、「深煎りモカ」の略。スタッフが最初に言っていた呼び方から名づけたそうです。この呼称は、森彦の専売特許。

ちなみに、オリジナルブレンドの「森の雫」(¥680)は、本店限定。モカ・マンデリン・コロンビアを使用した、ここでしか飲めない特別な珈琲。次回行った際には、飲んでみたい珈琲のひとつです。

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森彦で提供しているスイーツは、すべてパティシエによる自家製。こちらは、“森彦の名物”と呼ばれている「ガトーフロマージュ」。スフレタイプのチーズケーキで、ほろほろ崩れるほどの柔らかさが特徴です。ガトーフロマージュの甘さと、深煎り珈琲とのバランスがたまらなくおいしいです。

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市川軽くてくどくなく、それでいて満足感もある。それでいて、食べ飽きない。そんなお菓子を目指してつくっています。

ちなみにガトーフロマージュは、インターネットで購入できます。このほろほろ体験は、一度実感すると誰かに勧めたくなること間違いなしです。

森彦のガトーフロマージュ(ホールサイズ(15cm) ¥2500)

Shop Info
・住所: 札幌市中央区南2条西26丁目2–18
・TEL : 011–622–8880
・営業時間 :
平日・祝日 11:00–21:30(L.O 21:00)
土日 10:00–21:30(L.O 21:00)
・定休日 : なし *年末年始休あり

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2)アトリエ・モリヒコ(ATELIER Morihiko)

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「森彦本店」のオープンから10年後につくられたのが、「アトリエ・モリヒコ」。こちらは、南に向いた大きな窓からは市電を臨むことができ、店内には、やわらかな日射しが差し込んできます。

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入り口には、かつて市川さんが使用していた珈琲の焙煎機がありました。

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「お客さまが “絵” になるように」という意味を込めて、店内にはひとつも絵が飾ってありません。席の間隔もゆったりとしていて、あたたかい店内に、ついうとうとしてしまいます。

Shop Info
・住所 : 札幌市中央区南1条西12丁目4–182
・TEL : 011–231–4883
・営業時間 :
平日 8:00–22:00(L.O 21:30)

土日祝日 11:00–22:00(L.O 21:30)
・定休日 : なし *年末年始休あり

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3)マリ・ピエール(Marie Pierre)

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続いて訪れたのが、「マリ・ピエール」。森彦のパティスリーです。「森彦本店」で紹介したガトーフロマージュなど、フランス菓子を中心に、焼き菓子やギフト菓子を製造しています。

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バリスタだけでなくパティシエも採用して、ひとつひとつ手づくり。マリピエールのオススメは、「マリピエールのプリン」(¥352)。僕もひとつ個人用にお土産に買って、帰りの電車で食べました。程よく甘く、とろりと溶ける柔らかめのプリン。最後の最後に絡まるカラメルが、最高です。

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Shop Info
・住所 : 札幌市中央区南8条西14丁目3–12
・TEL : 011–596–9777
・営業時間 : 10:00–19:00
・定休日 : なし *年末年始休あり

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4)プランテーション(Plantation)

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上記3店とは少し離れた場所に位置する「プランテーション」は、住宅と工場が混在している、いわば “札幌のダウンタウン” 。築50年約200坪のボイラー工場をフルリノベーションした、3階建ての焙煎所を兼ねたレストラン型カフェです(3階はオフィス)。

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市川下町風情が残っているし、連帯感が強いし、住めば都的な感じです。森彦本店と同じく、借りたときはちょうど50年経っていて、いい感じにエイジングがかかっていました。赤サビがまた、いい味を出してくれるんですよね。

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焙煎所を兼ねているため、大きな焙煎機でパチパチと音を立てて焙煎をしている様子を、2階から珈琲を飲みながら覗き見ることができます。

市川「プランテーション」は、かつて工場だった場所をリノベーションしてつくった、男の汗がにじんでいた場所。それが、今はおしゃれな女の子がたくさん来る場所になるなんて面白い現象ですよね。

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席の間隔は東京のカフェと比べるとゆったりめで、席数も少なめ。席数を増やしても入りたい人はたくさんいるのでは…?と聞いてみると、あえてそうしているのだと言います。

市川席をたくさんつくれば座るわけじゃないですし。さすがに土日は混みますが、それでも席は増やさないつもりです。土地代は、東京の半分、いや3分の1かも知れない。じゃあ席数は同じくその半分、3分の1でいいじゃないですか、それくらいゆったりした感じでいられる方が居心地がいいと思うからです。それに、一席一席が遠いと会話も気にならないじゃないですか?笑 本州ではあまり使われない言葉かもしれませんが、“牧歌的” でゆとりのある空間をつくりたいと思っているんです。

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プランテーション内には、薪のストーブが!

Shop Info
・住所 : 札幌市白石区菊水8条2丁目1–32
・TEL : 011–827–8868
・営業時間 : 11:00–22:00(L.O 21:30)
・定休日 : なし *年末年始休あり

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5)MORIHICO. TSUTAYA 美しが丘

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最後に訪ねたのは、森彦がTSUTAYAとコラボレーションした、約1,000坪もの広さを誇るライフスタイル書店。以前大型スーパーだった場所を、約半年でリノベーションして完成させたというから驚きです。

市川美しが丘という場所は、大型ディスカウントショップがいたるところにあり、暮らしのパフォーマンスは極めていいわけです。一方で、精神のゆとりを満たす場所があまりなかった。だから、ライフスタイルの提案をしていくような面白い店舗をつくろうとTUTAYAと一緒にコンセプトを創っていきました。

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市川まず、お客さまがお店に入って真っ先に見える場所に、セミオートのエスプレッソマシン、水出しコーヒー器など、手技を必要とした道具を置きました。もちろん、他のMORIHICO.の店舗と同様にハンドドリップで淹れています。機械では真似できないような、「“手”の復権」を伝えたいんです。

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市川さん曰く、テーマは「ナチュラルジャンクな空間」。鉄や木、コンクリートなどできるだけそのまま使用し、サビやエイジングもあえて残しています。温かみがあり、ついつい長居してしまうような居心地がよい空間ができあがっていました。

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森彦のマスコットカーのシトロエン
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美しが丘店が掲げるキャッチコピー「コーヒーと一緒に、 一日ずっとひとりでここにいていいよ。」

Shop Info
・住所 : 北海道札幌市清田区美しが丘3条4丁目1番10号
・TEL : 011–886–1111
・営業時間 : 08:00–25:00
・定休日 : 年中無休

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今回紹介した、森彦のカフェマップをつくりました。よかったら使ってください。

こぼれ話 : 森彦を最初に見つけたのは “森ガール” ?

今でこそ、札幌で「森彦」と言ったら知っている人が多いカフェですが、人気の火付け役になったのは、今で言う “森ガール” なのだそう。

市川当時はブログがなかったので、HTMLを自分で書いている女子たちがこ一眼レフカメラを片手にこぞって来てくれたんです。そういう人たちが「北海道に来たら森彦だよね」というふうに広めてくれたんですね。

たとえば、森彦の2号店(アトリエ・モリヒコ)をつくるときに、ここを円山の店を「森彦本店」と名乗ったんですが、「ここを本店って名乗らないでほしい」って言われたんです。チェーン店っぽく呼ぶことは止めてほしかったんでしょうね。あとは、お店に入るなり、こういう空間が残っていることがうれしいのか、感極まって泣く方もいました。

オープンしてから毎日のように、ドラマが起きるわけです。それを見てたら「とんでもないものをつくってしまったな」と思ったんです。これはいい加減なことはできないぞ、と。

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前回の記事でも紹介したように、コンセプトは違えど、どの店舗でも「お客さまが居心地良く時間を過ごせるかどうか」をすごく大事にしているなぁと感じました。

お店は、お客さまを入れる器です。お客さまがいわばメイン料理なので、どんないい器があったって、料理がなかったら器の意味がないんです。僕のやるべきことは、料理を引き立てる器をつくることなんです。

森彦3本立ての最後の記事は、森彦代表の市川さんの半生と珈琲についてのインタビューを公開予定です。

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