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【東京・幡ヶ谷】三ツ星レストラン出身シェフは「お菓子を料理する」。人気店「Equal」のスイーツの秘密とは

UPDATE:

創り手を訪ねる取材ライター

Yui Ichihara

2019年のオープンから5年。東京・幡ヶ谷で根強い人気を誇り、いまだ入店待ちの行列が途絶えないパティスリー「Equal(イコール)」。オーナーは、ミシュラン三ツ星を獲得するフランスの名レストランにおいて、アジア人初のシェフパティシエに抜擢された経歴をもつ後藤裕一(ごとう ゆういち)シェフです。

ラグジュアリーな食の世界で生きてきたであろうシェフが、自らの店に定めたコンセプトは「街のお菓子屋さん」。看板商品の「チーズケーキ」や「シュークリーム」はシンプルだからこそ際立つおいしさを追求。そんなEqualがスイーツマニアを惹きつけて止まない本質的な魅力と、後藤シェフのお菓子作りの哲学を紐解きます。

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

目次

スイーツの本場・フランスを知るシェフが提案する「街のお菓子屋さん」

新宿の目と鼻の先、東京・幡ヶ谷。駅から徒歩5分ほどの風情ある商店街の一角に、朝9時過ぎから行列ができるのは、すでに日常の光景です。

カラフルな屋根や壁、タイルが異国情緒ある店構え

Equalはフランスで修行を積んだオーナーシェフ・後藤さんが「街のお菓子屋さん」をコンセプトにオープンしたパティスリーです。曲線を描く美しいショーケースには、子どもから大人まで誰もがよく知る定番ケーキや、クラシックな焼き菓子が並び、小型な店内でありながらも豊富なラインナップが揃います。

自然体で快く対応してくれる後藤シェフ/ウィリアム・モリスの壁紙が映える店内。昨年面積を広げ、スタンディング形式のイートインスペースも増えた

フランス滞在中、「フランス菓子とは本来、カジュアルで日用的なものである」と感じたという後藤さん。他にも常に自然体であるパティシエたちや、お客さまと店のフランクな関係性などにフランス菓子の理想の在り方を見出し、店名の「Equal」にもその想いが込められています。

Equal=「対等の」。お客さんと店、また店の職人やスタッフ同士においても心がけられている

「レストラン出身だからでしょうか。料理のような発想でアレンジを加えて、自分なりのものを作るのが好きです。お菓子を作っているというよりは、“お菓子を料理して作っている” という表現の方が、僕のスタイルを伝えられるかもしれません」と話す後藤シェフ。

そんなEqualの渾身のケーキがこちら。

奇をてらわないスイーツたち。唯一無二のおいしさの秘密とは

フォトジェニックを追い求める世間と逆行し、潔いほど飾り気がないのが印象的なEqualのスイーツ。そこには見た目にとらわれず、本質的な個性を重視する後藤シェフの哲学が息づいており、舌の肥えたスイーツマニアを確かに虜にしているのです。

一見どこにでもありそうで、どこにもない。唯一無二のケーキたち

チーズケーキ/¥680(税込)

純粋なレアチーズケーキかと思いきや……?

店の代名詞でもある「チーズケーキ」。
見た目はベーシックなレアチーズケーキのようですが、実は火入れしているため「ベイクドチーズケーキ」なのです。ステーキの「レア」と同じように考えれば、仕組みがわかりやすいかもしれません。
低温でじっくりと火を入れ、チーズの旨みを引き出しつつ、生のような食感を残すように焼いているとのこと。ぷるんとした生地は、生感とベイク感を両立させた絶妙なバランス。程よい塩気のクラスト生地や上層の爽やかなクリームソースが、チーズの旨味を引き立てます。甘さ控えめで味のキレがよく、お酒にも合いそう。

この洗練されたビジュアルには理由があります。もともと系列店のレストラン「PATH(パス)」で提供されていたメニューですが、生に限りなく近い生地は型崩れしやすく、デセールで提供できてもテイクアウトには不向きでした。そこで、試行錯誤の末、クラスト生地で両側をはさむことで持ち運びやすくし、Equalの定番商品へと進化しました。

シュークリーム/¥300(税込)

こんがりとした焼き目と凸凹感が、素朴でかわいい

こちらも看板商品の「シュークリーム」。カスタードクリームは通常より短時間でさっと炊き上げ、適度に水分が残った軽やかさ。和菓子のようなすっきりとした味わいをイメージして作られたとあって、上品な後味です。
シュー生地はしっかりとした噛み応えとほどよい塩気、そして上に絞って焼かれたアーモンドクリームが香ばしい甘さとザクザク食感をプラス。香りの余韻も強く、小ぶりなサイズですが満たされる一品です。

フレンチクルーラー プレーン/¥400(税込)

プレーンと、季節がわりの味2種が楽しめる

「フレンチクルーラー プレーン」もEqualらしい一品。
多くのパティスリーでは縁のない「揚げる」という工程は、レストラン出身シェフだからこそある選択肢のひとつ。フレンチクルーラーはシュー生地を揚げて作りますが、その生地にもこだわりが。外はさくっと、中はしっとりしてる食感を何度も試作を重ねて目指したといいます。また生地がとても繊細で、毎朝作っているというので手間もかかります。
パティスリーらしいおしゃれな形で、食感はしっとり・ふんわり・ぽよんとした弾力で、オムレツのような卵単体のストレートな味わいが惣菜風で優しい。小さなお子さんからご年配の方まで愛されている味わいです。

パティスリーのケーキによく見かける「アレ」がついていない

ちなみに……Equalのケーキにはブランド名をアピールする「ピック」がついていません。それでも十分な存在証明ができるのは、本質的な個性を突き詰められているから。

後藤シェフ

「お菓子作りはオリジナリティが一番大切だと思ってます。それは、見栄えやちょっと飾りを変えるということではなく、中身そのものをちゃんと自分なりにアレンジすること。同じ素材を使っていても作り手側の腕でいかようにも味が変わるのが、お菓子作りのおもしろいところですから」

一歩遅れてのスタートから、“アジア人初”の大抜擢へ

豊かな実績と確かな実力をもち、業界で名を馳せる後藤さん。改めてこれまでの道のりを振り返ります。

大学生の頃、法学部に在籍していた後藤さんは、のちに就職先となるフレンチレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」のケーキショップでたまたまアルバイトをしていました。
この頃はまさかお菓子作りの道に進むなんて、思ってもいなかったといいます。

サラリーマンになることに違和感を感じた、と後藤さん

就職活動にさしかかると、物作りやデザインなど、職人的な仕事をしたいと思うように。いくつかの選択肢を検討するなか、アルバイト先のケーキショップで後の恩師となるシェフパティシエのケーキを食べ、感激したことから、食の作り手へのリスペクトが芽生えます。

後藤シェフ

「そういえば、小学生のときの夢がシェフだったこともこの時に思い出しました」

焼きたてのスイーツが次々と店頭に。甘く芳しい香りが充満していく

「オテル・ドゥ・ミクニ」に就職すると、大学在学中から研修がはじまり、後藤さんはもっとも過酷な時期を過ごします。

後藤シェフ

「でも、大変なのがかえってよかった。同期は専門学校の卒業生ばかりで、同い年だけど感覚的には自分より先をいっている先輩のような存在。だから逆に苦しい方が“やってやるぞ根性”じゃないですけど(笑)自分の成長に繋がると思いました」

後藤さんの向上心は周囲にも伝わったのでしょう。のちに広島店のシェフパティシエを任され、厨房以外の仕事にも関わるようになりました。

その後、フランスに三つ星の本店を構えるレストラン「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」へと入社。面接の際は、「これから1年間頑張るので、評価してくれるのであればフランス本店に行けるようにしてほしい」と面接官にアピール。すると採用後1年、念願叶いフランス本店への切符を手にします。さまざまな食のプロフェッショナルと切磋琢磨しながら、デザートだけではなく、朝食やパン作りまでは幅広く経験。さらにはわずか30歳にしてアジア人初となる同店のシェフパティシエに任命されるなど、伝説を生み出します。

フランスでの特別な出会いとは

フランスでは人生の目標とすべき人にも出会えたと後藤さん。

後藤シェフ

「シェフのミッシェル・トロワグロ氏は、僕が理想とする生き方をしていました。日本では、シェフというと仕事に苦しまないと自立できないイメージが強かったのですが、フランスの方は仕事と人生を別々に考えないんですよね。全部ひっくるめて、人生じゃん!と。それをトロワグロ氏は、三ツ星という高いレベルを求められるなかで結果を残しながら人生を楽しんでいる。僕もそうありたいと思いながら、equalでのお菓子作りと向き合っています」

数々の濃厚な経験から、後藤さんはスイーツを「繋ぐもの」と表現。

後藤シェフ

「お客さんが喜んでくれるのを見るのが嬉しいですし、そのお客さんがEqualのケーキを通じてまた別の誰かと共感して繋がったり……。人と人を繋ぐハブのような存在であれたら幸せですね」

深みを増して、新たな挑戦へ

かくして人気店は、今後どのようなビジョンを描いていくのでしょうか。

後藤シェフ

「商品のラインナップをもっと充実させて、店として深みを増していきたいです。あとは、デザートを専門とした店にも挑戦してみたいなと考えています」

Equalでは小さな焼き菓子やジャムも豊富に販売している。さらなる拡充に期待

一流シェフのクリエイティブを日常的に楽しめるEqual。ケーキを通じて、後藤シェフの哲学や技、そしてパティスリーを必要以上に特別なものにしないフランス文化に私たちは惹きつけられているのかもしれません。
多少の入店まちもなんのその、Equalへと足を運んでみてはいかがでしょうか。

SHOP INFORMATION

SHOP Equal(イコール)
WEBSITE https://www.instagram.com/Equal_pastryshop
ADDRESS 東京都渋谷区西原2-26-16
TEL 03-6407-0885
OPEN 【平日】10:00~17:00
【土日祝】10:00~17:00
CLOSE 月・火・水曜日※不定休あり

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