こんにちは。ライター初挑戦、和菓子女子のせせなおこ(@nao_anko)です。

私は、小さいときから和菓子が大好き。ほとんど毎日和菓子を食べています。

和菓子には大好きな日本の文化や歴史がギュッと詰まっています。和菓子の魅力をより多くの人に伝え、和菓子をより身近に感じてもらえたらうれしいなと思っています。

今回ご紹介するのは、鹿児島で長く愛され続ける老舗和菓子屋「明石屋」です。どのお菓子も本当においしく、また、いつも店員さんの温かい接客にうれしくなる、大好きなお店です。

そんな明石屋の代表銘菓「かるかん」(軽羹)のこだわりと地元の人たちに愛される理由を、支配人の橋口清和さんに伺いました。

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お店の場所は鹿児島市電、朝日通駅から徒歩2分。店内のショーケースにお菓子がずらっと並び、高級感が漂います。

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お店の表には、その季節にちなんだ暖簾が飾られています。もともと明治時代の地図には、産業会館(現・名山町)のあたりに「明石屋」という名前があるのだそう。昔、産業会館のあたりは船着場として使われていて、船着場に着いた砂糖や小豆を下ろして使っていたのではないかといわれています。

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明石屋の名前は、島津斉彬公が参勤交代で江戸にいるとき、江戸の菓子職人をたいそう気に入り、薩摩に帰って来るときに一緒に連れて帰って来たことに由来します。

その菓子職人の名前が、兵庫県明石出身の八島六兵衛。明石の出身だったため、「明石屋」という屋号で、安政元年(1854年)に薩摩で商売をはじめたと言われています。

明石屋の代表銘菓「かるかん」

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かるかん 1個216円

明石屋のかるかんは、写真からは想像できないほど、しっとり・もっちりと弾力があります甘さはほんのり。口に近づけるとふわっと甘い香りが漂い、食べてみると、口の中に山芋の香りと独特な舌触り、ほんのりとした甘さはとても幸せな気持ちになります。

明石屋といえば、やはり「かるかん」です。CAKE.TOKYOのメインの読者は東京なので、初めての人でもわかるように、かるかんについて教えてください!

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橋口かるかんの原料は、山芋、米粉、砂糖の3つのみです。

この3つの材料を大きな銅製のお椀に材料を入れ、撹拌機へ入れて混ぜると生地が完成です。この生地を「かるかん」はせいろに入れて蒸し、「かるかん饅頭」は型にいれて蒸します(饅頭は中にあんこがはいります)。

実はかるかんは、明石屋のお菓子というよりも、薩摩、鹿児島で広く愛されるお菓子であり、昔は家庭料理でもありました。江戸時代には薩摩藩主、島津斉彬に献上されたという記録も残っています。

かるかんの存在自体は1699年、初めて文献に登場していますが、そのほとんどが謎に包まれてきました。ですが、鹿児島の人々に愛され、伝統が受け継がれたことにより、今日に至ります。

明石屋においては、元々あるかるかんを、江戸から島津斉彬公が連れて来た八島六兵衛がつくり方を確立させたことで、明石屋のかるかんがつくられるようになりました。

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進物用のかるかん

かるかん独特の香り、そして、輝く白さはとても美しいです。今ではこちらのほうがポピュラーといってもいい「かるかん饅頭」ですが、実は、かるかんの生まれた約150年後に生まれたものだとか!

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かるかん饅頭 1個162円

橋口鹿児島の方はご存知かもしれませんが、県外の方は「あんこが入ってないかるかんがあるんですね!」「あんこが入ってない方が高いんだね」と驚かれる方が多くいらっしゃいます。

あんこよりもかるかんの生地の方が原価が高く、かるかんは一本の棹菓子(さおがし)を一つ一つ切るため、手間がかかります。そういったご意見をいただくと、まだ認知されてないな……、と思いますね。(※棹菓子:細長い形をした和菓子のこと)

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屋久杉でできた木箱に入ったかるかん

橋口ただ、そのために積極的に全国展開しよう、とは思っていなくて。口コミなどでゆっくり広まっていけばいいな、と思っています。

地元の方がメインで、プラスαで観光客などに買っていただければいいですね。やはり、大事にしたいのは、地元の方々に愛されるお菓子屋さんでいることです。

おいしさのこだわりは、”全て”

明石屋のお菓子はどのお菓子も本当においしいです。おいしさへのこだわりを教えていただけますか。

橋口こだわりは、”全て”です。

全て?

橋口そうです。かるかんの原材料の山芋に関しては、色々な種類を吟味しています。数年前までは鹿児島の自然薯を使っていたのですが、現在は粘りをひとつひとつ見ながらこれなら使えるという基準のもと、選んでいます。

お米にしても、その時々で○○産が美味しいと聞けば、そこから取り寄せています。ですから、産地にこだわっているわけでなく、鹿児島産を使うこともあれば、新潟産を使うこともあり、そのときのおいしいものを使っています。

暖簾や上生菓子が変わり、お店を訪れるたびに季節を感じられます。季節に対するこだわりを教えてください。

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3月のお菓子「菜の花」

橋口やはりお菓子というのは、季節で感じるものです。今は使おうと思えば年中使える素材が多くなってきましたが、春には桜餅やうぐいす餅、冬には栗餅やいちご大福など材料は旬のものを使っています。また、その時期の気候に合わせて発売するタイミングを調整しています。

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本店には季節の朝生菓子も並ぶ

日本のもつ四季の美しさを改めて感じることができるのは、季節に対する心配りだったのですね。

ひとつひとつを大切に

明石屋さんの丁寧な接客はいつも温かな気持ちになります。

橋口ありがとうございます。接客は一つの商品だと思っていますから。そこにこだわらなければ、コンビニやスーパーと一緒になってしまうと思うんです。

「こういうときにはこういうお菓子がいいですよ」というお声がけ、笑顔ひとつ、所作ひとつにこだわっています。

例えば、自分で食べるお菓子かもしれないし、人に贈るものかもしれない。お客さまは、一人一人買われる理由が違うので、なぜ買いに来られたのだろう、ということを考えながら接客することを心がけています。

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普段食べてもらうことはもちろん、進物用のものも意識しているので、包装ひとつ、箱ひとつに明石屋の全てを感じて、また来たいと思っていただければなと思っています。

なるほど。いつも感じていた温かな気持ちになる接客は、お客さまのバックグラウンドまで考えていただいているからこそなのですね!橋口さん、ありがとうございました。

手書きの温かみを感じて欲しい

最後に、上生菓子の手書きのリーフレットをご紹介します。

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明石屋では、手書きの絵で毎月変わる上生菓子を表現。明石屋の上生菓子は職人の手によって一つ一つ手づくりされています。

そのため、お菓子ひとつひとつに表情があり、写真で”ひとつの顔”のものを取り上げるよりも、手書きで表現することで、見る人によってお菓子の顔が違って見えることを伝えたいからだそうです。特別絵にこだわっているわけではないけれど、手書きの温かみを感じて欲しいとのこと。

そんな想いのこもったリーフレットは毎月集めている方もいらっしゃるそうで、月末にはなくなってしまうことも。

お店に行かれた際は、是非チェックしてみてくださいね。県外の方は、オンラインショップで買うこともできます。

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今回、大好きな明石屋にかるかんの歴史、お菓子の美味しさについて教えていただきました。お菓子づくりはもちろん、接客や季節に対して、一つ一つ思いを込めて丁寧に向き合っていらっしゃるのがとても素敵で印象的でした。明石屋の美味しさをぜひ味わってみてくださいね。

SHOP INFOMATION

NAME 明石屋
URL https://www.akashiya.co.jp/index.html
ADDRESS 鹿児島県鹿児島市金生町4-16(山形屋北筋)
TEL 099-226-0431
OPEN 9:00~18:00
CLOSE 無休

※他、臨時休業する場合があります