[3大要素]
いちご / 信頼のおける農家から届く旬のいちご
スポンジ / 上白糖とはちみつをたっぷり
クリーム / 脂肪分38%と47%を独自にブレンド

日本のショートケーキ文化は、世界に誇れるくらい素晴らしい

toshiyoroizuka_01

2017年3月30日でToshi Yoroizuka Mid Townが10周年を迎えられたとのことで、おめでとうございます!今日はミッドタウン限定のショートケーキ「MTフレーズ」について教えてください。

toshiyoroizuka_02

鎧塚まず、ショートケーキはフランス菓子ではありません。フランスにはショートケーキというものが存在しないんです。ですから、ヨーロッパで8年も修業してきたパティシエがショートケーキをつくるなんて……、と言われる風潮もいまだにあります。

ショートケーキは、完全に日本のオリジナルのものなんですね!そんななか、鎧塚シェフが、ミッドタウンのお店を代表するケーキとしてショートケーキを選ばれたのはなぜなのでしょう。

鎧塚単純に、ショートケーキは素晴らしいケーキだと思うからです。わたしは、日本のスポンジ文化のレベルは世界一だと言ってもいいほどだと思っています。日本のケーキの半分は、スポンジを使ったものですし、頭の中でケーキをひとつ思い浮かべてくださいと言われると、多くの方はショートケーキを思い浮かべるのではないでしょうか。

toshiyoroizuka_03

確かに、そう言われるとそうかもしれません……。

鎧塚「フランスにはショートケーキはない」「だから何なんだ?」というのがわたしの本心で。ショートケーキというお菓子は、本当に素晴らしいですよ。

内容もたいへんシンプルで、スポンジ、生クリーム、いちご、この3つのバランスがすべてを決める。そして、ショートケーキがおいしいかどうかが、そのケーキ屋さんのレベルを語るものでもある。

日本にはすばらしいショートケーキをつくるパティシエがたくさんいらっしゃいます。その方々の存在が、自分にとってよいプレッシャーになっています。

徹底的な試作とリサーチで素材のベストなバランスを探っていく

toshiyoroizuka_04

まずは、スポンジのこだわりについて教えてください。

鎧塚スポンジは、はちみつと上白糖をたっぷりいれて、しっとりとした食感に仕上げています。

口当たりがよく、とてもなめらかですね。ほのかな甘みも本当においしいです。クリームはどうでしょうか。

鎧塚クリームは、脂肪分38%のものと47%のものをブレンドして入れています。クリームに関しては相当リサーチをしています。濃厚でいながら軽やかな口当たりで、テイクアウトで召し上がったときにも、おいしさをキープできる品質を目指しています。

常においしいいちごがキープできるのは信頼できる農家との関係性があってこそ

toshiyoroizuka_05

いちごにはどのようなものを使っているのでしょうか。

鎧塚うちは農家の方とのご縁を、とても大切にしています。いちごに関しては、いまはいちごの種類にこだわりはありますか?

鎧塚とちおとめにこだわらず、群馬の「やよいひめ」、香川の「さぬきひめ」など、使ういちごは時期によって様々です。いちごのコンディションも日々移り変わりますから、常にアンテナをはって、いちばんおいしいもの、摘みたてのものを選んでいます。

摘みたてのフレッシュないちごのおいしさは、格別ですね。

鎧塚摘みたてのいちごを届けていただけるのも、信頼できる農家さんとのご縁があってこそ。農家の方々の仕事のすばらしさは尊敬してもしきれません。ケーキづくりのインスピレーションが湧くのは、いつも農家の方と会っているときなんです。

toshiyoroizuka_06

シェフは、農園を併設したパティスリー&レストランをオープンされたり、さまざまな地域のPR大使に就任されたりと、地域活性や農家支援のプロジェクトなどでも積極的に活動されていますね。

鎧塚わたしはほんの一端を担っているだけで、自分にできることをしているだけなのです。パティシエとして、素材の生まれる場所である農家の現状をしっかり把握して、それを多くの方に伝えていかなくてはいけないと思っています。

うちのスタッフにも、できるだけ農業を体験させているのですが、ブルーベリーの収穫なんて、わたしより詳しいスタッフの子がたくさんいますよ。畑を知ることは、パティシエにとっても非常に大切なことだと思います。

自分らしさを主張するものではなく、より多くの人に愛されたいという想いでつくるもの

鎧塚シェフのケーキには、芸術品のように複雑な味わいが魅力のものもたくさんありますが、そのなかで、ショートケーキにおける理想というものはあるのでしょうか。

鎧塚わたしは、すべてのケーキが、お客さまの好みの最大公約数を目指すものであるべきだとは思っていません。

「これがわたしの味です!」という自分のケーキが完成したとして、もしひとりしか気に入ってくださるお客さまがいなかったとしても、それで満足という、とんがったケーキもあるべきだと思っています。

ただ、ショートケーキはそういう性質のケーキではありません。

ショートケーキは、最大公約数、ということでしょうか。

鎧塚そうです。ショートケーキに関して言うと、老若男女すべての方においしいと言っていただけるような、素直でシンプル、まっすぐな味づくりを理想としています。そしてそれは、自分らしさを押し出したケーキをつくるのと同様に、とても難しいことです。ですからそのための努力やリサーチは欠かしません。

この10年で、変わったところはありますか?

鎧塚大胆に変えることはありませんが、少しずつ進化は繰り返しています。たとえばより良い生クリームができれば変わったり、いちごの種類もどんどん進化していますから、新しいものを試したりして、よいおいしいものができるなら躊躇せずにトライしています。

お客さまの感想でうれしかったものはありますか?

鎧塚ショートケーキに関しては、「おいしい!」と単純に言っていただくのがいちばんうれしいですね。

イートインのショートケーキには感性を込めたデコレーションを

toshiyoroizuka_07

お店でいただくときのお皿のデコレーションがとても美しいですね。

鎧塚こちらは、そのときどきのパティシエの気持ちを込めてひと皿ひと皿丁寧に描いています。毎日来ていただいても、毎回違うデザインのものを楽しんでいただけると思います。

toshiyoroizuka_08

ショートケーキのほかに、おすすめのケーキはありますか?

鎧塚がらりとイメージが変わりますが、こちらの「ババ」はいかがでしょうか。ラム酒の効いたフランスの伝統菓子で、ババ発祥のお店で直接学んだ本場のルセット(フランス語でレシピのこと)が魅力です。

——じゅわっと染みこんだラム酒が大人の味で、とってもおいしいですね!

toshiyoroizuka_09

良い洋菓子店のショーケースには “勢い”がある

toshiyoroizuka_10

改めて、シェフがパティシエとして大切にしていることは何でしょうか。

鎧塚言葉で説明するのは難しいのですが、良い洋菓子店のショーケースには、“勢い” というものが必ずあります。昔わたしが通っていたヨーロッパの某パティスリーで、ある日、“勢い”がなくなっていたことがあった。不思議に感じて聞いてみると、その日はオーナーシェフがいなかったんです。

オーナーシェフは厨房からは離れていたので、店にいなかったとしても、ショーケースの見た目も、お菓子のレシピも、つくっているスタッフも変わらない。それでも、分かる人には分かる変化が確実にあるんです。そして“勢い”がなくなった店は、確実に人気も下がってきます。

なんだかすごいお話ですね……。

鎧塚わたしが感じた“勢い”というのはとても感覚的なものなので、言葉で説明することはできません。

ただ、スタッフひとりひとりの心構えや気持ち、素材の質、ちょっとしたコンディションがケーキの味や店の雰囲気に影響し、必ずお客さまにも伝わると思っています。ですからうちも、ショーケースには特に注意を払っています。

toshiyoroizuka_11

最後に、シェフにとってショートケーキとはどのような存在でしょうか。

鎧塚胸をはって「世界に自慢できる日本の最高の洋菓子」です。これからもよりよいショートケーキを目指していきます。ぜひ一度食べてみていただけるとうれしいです。

toshiyoroizuka_12

■ 教えてくれた人

鎧塚俊彦(よろいづかとしひこ)さん
京都府宇治市生まれ。スイス、オーストリア、フランス、ベルギーと8年間ヨーロッパで修業を積み、パリでのコンクールで優勝。2014年、恵比寿にToshi Yoroizukaをオープン。行列の絶えない人気店として一躍有名に。2007年、六本木にToshi Yoroizuka Mid Townをオープン。2011年、小田原石垣山山頂に約2000坪の農場を併設したパティスリー&レストラン「一夜城Yoroizuka Farm」開設。「小田原ふるさと大使」「長野県おいしいフード(風土)大使」「三重県フードイノベーションアドバイザー」「フランス観光親善大使」就任。パティシエとして各メディアで活躍しながら、地域の活性化や農業支援にも積極的に携わる。

toshiyoroizuka_13

(写真一部店舗提供)