こんにちは。福岡在住のライター・寺脇あゆ子です。

今回は、南国・宮崎へと遠征し、オープンから3年半ながら、地元・宮崎で確固たる地位を築いている「PATISSERIE en haut(パティスリー アンオー)」を訪ねてきました。

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JR宮崎駅からタクシーに乗り7、8分。住宅街の一角にその店はあります。

この店のオーナーパティシエール・芋生玲子(いもう れいこ)さんは、2012年、フランス・パリで開催された国際製菓コンクール「ル・モンディアル・デ・ザール・シュクレ」で世界一に輝いた経歴の持ち主。

その活躍ぶりは、地元・宮崎のメディアでも取り上げられており、タクシーの運転手さんに「世界一のケーキ屋さん」と伝えるだけで「アンオー」まで連れて行ってくれるほど、知名度は抜群です。

そんな芋生さんに、これまでのご自身のことやお店への想いなどをお聞きしました。

27歳で一念発起。吉祥寺の名店『アテスウェイ』で修業をスタート

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芋生さんは、宮崎生まれ宮崎育ち。地元の高校を卒業後、大阪の製菓専門学校へ進学。一度は宮崎に戻ってきたものの、若いうちは外に出た方がいいと考え、福岡や京都のカフェで働いていたそうです。

「私にはいつか宮崎で自分の店を持ちたいという夢があり、当時は漠然と宮崎でカフェをしようと考えていました。一時、宮崎のカフェで働いたこともありましたが、福岡や京都と違ってカフェ文化が根付いていないことに気づいて。

カフェって、デザートや簡単な食事でお客さまを呼べるものではなくて、飛び抜けたセンスがないと難しいんですよね。けれど、私にそのセンスがあるとは思えず……。ただ、店を持ちたいという想いはずっとあったので、店を持つなら何かしら自分の武器を持たなくてはと考え、改めてケーキの道を志すべく27歳のときに東京へ行くことを決意したんです」

まずは、修業先を探そうと、3泊4日で東京を訪れた芋生さんは、4日間で20軒以上のケーキショップを食べ歩いたそうです。なかなかピンとくるお店に出会うことができないまま最終日を迎え、最後の最後に訪れたのが、吉祥寺の名店「a tes souhaits!(アテスウェイ)」でした。

「4日間ずっとケーキを食べ続けていたので、正直、気持ち悪くなっていたんですけど(笑)、『アテスウェイ』のケーキはとにかくおいしくて。店の雰囲気も良かったですし、ここだ!と思って店のスタッフに履歴書を渡して帰りました」

運良く面接してもらえることになった芋生さんは、再び上京。条件なども聞かないままに入社を決めます。

スタートはホールから。先輩シェフに刺激され世界を目指す

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店内にはトロフィーや賞状が飾られています

「いざ入社してみたら、厨房ではなくホールだったんです(笑)。でも、入ってしまえばあとは自分でなんとかしようと考えていたので、厨房であろうとホールであろうと、そこは大きな問題ではありませんでした。

当時、『アテスウェイ』の川村英樹シェフが有名な方ということも知らなかったのですが、ホールで働きながら時々厨房に入らせてもらっていて。1年半ほどホール中心で働いた後、厨房に入り、1年足らずでスーシェフ(川村シェフに次ぐ2番手のシェフ)を任せてもらえることになったんです」

川村シェフをはじめ、『アテスウェイ』の先輩シェフたちは、国内外のコンクールで数々の賞を受賞しており、芋生さんは「こんな世界があったのか」と驚き、自ずと自身も挑戦するようになったといいます。そして、国内外で様々なコンクールにチャレンジし続け、2012年、ついに「ル・モンディアル・デ・ザール・シュクレ」で世界一となったのです。

2013年、地元・宮崎に『アンオー』オープン!

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世界大会出場を前に「この大会が終わったら宮崎に帰って店を開く」と考えていた芋生さんは、2012年の年末に『アテスウェイ』を退職し、2013年の年明け早々、宮崎に戻ってきました。

「世界大会で優勝したときに、宮崎のテレビ局などが取材してくださったりして、宮崎に戻ってきたら自分の知名度が上がっていて驚いたことを覚えています。オープンする前から『テレビ見たわよ』『いつオープンするの?』と言ってくださる方がたくさんいらっしゃって。だからこそ、皆さんの期待を裏切らないようにしなければと、強く感じましたね」

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オープンから4年目に突入し、現在は厨房8名、ショップ7名の15名という規模へと成長を続ける『アンオー』。

東京での経験で「ケーキは甘いものではなくおいしいもの」であることを実感したという芋生さんは、「私が『アテスウェイ』で最初に感じた衝撃を、宮崎の人たちにも味わってほしい」という想いを強く思っているそうです。

「私は宮崎で生まれ育ちましたし、私の味覚は宮崎で育まれたものです。だから、宮崎の人たちとの味覚とはそう違わないと思うんですね。私がおいしいと感じるものは、宮崎の皆さんにもおいしいと思ってもらえるはず。そう思いながら、日々のケーキづくりに励んでいます」

アンオーの人気商品「ルミエール」と「シルク」

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ショーケースには、には定番から季節の素材を使ったものまで、常時25種前後のケーキが並んでいます。

写真の「ルミエール」(左・460円)と「シルク」(右・460円)は、いずれも『アテスウェイ』時代に日本代表としてペアを組んでコンクールに出場した岡崎正輝シェフとともに考案したものをベースにつくられています。

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なかでも「ルミエール」は、その断面の美しさに感動し、しばらく見とれてしまうほど。基本的にはピスタチオ、チョコレート、フランボワーズの組み合わせですが、それぞれの素材をムースやジュレなどに変化をもたせています。

その「ルミエール」を口にした瞬間、その食感の違いに驚き、異なる味が次々に追いかけてくるその味わいに衝撃が走ります。

また「シルク」も、「ルミエール」同様にいくつもの層で構成されています。グラサージュで覆われたムースショコラの中は、上部にオレンジのムースや柑橘系のジュレ、下部にはしっとりとしたカカオのスポンジとガナッシュの層になっていて、シナモンのほどよい香りが効いいています。濃厚だけど甘すぎず、大人な味わいに心躍ります。

まずは宮崎で、確固たる地位を築くこと

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宮崎で開業するにあたって、芋生さんは一緒に働いてくれるスタッフが確保できるかが不安だったそうですが、現在は、宮崎出身者だけでなく、京都や山口、熊本、鹿児島からやってきた若者たちが、芋生さんのもとでケーキづくりを学んでいます。

「私が教えられることはすべて伝えて彼らをしっかりと育てたいと思っていますが、県外の子たちが地元に戻ったり、次のステップとしてほかのお店に入ったりしたときに『アンオー出身だったら大丈夫だね』と、安心してもらえるような存在でありたいですね。

いろいろとお誘いいただくこともありますが、今は地域ナンバーワンとして、宮崎の人たちを裏切ることのない確固たる地位を築くことが先。そのあと、少しずつ全国的に知名度を高めていけるといいなと思っています」

宮崎の人々に衝撃や感動を与え続ける、芋生さんの挑戦は始まったばかり。今後の展開にも期待が高まります。

SHOP INFOMATION

NAME PATISSERIE en haut(パティスリー アンオー)
URL http://www.enhout.com
ADDRESS 宮崎県宮崎市江平東1-7-1 
TEL 0985-78-2227
OPEN 10:00〜19:00
CLOSE 毎週水曜及び木曜不定

※他、臨時休業する場合があります