こんにちは、ライターのツチヤです。
雪国育ちのわたしは、寒い冬を耐えてようやく出会える春が1年の中で一番好きです。おだやかに晴れた春の日は、どこか出かけたくなってしまいます。
4月を迎えた東京の暖かさに誘われて、今回お邪魔したのは東京・築地。思わず写真を撮りたくなるいちご大福があると聞いたからです。お店の名前は「築地そらつき」。現在は築地場外市場に2カ所にお店を構えています。
ショーケースにずらりと並ぶいちご大福の列! まるで大福からいちごが生まれているかのようなフォルムは、まさにフォトジェニックな一品です。
そんないちご大福の秘密を知りたくて、今回は「築地そらつき」の久保さんにお話を伺いました。
インパクト大の見た目。「築地だからこそ」
写真を撮りたくなるかわいいフォルムが一番気になりました。まずはどうして大きないちごを大福の上に乗せたのか、知りたいです。
久保「市場だからこそ」を突き詰めた結果ですね。一般的ないちご大福のいちごってすごく小さいんです。小さないちごでは、僕らがやりたいものとは違う。
反対に大きないちごを大福の中に入れると、それを包むあんこやおもちが薄くなってしまいます。いちごも餅もあんこも全部を楽しんでもらいたくて、欲張ったらこうなりました。
欲張りないちご大福! うれしいです!
久保それにいちごを包んじゃったら、見た目の楽しさも半減しちゃうでしょ。築地に来ている人は観光で来ている人も多いんです。最近はインスタグラムも流行ってるし、お店に並んだ大福の写真を撮っていくだけの人もいるくらい。
理想の大福として、味だけでなく、見た目のインパクトも全部ひっくるめて「市場だからこそ」を体現するにはこの形がベストだったんです。
市場だから仕入れられる、大きないちご
乗っているいちご、ほんとうに全部大きいですね。提携の農家さんがいらっしゃるんですか?
久保農家さんではなく、バイヤーさんとやりとりしています。固定の農家さんをつくってしまうと、天候ひとつで仕入れられる数が大きく影響しちゃうんです。扱っているいちごのサイズは、基本的に関東でいう3Lと大きなサイズです。
粒の大きさ、糖度、艶やハリ、そういうのを見て等級分けがされているいちごの中で、そのときの築地だから手に入る一番いいものをバイヤーさんに選んでもらっています。
築地ならでは、という感じがします。
久保白いちごを出せるのも、いちごに強いバイヤーさんとのご縁なんです。いま使っているのは『淡雪』という品種です。
わ! とっても香りがいいですね!
久保酸味も少ないんです。白いちごの大福は入荷したタイミングでしかお出しできないんです。
白いちごのいちご大福は500円と安くはありませんが、こんなに大きな白いちごを贅沢に楽しめるので、店頭で見かけたら一度は食べてほしいです。
しっかりもちもち。大福は餅があってこそ
大福のおもち、厚みがあるんですね。
久保大福だから餅もしっかり食べてもらいたくて、厚くしています。幻のもち米とも言われる『滋賀羽二重もち米』を使っているんですが、普通につくると柔らかすぎて、餅の歯ごたえが楽しめない。だから一回冷凍して締めて、むちむちとした歯ごたえが感じられるようにしています。
ぽってり、むにむにした感じがたまりませんね……!
久保いま大福って餅が薄いのも多いです。僕たちは、餅もしっかり味わってもらいたいから餅を厚くしているんです。だから一般的な大福より厚く感じるはずですが、それが売りなんです。
餅は餅屋へ、あんこはあんこ屋へ
あんこのこだわりについて教えてください。
久保使っている小豆は北海道のものです。実は、大福とあんこはそれぞれ別のところで製造しています。“餅は餅屋”じゃないけど、それぞれ得意なお取引先にお願いした方がクオリティ高いものができあがると思うんです。
いちご大福のほかに、いちごの乗っていない大福も販売されてるんですね……ずらっと並んでる大福の味は、いくつあるんですか?
久保今日は13種類ですね。黒豆つぶあん、こしあん、マンゴー、チョコ、カスタード、いちごヨーグルト、柚子、よもぎ、ずんだ、くり、ごま、抹茶、それと白桃。日によって多少変わりますが、12種類は毎日出しています。
12種類!
久保いちごが乗っているものは12種類の中から、6種類ほど。今日はつぶあん、こしあん、カスタード、チョコレート、抹茶。日によって変わることもあります。ケースに出してない味でも、声かけてもらえたらいちごを乗せることもできますよ。あれば、白いちごも。
来てくれる人を思ったら味の種類が倍に
13種類の味はどうやって決めたんですか?
久保最初は会議でみんなで話し合って、サンプルをつくってもらって食べて決めます。最終決定するのは4人なんですけど、意見出しているのはさらに10人くらいの人が携わってます。最初は6種類だったけど、ちょっとずつ増やしてきました。
会議では「この方が女子ウケしそう」なんて話も出るんでしょうか。
久保しますね。でもお客さんは女の子ばかりじゃないんです。おじいちゃんおばあちゃんのお客さんは甘すぎたらしんどいって人もいるし、外国からのお客さんもいるし。
老若男女、ワールドワイドに考えての味の多さなんですね。
久保いま外国の方の観光ブームになってるから、外国の方にも対応できるようにしてますね。日本を感じたくて和菓子を食べるんだろうけど、買うのはチョコレートってこともある。あんこが苦手な人もいるし、あんこじゃない味も外せないなって。
明太子から大福へ、事業のシフトチェンジ
そもそも、どうして築地で大福のお店を始めたんですか?
久保僕ら最初は明太子や塩ものを売る商売をしていたんです。そのときはボリューム出して売ってたけど、すぐにその手法が真似されちゃって。そのうち明太子の市場が飽和状態になるのは時間の問題だった。
築地の中でお客さんの取り合いになっちゃったんですね。
久保それで違う商品を考えていて、たまたま大福の製造工場の方とご縁があって「こういうのつくりたい」と相談してつくってもらったんです。
その完成した大福を食べて「築地であえてスイーツに挑戦するのも面白いぞ」と思ったんです。そして『築地大福』と名前つけて売り出したのが始まりです。それが3年前だから、2014年くらいかな。いちご大福もほぼ同じタイミングで始めました。
明太子から大福へのシフトチェンジがあったとは、驚きです。
久保大福が軌道に乗るまでにはスタッフ内でも「築地でちゃんと受け入れられるのかな」という不安の声がありました。それに築地って文化がある場所でしょ。
だから僕らみたいな新参者はなかなか認めてもらえなくて、大福始めてしばらくは、「何売ってんだ」という周りのお店の雰囲気も感じていました。
外からも中からも懐疑的な声が。
久保そう。でもお客さんが認めてくれると、周りも認めざるをえない。築地自体、メディアに取り上げられる機会が多いのですが、いちご大福がテレビ番組で取り上げられてからは、びっくりするほどたくさんのお客さん来てくれて。
この1、2年くらいで認知されるようになると、築地の人も「がんばってるな」って言ってくれるようになってくれて。こうやって商売させてもらってます。
来てよかった、そう思ってもらえたら
取材している途中、一組の老夫婦がお店にいらっしゃしました。「向こうのお店で柚子が売り切れていたのよ」と話す奥様、どうやら柚子の味を求めて2つあるお店を巡っていた様子です。うれしそうな声の会話が聞こえてきました。
久保ああやってリピーターのお客さん来てくれるとうれしいですね。
「何回か来ていて」って言ってましたね。
久保観光で来ている人が多いけど、朝やこの時間(14時過ぎ)になるとおじいちゃんおばあちゃんや近所の人が来てくれることも多いですね。
久保来てよかったなって思ってもらいたいんです。それは観光で来ている人にも外国の方にも、この辺に住んでいる人にも。それでまた足を運んでくれたらうれしいです。
「また来たよ」って言ってもらえるとうれしいですよね。
久保商品もだけど、商品を通じて僕らのことも覚えてくれているのはすごくうれしいですね。しかも日本人だけじゃないんです。僕が覚えているのはハワイの方。覚えてもらえるのはモチベーションにもなりますね。
いちご大福を軸に、新しい挑戦も
今後のお店の展望を教えてください。
久保もちろんいちご大福とかを軸にはやっていくんですけど、会社としては新しい事にも挑戦していきます。だから、大福はお土産物にしたいんです。東京駅とかで地元に帰るときに買って帰ろうって思えるものに。「築地のそらつきさんの買ってきてくれたのね」って、もらった人がうれしくなるようなものにはしたいなって思っています。
久保さん、ありがとうございました。
「かわいい」がきっかけで知ったいちご大福。でもそこには芯のある商品へのこだわりとお店に携わるみなさんの思いがぎっしり詰まっています。
いちごの旬の季節が一番おいしく食べられるとのこと。また買ってすぐが食べごろと教えてもらいました。大きな口でがぶっと食べれば、欲張りないちご大福にきっと心が踊りますよ。
■商品リスト
いちご大福 300円
白いちご大福 500円(数量限定)
※天候等の状況により、お店に出ている味は変動します。
SHOP INFOMATION
NAME | 築地 そらつき |
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URL | http://www.soratsuki.jp/index.html |
ADDRESS | 東京都中央区築地4–11–10(築地場外市場内) |
TEL | 03–6264–1763 | OPEN | 8:00〜15:00(季節や天候などにより変更有) |
CLOSE | - |
※他、臨時休業する場合があります