【横浜・大倉山】その日、その人が、それぞれの何かに出会えるように。「ichigoichie」
フードイラストレーター
まるやまひとみ
「ichigoichie(イチゴイチエ)」の店主は数年前、会社員として働きながら副業で大倉山の居酒屋スタッフをしていた。コロナ禍で苦境に立たされた際、「やれることをやろう」というお店の方針のもと、スタッフ一ひとりひとりに挑戦する機会が与えられ、その中で店主が始めたのがコーヒーの提供だった。
これをきっかけに、新しいお客さんとの出会いが広がり、徐々に「将来カフェを開きたい」という思いが芽生える。これが"ichigoichie”の種が撒かれた瞬間だった。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
目次
シンプルなのに温かい。心をときほぐす空間
自然と店内へ流れ込んでいく風。不思議な引力を感じる。
居酒屋のスタッフとして働く傍らコーヒーを淹れ、自身が淹れるコーヒーをお客さんに飲んでもらえる機会が増えたことで、カフェへの思いは一層膨らんでいった。
物件を本格的に探し始める一方で、先に繋がることをしたいと居酒屋で間借りカフェ「ichigoichie」をスタート。
コーヒーと出会って開けた新しい道。今度はこのカフェが、お客様が何かと出会えるきっかけになれば…。
その想いも込め、屋号は座右の銘である“一期一会”から名付けた。
高い天井にペンダントライト。木の温もりが明るく朗らかな雰囲気を醸し出す。
来店する人の多くが地元に住んでおり、間借りカフェを経て、大倉山のお客様にお返しができるようにと、大倉山でカフェの物件を決めたのだそう。
間借りカフェで経験を積みながら、コーヒーやお菓子作りのスキルを高め、独立に向けて着実に土台を作っていった。
物件が決まったのを機に会社員の仕事を辞め、自分の中に書き留めていた構想をデザイナーに託し、施工は約1か月で完了。
オープンを心待ちにしていた「ichigoichie」ファンがこぞって訪れ、プレオープンから賑わいを見せていた。
実はテーブルに使われている板もひと一つひと一つ違う。
ヨーロッパの田舎をイメージした「ichigoichie」は、木材を基調としたしたナチュラルな装い。
テーブル、椅子、ライトはあえてバラバラの形にしているものの、木と白の色合いが絶妙に混ざり合うことで統一感が生まれ、居心地のいいやわらかな空気を作り出す。
座った際の目線なども意識し、配置や高さにもこだわった。
店主の気さくな人柄と柔和な雰囲気が自然と会話を生み、向かい側に座る人ともいつの間にか話が弾んでしまう、そんな温かい空間だ。
おいしいコーヒーは、よいコーヒー豆から
コーヒーは5種類並ぶシングルオリジンのコーヒー豆から好きな豆を選ばせてくれる
元々コーヒーが好きで、様々なお店でコーヒーを楽しんでいたという店主。その中でも特に愛してやまなかったのが、元住吉にある「Mui(ムイ)」さん。毎日飲みたくなる美味しいコーヒーを提供するためには、良いコーヒー豆を選ぶことも重要。
店主にとって、「Mui」さんのコーヒーこそが、毎日飲みたいと思えるコーヒーだった。
「「ichigoichie」」では、コーヒー豆は時期によって変わり、深煎り、中深煎り、カフェインレスを5種類ほど取り揃える。シングルオリジンに特化することで、「Mui」さんが焙煎するコーヒーの素晴らしさを知ってもらいたい。瓶に詰められた粒揃いの美しいコーヒー豆は、ついつい眺めてしまうほど。そんなコーヒーの味わいをより引き立てる、ペアリングフードにも注目だ。
日々に寄り添う、素朴で気軽に食べられるスイーツ(イラストあり)
illustration by まるやまひとみ
今回いただいたのは
●ハンドドリップコーヒー(エチオピア) ICE ¥650(税込)
●発酵バタースコーン ¥600(税込)
ハンドドリップコーヒーは好きな豆を選ぶことができる。
この日選んだのは「エチオピア イルガチェフェ クレイウォット」。
やや深煎りのシティローストで、アイスコーヒーにするとコーヒーの果実感とみずみずしさが楽しめる。
スコーンには発酵バターを使い、しっかりと織り込むことでサクッとした食感に。バターの風味が前面に出るよう工夫されている。
アイスコーヒーのクリアな飲み心地がバターの風味を引き立て、ジャムの爽やかさとも見事にマッチ。
エチオピアのまろやかな甘みが長く続く。
季節で果物が変わるため、ジャムによってスコーンの味わいも変化。
クロテッドクリームとジャムを乗せると、特別感が増すひと口に。
スコーンの塩味とジャムの清々しい香りが口いっぱいに広がり、こってりとしすぎず、ほどよく食べ応えのあるひと品。。
小腹が空いた時にもぴったりで、
今日はどんなジャムだろう?と楽しみになること間違いなし。こちらも一期一会の逸品だ。
お菓子はコーヒーとの相性はもちろん、生地と具材の一体感や、サイズ、甘さ、食材のバランスにこだわりを感じる。
別の日にいただいたレモンケーキも、まさにそれが表れた一品で、「また食べたいな」と思わせる魅力に溢れている。
初夏の明るい陽射しを連想させるレモンケーキ(イラストあり)
llustration by まるやまひとみ
●ハンドドリップコーヒー(ケニア) HOT ¥600(税込)
●広島産無農薬レモンケーキ ¥550(税込)
レモンケーキは国産の無農薬レモンが手に入る時期の提供。
優しい酸味が味わいに輪郭を与え、ジューシーさが口を満たす。
甘さを抑えることでレモン本来の旨味を引き立たせている。
この日選んだのは、「ケニア ギチャサイニ・ファクトリーAA」。柑橘を思わせる独特のフレーバーと濃厚なコクがあり、
冷めるときらびやかな酸味が立ちあがる。この酸味がレモンケーキの酸味と共鳴し、絶妙なバランスを生み出す。
器は店主が大好きだというイイホシユミコさん。
器も空間にマッチするシンプルなものを選び、色の組み合わせでテーブルが華やぐよう意識。
「私もこんな風に使ってみたい」と思わせる、器との出会いも一期一会。
間借りカフェでは古民家の雰囲気に合う和の器に盛られていたのも印象的だったと思い出す。
間借りカフェ時代から大人気のキャロットケーキは「ichigoichie」でも看板メニュー。
あなたにとっての一期一会がきっと見つかる
カフェインレスでもしっかりとしたコク。
コーヒー豆は100gから販売。スタンプカードは200gで1スタンプなので、2種類のコーヒー豆を100gずつ買って好みを探すのも楽しい。店主のサービス精神や、コーヒーの楽しみを広げてもらうための提案など、随所にコーヒーへの強い思いが感じられる。
「やりたいことはたくさんあるけれど、今は来てくれるお客さんが気持ちよく過ごし、また来てもらえるカフェにしていきたい」と、店主は話す。
お店を象徴するカウンター奥のアーチ。ゆとりを感じられる。
仕事の合間にテイクアウトしていく人。道すがら手を振る人。
一日一日、ひとりひとりがそれぞれに過ごす時間。
何気ない日常でも、振り返ればかけがえのない一瞬があるかもしれない。
ゆるやかな時の流れに身を委ね、「ichigoichie」と出会った日を思い出し、コーヒーをひと口いただきながら、まだ少し新しい木の匂いがする店内に心を和ませるのだ。
SHOP INFORMATION
SHOP | ichigoichie |
---|---|
WEBSITE | https://www.instagram.com/ichigoichie.2024 |
ADDRESS | 神奈川県横浜市港北区大豆戸町61 |
TEL | 0467-37-5288 |
OPEN | 10:00〜19:00 |
CLOSE | 木曜日 |
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