こんにちは。スイーツフォトグラファーの本多純です。

新宿NEWoMan・エキソトに構えるデザートバー「JANICE WONG」。アジアNo.1パティシエのジャニス・ウォンさんがプロデュースするアーティスティックなデザートを、以前CAKE.TOKYOでも取材させていただきましたが、今回、秋の新作が登場したということでお誘いいただき訪問してきました。

まるでスイーツアート。新宿NEWoManのデザートバー「JANICE WONG」で体感する、日本酒×デザートのマリアージュ。

アジアNo.1のパティシエ「Janice Wong」インタビュー。日本の食材で創作する新感覚の夏デザートに込められたエピソードとは?

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1回目の取材のときにもデザートをつくってくださった、東京店のシェフ・河﨑賢司さんにお話を聞かせていただきながら、新作デザートを目の前でいただきました。

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東京「JANICE WONG」シェフ・河﨑賢司さん

京都庭園 2016秋

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河﨑一皿目は、秋の新作「京都庭園 2016秋」です。春・夏に京都の枯山水をイメージしたデザート「京都庭園」という皿を提供していたのですが、その紅葉バージョンです。

マスカットとキャラメリゼしたりんごの上に、ヨーグルトと黒七味のソルベを石に見立て、赤いビーツのスポンジにバラのパルフェを添えて。皿の手前はピンクペッパーとラズベリーのソースに、バラのゼリーです。

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ソルベは、本当に七味の辛味がビリっときますね!その後にビーツのスポンジのふんわりした甘さや、バラのパルフェの甘い芳香の余韻が続きます。紅葉の庭園と聞くと日本人はわび・さびをイメージしてしまいますが、味わいは芸術の秋・情熱の秋。とても多彩で刺激的で、華やかな美味しさです。

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河﨑外国のお客さまは、ほぼ100%注文をいただきます。実際に京都に旅行された方が多く来店されて、この皿で京都の思い出に浸っていただいてるようです。

パンプキン/ミソ/もち麦

続いての皿は、9月からスタートしたランチデザートコースで提供しているメインディッシュのデザート「パンプキン/ミソ/もち麦」です。

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…!? ちょっと待ってください、ガラスの中に煙が…?

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河﨑焦がし赤みそともち麦の土台の上に、ローストパンプキン・満寿泉(日本酒)アイスクリーム・オリーブオイルパウダーを乗せています。1番上にかぶせている美しい曲線形のクッキーは、かぼちゃのクリーム・発酵豆腐のクリームを塗ってつくっています。完成後、このようにお客さまの目の前で桜のチップのスモークを閉じ込めてから、提供しています。

ミソ、麦、そしてスモーク!ここまで来ると「デザート」とは何かというのを改めて考えさせられますね…。どれも和の食材で構成されているからか、和食に通じる“一体感”があります。麦の噛みごたえと、カボチャや味噌といった濃厚な風味によって、どっしりとしたメインディッシュらしい一皿です。

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河﨑もち麦には血糖値の上昇を抑える効果があって、ボリューム感があるのにヘルシーなデザートに仕上がってます。

ただ、この燻製香は、さすがにスタッフの中でも意見が分かれました。でもそこが面白いと思います。万人受けする味っていうのは、誰の印象にも残らずに忘れ去られてしまう。賛否両論あって、それがお客さまの中で話題になってくれたらいいなと思います。これこそ「JANICE WONG」のデザートです。

確かに、アートの世界ですね! 秋の新作をいただいたところで、今回オープンからシェフパティシエとして勤めている河﨑さんのこれまでのご経歴と、「JANICE WONG」のシェフを勤められることになったきっかけについて教えてください。

料理人からパティシエ修行を経て「JANICE WONG」に

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河﨑僕は、はじめはイタリアンの料理人だったんです。ただ、このままシェフになる前にパティシエの世界をどっぷり経験してみようと思って、イタリアでパティシエの修行をはじめました。

修行が終わってからは、日本のレストランでシェフ・パティシエを担当して、その後、シンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」(あの屋上が舟みたいな超高級ホテル!)がオープンするということで、そこの日本食レストランのパティシエとして働いていたんです。

シンガポール。ジャニスさんの故郷で、メインの活動拠点ですね。

河﨑そうです。ところが、現地に行ってみると、工事が終わらずオープン延期というトラブルがありまして(汗)。最初3カ月の仕事の話だったのが、1年近く現地に住むことになりました。

ジャニスと出会ったのもそのときです。すでにシンガポールで最も有名なパティシエで「2am:dessertbar」(シンガポールでジャニスさんが最初に開いたデザートバー)にも何度か通いました。日本のスイーツとは全然違って、甘くないのに味に奥行きがあり、今でも印象に残っています。

その後、マリーナ・ベイ・サンズの仕事を終え日本に帰国したときに、当店がオープンするということで、ジャニスを知っている僕のところにもオファーをいただきました。

「JANICE WONG」で働くと決めた理由

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それだけ経験を積んできて、どうしてジャニスさんと一緒に働くと決めたのでしょうか?

ジャニスのデザートは斬新で、何より彼女の発想力がとても豊かです。一緒に仕事をすることで自分ももう一段レベルアップできると思って、引き受けることにしました。でもジャニスは最初、僕のことを忘れてましたけどね(笑)。

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アーティストとしても活動するジャニスさん。東京店には彼女の作品も展示。こちらは秋の新作

アーティストとしても活動するジャニスさん。東京店には彼女の作品も展示。こちらは秋の新作—— (笑)。ここ日本の「JANICE WONG」のデザートについても、ジャニスさんのレシピは僕たち日本人にとって斬新なものだと思いますが、河﨑さんから見ていかがでしょうか?

河﨑ジャニスの発想は本当に斬新で、彼女自身も「ゼロからレシピを作るのが好き」とよく言っています。東京店のメニューはジャニスと僕とで議論しながらつくっていくのですが、僕のアイデアはときどき「ジャパニーズ」と言われます。日本人の“枠に閉じたアイデア”になってしまっているという意味です。

ジャニスのレシピの中で1番衝撃的だったのは「みそマスタード」ですね。みそとマスタードを合わせて、それをデザートに使うなんて!普通の料理人には想像もつかないですよ。

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確かに、日本の定番の型とは全く別の視点によるレシピですね。東京店では、日本のお酒とデザートをペアリングすることも特徴的ですが、その魅力を日本人シェフの目線からお聞かせいただけますか?

河﨑ジャニスは現地の風土をとても大切にしているので、日本の食材に合うのはやっぱり日本のお酒だと考えてます。ジャニスの考える日本ならではのペアリングを、ぜひ日本人に味わっていただきたいですね。また、当店には日本チャンピオンのバーテンダーもいますので、彼が作った日本酒のカクテルも楽しんでいただけたらと思います。

僕たち日本人も、日本の魅力を再発見できたら素敵ですね!

「JANICE WONG」のライブキッチンの醍醐味

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東京店のもうひとつの大きな特徴は、ライブキッチンだと思います。カウンター越しにお客さまの目の前で調理するのは初めてでしょうか? 毎日多くの方の目の前で仕事をするのは大変そうです。

河﨑確かに大変ですが、1度やってみたかったことでもあります。もともとレストランで仕事をしていたときも、よくフロアを覗いてはお客さまの表情を確認していました。お客さまが食べたときの反応をダイレクトに確認できることは、テイクアウトのパティスリーにはない面白さです。

ライブキッチンで仕事をする際には、やり直しができないだけでなく、プロフェッショナルらしい「所作」が必要だと感じてます。お客さまもそこを楽しみにいらっしゃいますので。

自分たちでも仕事の動きを動画で撮って確認したり、寿司や鉄板焼きのお店に行って仕事を見たりして、日々研究してます。あと、若いスタッフには「カッコつけて仕事をすること」をいつも注意しています。

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確かに寿司職人とか、お客様と会話しながらテキパキと仕事をこなしていく姿は、まさに職人といった感じの洗練されたカッコよさを感じます。今回の取材でも、河﨑さんのプロフェッショナルな動きをバッチリ撮らせていただきました(笑)。最後に、河﨑さんの考えるパティシエの魅力ってなんだと思いますか?

河﨑まず、見た目の華やかさや美しさでお客さまに感動してもらえることでしょうか。そして、食べていただいて笑顔になってもらえること。一口目でにやけ顔を見れたら、ガッツポーズですね。

それを目の前で確かめられるのも、ライブキッチンならではですね! 河﨑さん、どうもありがとうございました!みなさんも食欲の秋、そして芸術の秋を、ここ新宿のデザートバーで満喫してみてください。

「JANICE WONG」のランチデザートコースでは、複数のデザートをコース仕立てで味わうことができます。3品・5品・7品の3種類のコースが提供されており、今回取材した「パンプキン/ミソ/もち麦」が各コースのメインディッシュ的な一皿となっている他、その前後に前菜的デザート、締めのデザートといった皿を楽しむことができます。

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「フィグサラダ」 (写真提供: JANICE WONG)
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「柿とほうじ茶のサンドウィッチ」 (写真提供: JANICE WONG)
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「バイオレットマスカット」 (写真提供: JANICE WONG)
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「パープルチェスナッツ」(写真提供: JANICE WONG)