「ケンズカフェ東京」が特撰ガトーショコラの専門店になるまで

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まずは、特撰ガトーショコラを発売するに至ったきっかけについて教えてください。

氏家私はもともとパティシエやショコラティエではなく、イタリアンカフェレストランのオーナーシェフでした。

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開店当時からレストランで食後のデザートとして出していたガトーショコラがあまりにも評判がよく、「家に持ち帰りたい」という声が続出しました。当時は焼きたてを最高の状態でお出しすることにこだわっていたので、お断りしていました。ただ、あまりにも多くのお客さまから依頼をもらうようになり、最初は仕方なくラップにくるんでお渡ししていたんです。

ところが日に日にテイクアウトのご要望は強くなり、見過ごせないほどに。「一度、本腰をいれてやってるみるか」と思いたち、テイクアウトでの販売をスタートしたのが、はじまりですね。今は、レストラン営業を止めて、ガトーショコラのテイクアウト専門店としてやっています。

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世界最高峰のチョコレートを惜しみなく使った「特撰ガトーショコラ」とは

「特撰ガトーショコラ」とは、どういうお菓子なのでしょうか。

氏家日本でいうガトーショコラは、パウンドケーキのチョコレート味を想像される方も多いでしょう。うちでつくっているのは、フランス・ブルターニュ地方に伝わる、本場のガトーショコラ。余計な味付けを加えることなくカカオ本来のおいしさを最大限に引き出せる、チョコレート好きにとっては最高のお菓子です。

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小麦粉は一切使わないグルテンフリーで、材料は、チョコレート、バター、卵、グラニュー糖だけと至ってシンプル。特別な隠し味や、企業秘密もありません。レシピもレシピサイトで公開していますから、つくろうと思えば、どなたにでもつくっていただける商品です。

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材料は4つだけ、レシピも公開中と聞いて驚きました。それだけオープンな状態で、他と差をつける秘訣はどこにあるのでしょう。

氏家まずは、一切妥協をしない素材選びでしょうか。

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レストラン時代から最高級ブランド「ヴァローナ」のチョコレート使っていましたが、うちのガトーショコラを食べた「ドモーリ」創始者・ジャンルーカ・フランゾーニ氏から、直々に「君のガトーショコラは本当に素晴らしいから、ぜひうちのチョコレートを使ってくれないか」との申し出をもらったんです。うれしかったですね。

今ではジャンルーカ氏自らがうちのために調合した世界で唯一のグランクリュショコラ「KEN’S」を使用しています。“チョコレート界のフェラーリ”と呼ばれるブランドだけあって、香り、コク、味の奥行き、すべてが段違いです。

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さらにそのおいしさを最大限に引き出すため、バターはカルピスバター、卵はレストラン時代からお世話になっている「昔の味たまご」を使用しています。

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おすすめの食べ方を教えてください。

氏家まずは好きな厚さに切って常温で召し上がってみてください。コク・甘み・苦みが三位一体となって、テリーヌショコラのような濃厚な味わいが楽しめます。

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常温であれば、中央が少しトロっとした状態がおすすめ。

冷蔵庫で冷やすと生チョコ感覚、レンジで軽く温めると内部がととろけてフォンダンショコラにと、温度によって変わるさまざまな食感と口溶けを楽しんでいただけます。実は、レンジで温める食べ方は、お客さまのブログから教わりました。最初は「レンジでチンするなんてもったいない!」と驚いたのですが、実際にやってみると本当においしくて……。今では公式サイトでもオススメさせていただいています(笑)。

絶対的なブランド力があれば、ひとつ3,000円でも必ず売れる

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3,000円という値段設定がとても話題になっていますね。

氏家小ぶりのガトーショコラが一本3,000円と聞くと、みなさん最初は驚かれると思いますが、最高級の材料を使うため、ブランド力を付けるため、一店舗一品主義でも経営を続けていくために、思い切った値段設定に踏み切りました。

販売当初は、今の2倍の大きさで半額ほどでしたから、当時から考えると4倍の値上げをしたことになりますが、結果的には値上げをしてからのほうが爆発的に売れるようになりました。

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「1,000円のガトーショコラ」よりも「3,000円のガトーショコラ」のほうが「一体どんなものなのだろう?」気になりますし、贈った相手との会話も盛り上がりますよね。そんなインパクトと話題性も、人気が出たきっかけのひとつだと思います。

ただしもちろん、ガトーショコラ自体に3,000円という値段に見合う魅力があることは大前提です。また、味にも素材にも包装にも徹底的にこだわり、マイナーチェンジを続けていけるのも、3,000円という値段のおかげだと思っています。

それだけ人気であれば通販をしていてもいいと思うのですが…。

氏家以前は地方発送も対応していたのですが、基本的にお店は少人数で運営しているため、発送の手間や、どうしても起こってしまう配送ミスへの対応など、限界が多々ありました。

会社を大きくすることが自分の目標ではありませんでしたから、仕事の質を下げないためには売り上げが落ちても仕方ないと開き直るような気持ちで、ネット販売を思い切ってストップ。

ところが、驚くことに、通販を止めてから売り上げはさらに上がりました。「ここでしか買えないという限定感」や、「わざわざ足を運んで買い物をするという特別な体験」も魅力のひとつになり得るのだ、と改めて感じましたね。

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一店舗一品主義を続ける秘訣は、お客さまの声を取り入れる柔軟性にあり

一店舗一品主義にこだわる理由をお聞かせください。

氏家ありがたいことに、スタート当初から一貫して「こんなにおいしいガトーショコラは食べたことがない!」という感動のお声をたくさんいただいていますし、日本ギフト大賞や食べログ「全国チョコレート店ランキング1位」などさまざまな賞もいただいています。私自身も、自分のつくるガトーショコラは日本一だと自負しています。

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ガトーショコラという最高のスペシャリテがある以上、他のケーキをつくろうとも思いませんし、味やサイズのバリエーションを増やす必要もありません。結果的にコストも削減できますし、ガトーショコラだけに注力することで、さらにおいしさを極めることができるんです。

氏家さんがお仕事で大切にされていることは何ですか?

氏家常に自分の商品の立ち位置を、客観的な視点から把握しておくこと。たとえば、毎朝お店に来てまずやるのはクチコミやSNSのチェックです。

ネットでの評判を調べたり、ホームページのアクセス解析は欠かせません。あとは、柔軟にお客さまの声を聞くことですね。たとえば「ケンズカフェのガトーショコラは甘すぎる」という声をネットで見つけたとします。それが一人のお客さまだけの声ならただの感想ですが、10人、20人と増えた場合は、砂糖の配合を検討する必要が出てきます。

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時代が変わるとお客さまの舌も、求める味も変わります。自分の味に頑固に執着するのではなく、納得しないままご要望に迎合するのでもなく、さらに最高の味を進化させていくために、お客さまの声は必要不可欠なんです。

氏家さんのお話を聞いていると、職人としての使命感のようなものを感じます。

氏家ガトーショコラのおいしさは絶対的な自信がありますから、何を聞かれても困りません。材料やレシピ、ビジネス戦略まで、包み隠さず手の内を話しています。

ひとつの商品しかなくても、値段が3,000円でも、通販ができなくても、本当に「最高のもの」がひとつあれば、お客さまは評価してくれるし、職人は前に進んでいけるということを、私は自分自身の生き方を通して証明していきたい。

日本には、チョコレートに限らず、すばらしいものを真面目につくっている職人さんがたくさんいます。わたしの生き方が、そんな職人さんたちのつくる物を世の中に広げられるきっかけになれば、こんなにうれしいことはありません。

■ 教えてくれた人

氏家健治さん
「ケンズカフェ東京」オーナーシェフ。ホテルオークラ東京、赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロなど、高級店で修業を重ね、98年、「ケンズカフェ東京」を新宿御苑前にオープン。オーナーシェフを務めつつ、テレビや専門誌などでの調理指導や料理解説、経営者向けのビジネス講演会等も行う。ビジネス書『1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ』(SB新書)が話題に。

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商品リスト
特撰ガトーショコラ
3000円