こんにちは。にしむー(@1108_ryu)です。
まだ少し、寒い日が続きますね。こんな時季にはほっこりするものがほしくなります。丁寧に火がとおされたお豆。ゆらゆらと湯気の立つお茶。もちもちの真っ白なおもち…。
そんな甘味を贅沢に味わうことのできる「しろいくろ」を今回はご紹介します。
お出迎えの猫の名前は…
場所は、麻布十番駅を降りて商店街を進み、しばらく歩いたところ。一本路地裏に入るとレトロな窓枠に真っ黒な壁、白い暖簾が風に揺れる古民家が目にとまります。
暖簾をくぐると一番に出迎えてくれるのがこの子。しろいくろの看板猫でありながら、招き猫的存在の“くろ”。白猫の“くろ”。そう、店名の由来は、“しろ”い“くろ”なのです!
鋭い黄褐色の瞳に愛くるしいポージング。なんだか今にもごろごろと動き出しそうです。
細部までデザインされた店内
店内に歩を進めると、色味は統一され無機質でありながらどこかあたたかさを感じる雰囲気。コンクリートのカウンターの角はすべてが丸く、テーブルや棚には味わいのある木が使われ、ついつい撫でたくなるような丸っこい椅子。
オーナーの一人、建築家・大縄さんのこだわりが随所に感じられます。こちらは大縄さん自らデザインされた着物用の腰掛けだそう。
ずらっと並んだ白と黒のお菓子たちは、凛とした佇まい。無機物と有機物が絶妙なバランスで空間をつくりあげています。
カウンターの奥では、毎日お店で火を入れるという黒豆が静かにパチパチと音を立てていました。小さな黒豆が発する音からは、息遣いを感じ、ずっと聞いていたくなります。
今回お話を伺うにあたって、笑顔で迎えてくださったのは、お菓子職人の藤澤さん。
洋菓子の世界で経験を積み、5年前の「しろいくろ」立ち上げに際してこのお店のメンバーに加わりました。和菓子に関しては、一から職人さんのところで修行したのだそう。
お豆の自然な甘さ
こだわりの黒豆茶を出してくださいました。
口に含むと、おいしさと香ばしさはもちろん、驚いたのはその甘さ。
「この甘さからよく『お砂糖が入っているんですか?』と聞かれることが多いんでが、実はまったく入れていないんです」と藤澤さん。
「黒豆茶は、普通豆を砕いて煎ったものが多いのですが、これは丸のまま煎った豆を煮出して淹れています。お豆の自然な甘さが出るように、温度や時間、煎り方を研究して今の味になりました。」
美しい白と黒のお菓子たち
さっそく、しろいくろこだわりの黒豆菓子をいただきます。滋味深い白と黒の器にのったお菓子たち。まるでひとつの作品のようです。
1)お店の看板、黒豆塩大福
いただいたのは黒豆塩大福。絶妙な塩加減に、さわやかな甘さのあんことしっかりとした黒豆。小ぶりなのでちょっとしたお土産にもぴったりです。こんなにも黒豆の香りがする豆大福は初めて出会い、感動すら覚えました。
2)真っ白な雪のよう、黒豆塩ロールケーキ(しろ)
見た目はクリームたっぷりですが、甘さはとても控えめで、最後にふわっとレモンの香りが広がります。まさに大人のためのロールケーキ。
甘いものが苦手という方にこそ食べてほしいお菓子です。
3)ぽつんとした赤すぐりが可愛らしい、黒豆塩ロールケーキ(くろ)
しろよりも甘みがあり、チーズクリームと赤すぐり(レッドカラントと呼ばれる果実)の酸味がそれを引き立てます。黒豆のコクもしっかりと感じられ、こちらはお子さんにもおすすめです。
4)すっきりした甘さ、黒豆ガトーショコラ
さっぱりとしたカカオと香ばしい黒豆がしっかりとマッチした、洋菓子ながら、ぜひ日本茶と合わせていただきたいケーキです。
「しろいくろ」が始まったきっかけ
今まで、あくまで脇役だった黒豆を主役にした商品が出来上がるまでに、半年を費やしたそう。
そもそもなぜ、あえて黒豆を使ったお菓子のお店にしたのでしょうか。
藤澤まずは、お店の成り立ちからお話しましょうか。このお店にはオーナーが二人いまして。一人が建築家の大縄、もう一人がグラフィックデザイナーの落合。二人はもともと友人で。大縄がこの建物の大家さんに改装を頼まれたときに、自分で改装するのであればお店まで手がけたいと思ったそうです。
最初に2人が決めたことはお店の名前と「和とモノトーン」というコンセプトだけ。実は二人とも、甘いものが好きではないんです(笑)。それで甘くないお菓子をつくろうとなり、「白と黒のお菓子」で思いついたものが豆大福で。じゃあそれがいい!ということで決まりました。
そして、お豆を使うなら落合の知り合いに丹波の黒豆農家さんがいるので、黒豆を使ったお菓子屋さんにしようとなったんです。
白と黒のお菓子を実現するために
しろいくろという店名からアイデアが広がっていったんですね。
藤澤言葉やイメージからの発想なので、お菓子をつくっているという感覚とはまた違うのかなと思います。ロールケーキの「しろ」はお砂糖が本当に控えめ。真っ白いロールケーキをつくってほしいというところからスタートしているんです。
真っ白な生地って難しかったんじゃないですか?
藤澤そうですね…。ロールケーキに使用する卵は、鶏にお米を与えた黄身が白っぽいものを使っています。
ロールケーキの「くろ」は後からできた商品なんですが、このポツンとワンポイントになっている赤すぐりは最初入っていなかったんです。試作を見たオーナーから、見た目にパッと目を引くような赤がほしいと言われて。
なるほど。デザイナー目線からのお菓子づくりですね。
伝統を守りつつ、越えていく
黒豆というと、つやっと綺麗に煮てお菓子にするイメージですが、アイスにしたり、チーズと合わせたりして農家さんからはどういった反応がありましたか?
藤澤最初は、クラッシュしてアイスに入れましたと言うと、「え〜何してるの」って驚かれました(笑)。黒豆は艶やかに煮上げることが基本なので。それでも歯応えはしっかりあるので、味わってもらうとわかってもらえるんですけど。
やはり他ではなかなか食べられないものを出したいっていう想いもあるので。
最近は農家さんの反応も変わってきましたか?
藤澤そうですね。「都会はやっぱり変わっているのね」って、相変わらず言われてしまいますが(笑)。でも、最近は京都でもそういう取り合わせが増えているので、農家さんからこういうのが出ていたわよって声をかけてくれたりするんです。
コンセプトは、“非日常”のお菓子
丹波の黒豆というと最高級品ですが、リーズナブルなものにはせず、なぜ高級な食材を使おうと思ったのですか?
藤澤お店のコンセプトを考える段階から、デザイナーの落合の視点はしっかり入っているんです。デザイナーさんにとって “非日常”というものはフックになるキーワードのようで、そういったものを提供していけるようなお店をつくっていこうというのがはじまりです。
丹波の黒豆を使うのは、知り合いの農家さんがいたこともきっかけのひとつではありますが、何より丹波産のものが最高級だから。あえてお菓子に最高級の黒豆のみを使うのは珍しいだろうって。
日常に冷蔵庫に入っていていつでも食べられるものというよりも、手土産に持っていったり、ご褒美みたいなちょっと特別感のあるお菓子がテーマなんですね。
藤澤自分用に1〜2個だけ買っていかれる方がとても多いです。
和と洋が見事に調和したしろいくろ
農家さんだけではなく、お店で使用している器は黒豆の里でつくられる丹波焼き。作家の清水俊彦さんともよい関係を築かれているそう。
お菓子と器。切り離せない関係だからこそ、しろいくろは器にもこだわりが感じられます。
シンプルでありながら、和にも洋にも馴染む白と黒の器たちはすっかりこのお店の住人のようでした。
お菓子職人、デザイナー、農家、作家。
どれも欠けることなく、皆の調和によって生まれるしろいくろのお菓子たち。
どれをいただくか迷うこと間違いなしですが、全部ぺろりといただけるくらいさっぱりとしています。週末には売り切れてしまうこともあるそうなので、早めに行くのがおすすめです。
至福の黒豆菓子は、きっと誰かに教えたくなるはずですよ。
SHOP INFOMATION
NAME | しろいくろ |
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URL | http://shiroikuro.com |
ADDRESS | 東京都港区麻布十番2–8–1 |
TEL | 03–3454–7255 | OPEN | 10:00〜18:00 |
CLOSE | - |
※他、臨時休業する場合があります