[3大要素]

「ブラン」
いちご / とちおとめを使用
スポンジ / 米粉を使用して口溶けアップ
クリーム / やわらかな口どけを重視

「ルージュ」
いちご / とちおとめを使用
スポンジ / 米粉を使用して口溶けアップ
クリーム / 苺の果汁入りのメレンゲをプラス

「ブラン」と「ルージュ」、双子のようなショートケーキ

「ブラン」と「ルージュ」、看板商品のショートケーキが2種類あるというのは、とても珍しいですね。

江口簡単に説明すると、「ブラン」はごくシンプルなショートケーキで、「ルージュ」はいちごの果汁やお酒を加えて少しアレンジしたものです。よく見ると、「ルージュ」のほうはクリームがほのかにピンク色なんですよ。とはいえ、桜の花びらほどの薄い色なので、分かりにくいのですが……。

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左:ルージュ(星口金) 右:ブラン(丸口金)

たしかに、「ルージュ」のほうは、ほのかに赤みがありますね。あっ、それによく見ると、ケーキのデコレーションクリームの絞り方が違っていますね!

江口間違えやすいので、簡単に見分けられるように絞り袋の口金を「ルージュ」は星口金、「ブラン」は丸口金を使用してデコレーションのデザインを少しだけ変えているんです。

「ブラン」と「ルージュ」の特徴について、それぞれ教えていただけますか?

江口「ブラン」は、たくさんのいちごと、良質な生クリームを使用しています。スポンジには軽くいちごの果汁を含ませています。お酒は使っていないので、お子さまにもおすすめです。生クリームは、口溶けのよさにこだわってやわらかめに仕上げています。

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まさにショートケーキ! という雰囲気。ふんわりしっとりとしていて、とてもおいしいです。

江口ありがとうございます。両方トライする場合は、まずはシンプルな「ブラン」から召し上がったほうが、味の違いが分かりやすいかもしれませんね。

「ルージュ」の特徴はどのようなものでしょう。

江口「ルージュ」は、生クリームに、いちごの果汁入りのメレンゲを加えています。ムースクリームのような感じで、クリームがよりふんわりと軽やかな食感になっています。

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左:ルージュ 右:ブラン

「ブラン」と「ルージュ」、それぞれの人気はいかがですか?

江口雑誌やテレビなどで取り上げていただいた回数は、個性のある「ルージュ」のほうが多いですが、実際にどちらが売れるかというと、オーソドックスな「ブラン」のほう。

巣鴨のお店も常盤台のお店も住宅街にあるので、お子さま連れのお客さまが多いからだと思います。遠方からはるばる来てくださる方は、「ブラン」と「ルージュ」の両方をオーダーして、食べ比べを楽しむ方が多いですね。

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よりおいしいケーキにするために試行錯誤の日々

逆に、「ルージュ」と「ブラン」の共通点はどういうところですか?

江口どちらも、いちごはとちおとめを使っています。ただ甘いだけでなく少し酸味のあるところが、ショートケーキと抜群に相性がいいですね。生クリームのベースは脂肪分47%。

スポンジには、口溶けの良さとふんわり感を強めるために米粉を使用しています。

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米粉を使っているというのは、珍しいですね。

江口よりよい食感を目指して悩んでいるときに、もしや……とひらめいて、試してみたらとってもおいしくなったんです。お菓子づくりは日々試行錯誤ですね。現在採用しているクリームの製法にしても、少しずつ配合を変えたものを15種類くらいつくって食べ比べながら探し当てたものです。

30年以上お店を営まれているシェフほどのキャリアの持ち主でも、トライ&エラーの繰り返しなのですね。

江口修業時代、その店のシェフが毎日のようにみんなでフランス菓子の試作をしていたことがありますが、分量を1g変えるとか、本当にちょっとした工夫で見違えるほど味が良くなることがあります。とても忙しかったですが、あの日々は本当に楽しかった。今の自分にも、あのころの記憶が生かされていると思います。

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ショートケーキ誕生は、お客さまのリクエストから

そもそも江口シェフは、本格的なフランス菓子を学ばれていたと聞きました。ショーケースを拝見しても、ずらりとフランス菓子が並んでいます。そんななか、あえてショートケーキをつくろうとおもったのはなぜでしょうか?

江口わたしはヌーベル・パティスリー(新しい菓子の流れのこと)に魅了されてこの世界に入りましたから、オープン当時はショートケーキを扱う予定はまったくありませんでした。

とはいえ、巣鴨に一店舗目をオープンした1986年当時は、いまのようにフランス菓子は一般的に受け入れられていなかったので、お店に入ってこられたお客さまも、「ムースってなに?」「ふつうのケーキはないの?」という反応で、わたしたちのケーキはあまり売れなかったんです。

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たしかに、80年代ですと、そうかもしれませんね……。

江口巣鴨店の近くに幼稚園があるのですが、お子さまの送り迎えの間に、うちのカフェによく来てくださるお母さま方がいて。その方たちから「ショートケーキをつくってもらえませんか?」と頼まれたのがきっかけなんです。

幼稚園児のお母さんからのリクエストだったのですね!

江口やはり、お子さまたちのお誕生日やクリスマスは、ショートケーキが食べたい、ということで。そこで仕方なく(笑)、頼まれた分だけショートケーキをつくってお出ししたら、とても喜んでくださって、口コミで毎月のように注文が来るようになってしまって。

ずっと裏メニューのつもりだったのに、ショーケースを見たお客さまから「なんであのショートケーキがないの?」なんてことも言われるようになり……。それで、やっとお店にも並べるようになったんです。

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裏メニューだったショートケーキが、“日本一おいしいショートケーキ” に成長

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それがいまではすっかりお店の看板商品だなんて、お客さまのパワーはすごいですね。いまネットで「フレンチパウンドハウス」を検索すると、「日本一おいしいショートケーキ」という表現がたくさん出てきます。

江口20年ほど前、店頭にいらしたお客さまが、「ここのショートケーキは日本一おいしいですね!」と言ってくださったことがあったんです。そのときは素直に嬉しく思っていたのですが、インターネット文化が広まるにつれ、いつのまにかその言葉が日本中に広がっていって……。とても光栄なことですが、なんだか恐縮です。

いちごがぎゅうぎゅうと3つも乗っていると贅沢な佇まいですが、これも裏メニュー時代の名残ですか?

江口そうなんです。もとは幼稚園のお子さまのために考えたものですから、いちごはたくさん乗っているほうが喜ぶだろうな……と。

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とても素敵なエピソードですね! 食べごたえのある大きさも嬉しいです。

江口この大きさにはこだわりがあって、ホールを7等分しているんですよ。自分のなかでは、見栄えも分量も、絶対に「これだ!」という基準があるのですが、なにせ1/7カットというのは切り分けるのがとても難しく、スタッフ泣かせで(笑)。今では特注の等分機を使っているので、ずいぶん作業も楽になりました。

いまの自分の足場をつくってくれた、ショートケーキは大切な「恩人」

ショートケーキ以外のおすすめも教えていただけますか?

江口ありがとうございます。ショートケーキはもちろんですが、新しいお菓子もぜひ召し上がっていただけたらうれしいです。

「スフェア・ショコラ」は、今期の新作です。アーモンドのムースショコラ、シャンパンに浸けたグリオット、フランボワーズ・ガナッシュ、チョコレートでからめたフィヤンティーヌやメレンゲを組み合わせました。球状のフォルムが崩れやすいので、イートイン限定のスペシャルな一品です。

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まんまるの形が芸術品のようで、見ているだけでワクワクしてしまう一品ですね!

江口もうひとつの「ベール・ピスターシュ」は、口溶けの軽いピスタチオのムースとチョコレートのムースを合わせました。中には、ほのかな酸味のフランボワーズとフランボワーズソースが入っています。

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最後に、改めて、シェフにとってショートケーキとはどのような存在ですか?

江口ショートケーキは、「恩人」です。このケーキのおかげで「フレンチパウンドハウス」という名前をたくさんの方に知っていただけて、今までお店を続けてこれることができた。本来自分がつくっているフランス菓子とは異なるものですが、とても大切に思っているケーキです。

■ 教えてくれた人

江口潤一郎さん
フレンチパウンドハウス代表。フランス菓子を学んだ後、1986年、巣鴨に大和郷店、1991年に常盤台店をオープン。お客さまからのリクエストに応えてつくったショートケーキが口コミで「日本一おいしい」と噂になり、一躍有名店へ。紅茶への造詣も深く、併設のカフェではケーキと共に独自に仕入れた本格的な紅茶が味わえる。

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商品リスト
ルージュ
572円
ブラン
572円
スフェア・ショコラ
540円
ベール・ピスターシュ
523円