革新を続けるかき氷

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千年以上も昔から存在する日本の伝統的な甘味、かき氷。

かつては縁日でのみ出会えたその夏の風物詩は、今では多くの専門店で一年中食べることができます。

氷の盛り方やシロップのバリエーションには、それぞれのお店の個性やこだわりが表れており、中には行列が絶えないほど人気を博しているお店もあります。

そんな先駆け的なお店の一つが、東京・谷中にある「ひみつ堂」。まだ肌寒さが残る4月の雨の日でさえも開店前から列ができており、夏場は整理券を受け取らないと入れないほどの人気っぷりです。

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ひみつ堂がここまで愛される”ひみつ”はどこにあるのでしょうか。ひみつ堂の店主・森西浩二さんにお話を伺いました。

舞台は、屋台から谷中の街へ

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ひみつ堂のはじまりは6〜7年前に遡ります。飲食業界にいた経歴をお持ちの森西さんは、元々食べ物をつくって人に喜んでもらうことがお好きだったそうです。

かき氷の販売は当初、町の市民まつりのような場で屋台を出して行われていました。なんと、この時代からすでに、行列ができるほどの名物屋台だったようですよ。

1から10までハンドメイド氷

氷はふわふわ、蜜はとろとろ。そんなひみつ堂のかき氷のこだわりの一つは、なんといっても「氷」。日光にある天然氷の氷室「三ツ星氷室」の氷が使われています。

この氷室の氷の魅力について、森西さんは「氷を作っている人の気持ちがこもっているところ」にあると語ります。ご自身でも切り出しや蔵に運ぶ作業をお手伝いしにいかれているのだそうです。

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さらにお店では、手まわしのかき氷機が使われています。自動削り機のほうが効率が良い中、森西さんは「手でつくっているものはおいしいから」と、昔ながらのやり方を大切にされています。

氷をつくる段階からかき氷として削られるところまで、すべて人の手で行うことが、心を温めるかき氷をつくる秘訣なのかもしれませんね。

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また、冬と夏で氷の削り方も違うようです。刃を切り替えることで、冬はフワッと口どけをよくするために薄めに、夏は涼を取るためにちょっと厚めに削られているのだとか。夏には夏の、冬には冬のかき氷があるのですね。

素材の味をそのまま楽しめる蜜

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メニューを見ると、蜜(シロップ)の種類が豊富に並んでいます。蜜はいずれも、氷に合うように素材を活かしていることや、添加物が入っていないことが特徴だそう。

かぼちゃや柑橘類は、皮まで全部使い切って蜜をつくるようです。体に優しいので、妊婦さんでも安心して食べられます。蜜に使われる素材は、お知り合いの農家からいただくことも多いようで、とれたての味が直接お店に運ばれているのです。

さっそく、人気メニューの「ひみつのいちごみるく」を食べてみました。

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鮮やかな赤が美しい、溢れんばかりの蜜に満たされています。一口食べるごとに沈んでゆくほど、氷は柔らかくふわふわ。口に含むと一瞬で溶けて、練乳のやわらかな甘みが広がります。いちごもとても甘く、粒感を楽しめます。

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食べていると液体化が進行してきますが、ストローが常設されていることからもわかるように、後半は飲んで楽しむことができます。

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練乳成分が多いにもかかわらず、さっぱりしていてくどさがありません。喉も乾いてこないので、「濃厚で贅沢な飲み物」として最後の一滴まで堪能できますよ。

歌舞伎役者時代の「ENNOSUKEスピリット」

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華やかなのはかき氷だけではありません。店内も日本的な色彩で可愛らしい装飾が施されています。こうした色彩感覚は、歌舞伎役者だったときの経験が活かされているのだそう。なんと森西さんは20代のころ、歌舞伎役者の三代目市川猿之助さんに弟子入りされていたのです!

色彩感覚もさながら、猿之助さんのもとで学んだ一番大切なことは「常にお客様を楽しませようとすること」。

森西さんはそうした姿勢を「ENNOSUKEスピリット」と呼んでおり、森西さんの体にすっかり染みついているようです。かき氷に対しても「人を元気にするかき氷を作りたい」という思いが込められているのだと言います。

続いて、期間限定の「うぐいす桜」を食べてみました。

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まるで和菓子の道明寺のような、繊細な味わいの一品。ほのかな渋みが味に締まりをつけており、添えられた桜の塩漬けが本格的な桜の風味を生み出しています。溶けてくるとそれはまさに、和菓子を飲んでいるかのようです。

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食べ進めていくと、かき氷の中心部分にうぐいすあんを発見。氷は何度も重ねるように盛り付けられており、その途中でこうしたサプライズを忍び込ませているのです。最後まで飽きさせない姿勢に、ENNOSUKEスピリットが垣間見えます。

口コミが口コミを呼ぶように年々客足を伸ばしてきた「ひみつ堂」。行列のひみつは、こうした人を喜ばせようする心のこもったお店づくりにあるのかもしれません。

SHOP INFOMATION

NAME ひみつ堂
URL http://himitsudo.com/
ADDRESS 東京都台東区谷中3-11-18
TEL 03-3824-4132
OPEN Twitterにて随時更新:https://twitter.com/himitsuno132
CLOSE Twitterにて随時更新:https://twitter.com/himitsuno132

※他、臨時休業する場合があります