【東京・目白】創業80年の和菓子屋「志むら」の絶品かき氷とともに想い馳せる歴史と願い


創り手を訪ねる取材ライター
Yui Ichihara
1939年から続く歴史ある和菓子屋「目白 志むら」。丁寧につくられた昔ながらの和菓子を販売し、甘味喫茶も併設しています。甘味喫茶で人気のかき氷は、インパクトのある見た目から「崖氷(がけごおり)」と呼ばれ、夏にはぜひ楽しみたい一品。また、長年お店を支え続けている「九十九餅(つくももち)」は、和菓子好きであれば絶対におさえておきたい名物商品です。
今回は夏にぴったりの甘味をいただきながら、店長・志村友子さんと一緒に志むらの歴史を振り返り、90年・100年と続いていくための秘訣を伺います。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
目次
古きよき“手しごと”の味わい「目白 志むら」
学生たちが多く行き交う東京・目白エリア。駅からほど近くに、老舗和菓子屋「志むら」があります。
1階では和菓子の販売、2階・3階では甘味喫茶を営業し、平日休日問わず賑わいます。1939年に創業した「志むら」の歴史は90年近く。取材中もお客さんの足が途絶えないことから、長い年月をかけて育まれたお客さまとの絆を感じます。




趣ある店構え。昔ながらの自家製の和生菓子が常時20種類ほど並ぶ
志むらの歴史のはじまりは北海道から。初代は代々続く北海道の和菓子屋の息子で、職人の父からの厳しく指導を受けていました。その甲斐もあり、上京後は名和菓子屋で若くして職長を務めるなど、実力高き和菓子職人に。その後は青山・高樹町にて独立し「志むら」が誕生。昭和21年には町の活気を求めて目白に移転し、現在は2代目兄弟が後を受け継いでいます。

温かみのある“手しごと”の和菓子たち
志村友子さん
「機械化をせずに手作りの味をつらぬくこと。あと、売れるものを売るのではなく、お客さまに喜んでいただけるものをつくるということは、代々受け継いできました。細かい変化はありますが、基本的なラインナップやレシピのこだわりは創業当時から変えていないんですよ。」
5年後でも10年後でも、ここに来れば期待する味が食べられる。そんな安心感は長く続く老舗だからこそ提供できるのです。工房では、80歳を超えたベテランの職人さんをはじめ、和菓子の世界を一途に生き抜いてきた英雄たちが今日も伝統を守り続けています。
ゴーラー垂涎!氷の絶壁に惚れ惚れする「かき氷」
目白移転後に誕生したという甘味喫茶。自慢のあんこや白玉を使ったレトロなメニューが楽しめます。お客さまは老若男女さまざまで、中には「授業の合間に来てたんだよね」と学生のまち・目白らしい声もよく聞こえるといいます。


落ち着きのある和空間。レジの横にはかわいいミニチュアかき氷も発見
一方で、遠方からはかき氷マニア・通称「ゴーラー」も集います。お目当てはやはり、かき氷。そそり立つ氷の山から滝のようにシロップが流れる姿から「崖氷」の愛称で親しまれています。

一目でわかる、いちごの贅沢な量に驚き!
大人気「かき氷 生いちご」(¥1,600)は、迷ったら選びたい間違いなしの味。静岡のいちご農家直送の「紅ほっぺ」を自家製シロップに使用し、加熱はせず、つぶつぶとした果肉の硬さと甘酸っぱさを際立たせたフレッシュなかき氷です。

一緒に提供される「自家製ミルク」をたっぷりかけて……
なぜ、このようなビジュアルになったのでしょう。友子さんによれば、22年ほど前にあるスタッフが「いちごのミルクがけが好きだから、それをかき氷に応用できないか」と「生いちご」の元となる提案をしたのがきっかけだそう。

いちごの果肉たっぷり!
志村友子さん
「いちごの果肉感を残したシロップにしたら、真上からかけたときに氷の山が沈んでしまったんですよね。それを改善するために、シロップの斜めがけを考えたんです。」




池袋の老舗氷屋の純氷を使用。シャリシャリ感を残しつつ削り、丁寧に形を整えてシロップをかける
他にはないビジュアルが注目され、いつしか店先に行列ができるように。提供期間に関する問い合わせも絶えなかったことから、夏限定ではなく1年間通しての提供へと変更されました。
味のラインナップは「小豆」や「宇治金時」など志むら自慢の素材を使った定番メニューのほか、季節限定が常時4〜5種類ほど登場。さらに夏には夏限定の定番メニューも追加されます。
名物和菓子を、お茶とともにいただく「九十九餅セット」
約80年続く看板商品をお茶とセットで楽しめる「九十九餅セット」(¥960)。たまごを煉り込んだ求肥に、トラ模様をした「虎豆」を3日間かけてふっくらと煮ふくめたものを入れ、無糖のきな粉をまぶしています。

ふにゃん、となめらかで幸せな口どけ。虎豆のほくほく食感もおいしい
とろとろの求肥・虎豆・きな粉の三位一体が絶品。これまでの和菓子にないバランスの良い組み合わせが愛され、自宅用に、手土産に、とひっぱりだこなのも納得です。

初代の技術を継承しながら、現在は2代目の弟さんが製造する
おいしさのポイントは「虎豆」にあると友子さん。
志村友子さん
「北海道の洞爺湖の周辺が虎豆の産地なんですよ。先代は北海道出身なので、虎豆が身近にあったのではないかと思います。“お豆の王様”と言われるほど、普通のうずら豆よりも大きく立派で、香り豊かです。お豆そのままでもとてもおいしいですし、甘いものが苦手な男性でも九十九餅は好き!と言っていただけるほどです。」
願いはひとつ。「いつまでも昔と変わらずに」


志むら自家製の素材がひと皿に集結する「白玉クリームあんみつ」(¥1,300)
数年で消えてしまう店があとを絶たないなか、90年の歴史を刻もうとしている志むら。最後に、末長く愛される秘訣を伺いました。
志村友子さん
「わーっと流行ることも素晴らしいことですけど、その中で、ずっと変わらないものがあってもいいのかなと。いつまでも昔と同じように作りたいという想いは大切にしています。でも和菓子職人を目指す人自体が減っているので、やむなく提供できなくなるものは出てくると思います。どうにかして、これまでの味や文化を継承していけたら幸せですね。」
ノスタルジックで心地よい味わいの奥にある、変わらないための努力。未来永劫、のれんを掲げ続けてほしいと願わずにはいられません。

甘味喫茶は事前予約をしてからの訪問がおすすめ
SHOP INFORMATION
SHOP | 目白 志むら(喫茶室) |
---|---|
WEBSITE | https://www.instagram.com/shimura_kissa |
ADDRESS | 東京都豊島区目白3-13-3 |
TEL | 03-3953-3388 |
OPEN | 【平日】 9:30〜18:00 【土・祝】 9:30〜18:00 ※喫茶室は要予約 |
CLOSE | 日曜日・月曜日、不定休 |
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