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日本茶バリスタ倉橋佳彦さんの挑戦と、革新。「絵空事で終わらせない。本気で日本茶文化を守るために」

UPDATE:

CAKE.TOKYO編集部

東京・錦糸町の、日本茶プラントミルクティー専門店『And Tei(アンドテイ)』。
そのオーナーを務めるのが、日本茶バリスタの倉橋佳彦さんです。

前回の記事では、その日本茶プラントミルクティーと、お店のもう1つの主役プラントベイク(植物素材の洋菓子)の魅力を、たっぷりとご紹介しました。

そして今回は倉橋さんご本人の話。

たくさんのお話をうかがう中で見えてきたのは、「100年後も日本の茶畑を残したい」という倉橋さんの想いと、そのための試行錯誤の日々。
そして、その先にたどりついた、”日本の茶畑を残す”という想いを、理想で終わらせないための「緻密なシナリオ」でした。

決して絵空事ではないと、おのずと頷いてしまう、その整然とよどみないストーリーラインは、ともすれば芸術的ですらありました。

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

▼関連記事はこちら▼
【錦糸町・And Tei】日本茶プラントミルクティーで創り出す「古き良き日本茶」の新しいカタチ

目次

コーヒーバリスタ、日本茶に恋をする

話は日本茶との馴れ初めから。

浅草のカフェでマネージャー・バリスタを務めるなど、10年以上コーヒーの世界で活躍してきた倉橋さん。
そんな彼の転機となったのが、ふと訪れた都内の日本茶専門店でした。

「ペットボトルのお茶と何が違うんだろうと気になって行ってみたんですが、そこで飲んだお茶に衝撃を受けました」

日本茶を淹れる所作や、豊かなお茶の香り、味わい、余韻。そして、店内にゆっくりと流れる時間。
これまで感じたことのない、五感で感じる「お茶の体験」に深い感動を覚えました。
この時の体験が、その後の倉橋さんの人生を大きく変えることになります。

日本茶バリスタへの転身と決意

話題は日本茶バリスタの生い立ちへ。

それ以来、日本茶の虜になった倉橋さん。

「もっと日本茶の事が知りたい」
好奇心を抑えきれず、日本中の茶畑を訪ね、渡り歩くようになります。

そこでますますお茶の魅力にのめりこむとともに、茶農家の方たちの、こだわりや苦労、「美味しいお茶を飲んで欲しい」という想いを知りました。
同時に「お茶を淹れて飲む人が減り、茶葉が売れない」という切実な声にも触れることに。

お茶農家さんへの想いが倉橋さんを新しい挑戦へと向かわせました。

そうした体験を経て倉橋さんの心境にも変化が現れます。

「お茶を飲むことを通して、五感で感じる”お茶の時間”の魅力、お茶農家さんの想いやストーリーを自分で伝えていきたい。それを”お茶の淹れ手”としてやっていきたいと、思うようになりました」

自分がやろうとしていることを表す言葉がなかったため、自らの肩書きを”日本茶バリスタ”という新しい言葉で表現。

100年後も日本の茶畑を残したい。その想いで倉橋さんは日本茶バリスタとしての活動を始めます。

ストーリーを伝えるのではなく、僕がストーリーを創る

ストーリーの伝え手から、ストーリーの創り手へ。

それ以来、お茶の淹れ方のワークショップや、パティシエとのコラボイベントの開催、TV出演など活躍の場を広げていった倉橋さん。
一見、順調そうな日本茶バリスタの活動でしたが、自身の中では煮え切らないものがありました。

それが「一度はお茶を飲んでくれるけど、生活に定着しない」という現実。

「例えばイベントを開いて、お茶農家さんのストーリーを伝え、そのお茶を淹れて提供する。その場では”美味しい”と言って喜んでもらえます。だけど、それが家でもお茶を淹れて飲む習慣に繋がるかといったら、なかなかうまくいきませんでした」

日本茶バリスタを続けるうち、次々と課題が浮き彫りに。

そして、もうひとつ感じたのが「生産者の方の”ストーリー”を伝えること」の限界。

ひとつひとつのストーリーは素晴らしく、その場では興味を持って聴いてもらえます。
ですが、すでに巷にはお茶に限らず生産者の方のストーリーであふれていました。
多すぎる情報の中、特定のストーリーを記憶に残すのはとても難しく、次の日には忘れられている。
ストーリーを伝えることで、お茶を飲む習慣を作るのは難しいと実感しました。

「そもそも、お茶のストーリーを伝えることは、生産者の方自身や小売のお茶屋さんがやっていて、自分の役割ではないなと気付きました。それとは別に、日本茶バリスタとして、お茶の淹れ手として、自分にできることは何かないのか。それをひたすら考えるようになりました」

その結果、見出した自分の役割 ———

お客さん自身の「お茶のストーリー」を創ることを決意。

それは、茶農家さんのストーリーを伝えることではなく、自分の淹れたお茶でお客さん自身のストーリーを創ること。
つまり、お客さんの記憶に残る思い出、思い出してまた日本茶を飲みたくなるような体験をつくること。

それが、日本茶バリスタの自分にしかできない事だと、そう考えるに至りました。

思い出を創るための「香り」「ミルク」そして「新しさ」

思考と試行を行き来し、ひたむきに歩みを進めていった倉橋さん。

行動すること、そして考えることを繰り返し、「日本茶の淹れ手」としての役割を見出した倉橋さん。
しかし、お茶をただていねいに淹れるだけでは「ハマる人にしかハマらない」と、日本茶を飲む人を増やすことに限界も感じていました。

日本茶の間口を広げ、そして飲んだ人に思い出を残すためには、違うアプローチが必要だと考えます。

頭をひねり考えるうちに、倉橋さんは次の3つのポイントに着目するようになります。
それが「香り」「ミルク」そして「全く新しい体験」を味わってもらうことでした。

倉橋さんが注目した1つめのポイント「香り」

「お茶には、旨味、甘味、渋味などいろんな要素がありますが、人ぞれぞれ好みがあります。特に、渋味は苦手な方もいれば、好まれる方もいて両極端です。でも、お茶の”香り”については例外なくほとんどの方が喜んでくれることを、これまで何杯もお茶を淹れる中で実感していました」

しかも香りにまつわる体験は、人間の生理の観点からも記憶に残りやすいことがわかっています。その点も「思い出をつくる一杯」のためには好都合でした。

倉橋さんが2つめに注目したのが「ミルク」

そして、次に着目したのがミルク。

「バリスタ時代、コーヒーのストレートより、カフェラテを注文される方が圧倒的に多かったんです。しかも、カフェラテを飲む方はストレートのコーヒーを飲まない方も多くて。これは、多くの人がミルクの味わいが好きだったり、混ぜ合わせることでコーヒーの嫌味を無くせるからだろうと。だったら、日本茶もミルクと合わせることで、また飲みたいと思ってもらえるものがつくれるんじゃないかと思いました」

倉橋さんが大事にした最後のポイント「体験の新しさ」

加えて、「全く新しい体験」の提供が必要だと考えました。
ミルクを使いながらも、既に市民権を得ている「抹茶ラテ」とは異なる、まったく新しいカテゴリーのメニューを創出する。
その新しさ、感動によって、飲んだ人の記憶に残り、思い出になる。そんな一杯を目指しました。

その新しいメニューが抹茶ラテとは全く別の需要を生み、その分だけ茶葉の消費量が増えれば、お茶農家の方たちの売上にも繋がる。そんなもうひとつの狙いもありました。

日本茶の未来を創る「日本茶プラントミルクティー」

「香り」「ミルク」そして「新しさ」を、この一杯に。

そうした3つのこだわりを、ていねいによりあわせ生み出した一杯。それが「日本茶プラントミルクティー」でした。

日本茶の香りを茶葉からじっくりミルクにまとわせることで、パウダーを溶かしてつくる抹茶ラテにはない、豊かな香りを実現。
茶葉も、日本中の30ヵ所もの茶畑を訪ね出会ったお茶から、香りに焦点を当てて吟味。有機玄米茶、有機ほうじ茶、国産烏龍茶、国産紅茶の4つを用意します。

「抹茶ラテとは違う飲み物」ということを明確にするために、あえて煎茶(緑茶)は取り扱わないことに。玄米茶をミルクティーにするというこれまでにはない発想で、美味しさはもちろん、体験の新しさにもこだわります。

厳選して採用した3つのミルク。

ミルクも、選んだ4つの茶葉すべてに合うものを求め、念入りに試行錯誤します。
牛乳やアーモンドミルク、ココナッツミルクなどは、一部の茶葉とは相性が良いものの、香りが活かせない茶葉もあったためお蔵入りに。

最終的に、2種類のオーツミルクと、1種類の豆乳を採用します。

結果的に残ったのはすべて植物性のミルク、つまりプラントミルク。日本茶の「プラントミルクティー」という新しいジャンルの創出にも繋がり、味覚だけでなくコンセプトの面からも、お客様に「新しさ」を強く印象付けます。

日本茶 × プラントベイクのペアリングでも新しい体験を創造。

パティシエもつとめた倉橋さんが生み出す日本茶のためのスイーツ・プラントベイク。

そうして完成した日本茶プラントミルクティーの味わいは前回の記事でご紹介したとおり。
日本茶の豊かな香りと、プラントミルクの奥ゆかしさが、深く印象に残る一杯です。

そしてお茶請けには、植物素材のみで焼き上げた洋菓子・プラントベイクを提供。
「普通の洋菓子でも、日本茶と合わないこともないんですが、相性はコーヒーや紅茶には絶対負けるんですよね。そうではなくて、掛け値なしで”日本茶に合う”と感じられる洋菓子を追求しました」
その結果、植物素材のみを使う、今までにない繊細でていねいな洋菓子が完成。
”日本茶に合わせて、洋菓子を食べる”という「新しい体験」を、ここでも演出します。

こうして、伝統ある日本茶の良さを最大限感じられながらも、そこにいくつもの「新しさ」が重なるように、店内の体験をデザイン。
お客様の中に「日本茶の良き思い出」を作るための、新しいお茶のカタチをつくり上げました。
お客様に、「また、日本茶を飲みたい」と、思い出してもらうために。

本当に届けたいものはお茶の「時間」

お茶を通じて届けたい本当の価値とは。

いかに日本茶を飲んでもらうか、飲み続けてもらうかを試行錯誤し、日本茶プラントミルクティーという新しいお茶のカタチを生み出した倉橋さん。
ですが、本質的に届けたいのは、お茶そのものではなく、お茶を飲むことを通して得られる「お茶の時間」だと言います。

「それについては、初めてお店で日本茶を飲んだときのことが原体験になっています。ペットボトルのお茶で満足してた中で、そこで飲んだお茶は香りからまったく別物だし、奥行きも余韻も全然違う。そこで体験したことは本当に衝撃的だったんですけど、それって味だけじゃかったなっていうことに、後から気付きました」

日本茶の原体験を振り返った先に、本当に届けたい価値がありました。

その結果、見出した自分の役割 ———

初めて訪れる日本茶専門店。
少し畏まった雰囲気にあてられ、期待の中にわずかに混じる緊張。
待つ時間の静けさ。その中に響く、お茶を淹れる音。
これまで感じたことのないほどのお茶の香り、奥行き、味わいが身体中に染み渡る。
吐く息の後に訪れる、ほっと安らかな気持ち。
緊張の糸は切れ、その勢いに手をひかれ、いつになく深い、深い、安堵の中へ。

五感に語りかけてくるお茶を通じて、何か自分自身に向き合っているような感覚がありました。

お茶の時間をつくる。そのためのあらゆるピースをつなぎ合わせできたのが『And Tei』という場所でした。

そのときのお茶の体験を再現しようと、『And Tei』のお店づくりにはそのための工夫が緻密に散りばめられています。

外から店内の様子がうかがえない外装は、あの時の期待と緊張を。
カフェのようでありながら、茶室のような静謐さが漂う空間づくり。
お茶を淹れる時間も味わってほしいと、すべてのオーダーは注文を受けてから一杯ずつていねいに淹れられます。
お客様にお茶と自分に向き合っていただけるよう、入店は1組に2名まで。会話も互いの声が聞こえる程度にとお願いしています。

「やっぱり届けたいのはお茶を飲む前後の時間、それと空間も含めた”体験”なんですよね。例えばお茶を使った美味しいスイーツを露店で出して、それが売れれば茶葉の消費量が増える。農家さんの収入にも繋がる。日本茶の存続というところに、一見貢献してるように見えます。でもそれだと”お茶の時間”を感じてもらうことはできませんよね。だから僕がやりたいのは、そこじゃないんです」

お茶の「時間」を知ってもらうことが、日本茶の未来のためと信じて。

「お茶の味や香りだけに終わらず、体験としての”お茶の時間”まで味わってもらうことで、やっと日本茶の良さが余すことなく伝わる。そう思ってます。それがお茶を飲み続ける人を増やすことにも繋がる。そのためにはまず最初の1杯を飲んでもらわないといけません。それを実現するのが日本茶プラントミルクティーです。そして飲んでもらうだけではダメで、お茶の時間を感じてもらうための空間も必要。そのためにつくった場所がここ『And Tei』です」

日本茶に触れてもらうためのきっかけ。
日本茶の良さを伝えるためのしかけ。
日本茶を飲み続けてもらうための、考え込まれた工夫の数々。

それらいくつものピースを、探し、集め、ていねいに並べる。そうやってつくり上げた、「100年後に日本の茶畑を残す」ための緻密なシナリオ。
その整然とよどみないストーリーラインは、決して絵空事ではないと、思わず頷く説得力があり、ともすれば芸術的ですらありました。

そして、それを実演するための舞台。それが倉橋佳彦がつくり上げた、日本茶プラントミルクティー専門店『And Tei』でした。

『And Tei』の店名に込められた意味とは。

『And Tei』の名前の由来。
「And」は倉橋さんがあのとき感じた、お茶によってもたらされた「安堵」。
「Tei」は、フランス語で「茶」を意味する「Te」と、「自分」を意味する「moi」の掛け合わせ。
「お茶によって得られる安堵の中で、自分自身と向き合う時間を過ごしてほしい」という想いが込められています。

そんな『And_Tei』の店内で、日本茶バリスタ・倉橋佳彦さんが淹れる、日本茶プラントミルクティー。

その一杯は今日も、訪れた人に新しい体験と、新しい自分に出会うための時間をつくり出す。そして、良きお茶の思い出、その人自身の「お茶のストーリー」を紡ぎだしています。

SHOP INFORMATION

SHOP And Tei(アンドティ)
WEBSITE https://www.instagram.com/_and_tei
ADDRESS 東京都墨田区太平4-22-6 1F
OPEN 平日 12:00~17:30、土日祝 12:00~17:30
CLOSE 水曜日

—————— 編集後記 ——————

「お茶の時間」の様々なカタチ。倉橋さんの新しい挑戦

錦糸町には『And Tei』ともう1つ、倉橋さんが営むお店があります。

倉橋さんが届けたいもののひとつ。
記事で何度も触れているように、それは「お茶の時間」です。

それは必ずしも、文字どおりの「お茶」を指すわけではなく、いわゆる「ブレイクタイム」。美味しい飲み物とお菓子でホッと一息つく時間のことでもあります。

よりよい「お茶の時間」を提供するため、倉橋さんは絶えず新しい試みを続けています。

プラントミルクコーヒー・カフェ『mute(ムテ)』

そのひとつが、2023年7月にオープンした、プラントミルクコーヒーのお店「mute(ムテ)」。
以前はコーヒーバリスタだった倉橋さん。コーヒーは「お茶の時間をつくり出す存在」として、今でも重要な位置づけにあるといいます。muteではそのコーヒーを、倉橋さんらしくオリジナリティーあふれる形で提供。

オーツミルクを使ったプラントミルクコーヒーを提供。

「カフェラテとは違い、カフェオレとも違う、ミルクティーのように香りを楽しむミルクコーヒーをご提供してます。コーヒーの苦味や酸味が苦手な方でもコーヒーの香りを楽しめて、まろやかですっきりとした口当たりです」

Mute(ミュート:「消音する」「無言にする」)とも掛けられている店名には、いったん思考を無(mu)にして、お茶をする時間(te)を楽しんでほしい、という意味が。

根底にある想いは、『mute』も『And_Tei』も一貫しています。

フランス料理店を居抜きした店内と、コーヒーに合うプラントベイク。

枠にとらわれない新しい方法で、「日本茶」「コーヒー」の良さを引き出してきた倉橋さん。
次はどんなカタチで、私たちに素敵な「お茶の時間」を届けてくれるのか。
彼の今後の動向にも、目が離せません。

SHOP INFORMATION

SHOP mute(ムテ)
WEBSITE https://www.instagram.com/mute_milkcoffeebake
ADDRESS 東京都墨田区緑4-20-14
OPEN 10:00~18:00
CLOSE 火曜日

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