美味しい店は、人が作る
ケーキ屋さんの生存競争が激しい吉祥寺で15年近くも愛され続けるゴセキ。食べる専門の自分にきちんと聞き手が勤まるだろうかと緊張しながら扉を開けると、五関シェフが意外なほどに柔らかな笑顔で迎え入れてくださった。
初めて訪れたパリの街。200年前の古典菓子の文献を読み解くお話。幼かった頃、最新のお菓子をいろいろと買ってきては食べさせてくれたハイカラなおばあ様のお話。
私の素人然とした質問にも懇切丁寧に応えてくださるうえ、たくさんの興味深いお話がよどみなく流れて来て、シェフのお人柄に感動すると同時に、本当にこの方は古典菓子を心から愛してらっしゃるのだなあ、としみじみ。
既にこんなに美味しいものを日々作り出していらっしゃるのに、古典菓子の奥深さははてしなく、まだまだ底が見えないのだという。19世紀のフランスのケーキのレシピを解読しては再現して作ってみるなどの研究も日々続けながら、製菓学校で古典菓子の授業を受け持つなど、後進の育成にも余念がない。
憧れのパリの空気があちこちに
壁に飾ってあるパリの街やパティスリーの写真は、ほとんどシェフが自ら撮影したもの。お伺いすれば、とても楽しそうに一つ一つのエピソードを語ってくださる。カラフルでスタイリッシュな最新のスイーツが注目を集める傍ら、路地をひょいと曲がったところには昔ながらの伝統的な古典菓子を提供してくれる瀟洒なパティスリーが今もまだたくさんあるのだそうだ。
そこのお菓子を食べ歩き、日本で自分流に再現するのが五関シェフの生き甲斐。お話を聞いているだけで、心は古き良きパリへと飛んで行ってしまう。
自ら生み出したケーキへの愛情もたっぷりだ。私がタルトを試食させていただいている間も、隣りの席に座り、最後のひとくちまで笑顔で見守ってくださった。ライターという職業柄、過去に何百件も食の取材には行っているけれど、このような経験は初めてで、恐縮ながらもとても感動してしまった。
シェフのひとつひとつの動作が、すべてお菓子への愛へと帰結していく。タルトがシェフに愛されているように、シェフもまたタルトの神様から愛されているのだろうな。愛こそ、すべて。帰り道、ゴセキのタルトの入った箱の重みに幸せを感じながら、そんなことを思った。
SHOP INFOMATION
NAME | パティスリーサロン・ドゥ・テ・ゴセキ |
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URL | http://www.p-goseki.com/ |
ADDRESS | 東京都武蔵野市御殿山1-7-6 |
TEL | 0422-71-1150 | OPEN | 10:00〜20:00 |
CLOSE | 不定休 |
※他、臨時休業する場合があります