はじめまして、ライターの嘉手川です。チョコレートが本当に大好きです。
チョコレートって、素晴らしいんです。基本的な材料は、カカオ豆とお砂糖。これは変わりません。でも、豆の品種や品質、作り手さんによって、み〜んな味が違うんです!
たとえば、同じ豆と同じお砂糖を使っても、作り手さんや場所が違うと、味が変わるんです。そういうのがすごく面白いし、それだけじゃなくて、とっても美味しい。
わたしは、とにかくチョコレートが大好き。きっかけは、中学生のときに読んだフランスのショコラティエ、ジャン=ポール・エヴァンの『ショコラの愉しみ』という一冊のレシピ本でした。写真のなかで輝きを放つチョコレートたち、チョコレート界のトップであり続けるエヴァン氏の情熱を見て、チョコレートの奥深さや芸術性に魅せられました。流行のBean to Barも、宝石のようなボンボンショコラも、みんな愛しています。
……1年ほど前でしょうか。ツイッターのチョコ好きのあいだで、「チョコ係さん」「すずなさん」と親しみを込めて呼ばれている方の存在を知りました。名前は、栗林寿瑞奈(くりばやし すずな)さん。
彼女のお店「c7h8n4o2」で扱うチョコは、どれも食べたことのない魅力的な子たちばかり。実際に商品を見てみたいと思い催事に足を運んだときから、チョコ係さんのチョコ好きには頭が上がりませんでした。
そんな私の尊敬する「チョコ係」さんに取材依頼書を送り、今回特別にインタビューさせていただきました。実はこのお店の名前の由来は、チョコレートに含まれる「テオブロミン」という成分の化学式。店名からチョコ愛に満ちた、チョコレートを専門に取り扱うセレクトショップです。
彼女がお店で扱うチョコレートの基準は、ずばり「自分の好きなチョコ」!サロンデュショコラへの出展も、人とのご縁からはじまったのだといいます。栗林さんの知らないうちに、まわりの方々が「ぜひ彼女にも出展してもらいたい!」といって、推薦してくれていたのだそうです。
インタビューでは、お店をはじめたきっかけや、チョコレートに対する想いについてお聞きしました。
読み方は?セレクトショップが不思議な店名になった理由
いきなりですが、店名をテオブロミンの化学式にしたのには、なにか理由があったのでしょうか。
栗林いえ、なんとなく「化学式を店名にしたいな」っていうのがあって、あまり深く考えていなかったんです。最初はネットショップのみだったので、電話に出るようなこともなくて。今になって困っています。笑
ちなみに、自分で店名を言うときは、どうされていますか?
栗林店名を言うときは、数字と記号をそのまま読んでいますね。
しーなな、えいち……と。
栗林そうです。でも「c7…」くらいまで言うと、大体みなさん「ああ、あそこね」って、わかってくれるんです。笑
幼少期からチョコレートが大好きだった
栗林さんのチョコレート好きは、昔からだったんですか?
栗林そうですね、昔からずっと食べていました。特に好きだったのが、有楽製菓っていうところの板チョコレート。
カタカナの「ユ〜ラク」の?
栗林そうです、あの「ユ〜ラク」。「ブラックサンダー」をつくっている会社です。そこの工場で売ってるおっきな板チョコがあって。
それが、ちっちゃいころから、常にお家に5、6枚積んであったんです。
すごいお家ですね笑
栗林祖母の家が工場の近所だったのかな。それで買ってくれていたのだと思います。そのチョコは、かなり食べました。
たまたまとはいえ、チョコレート工場が近かったのも運命かもしれませんね。
栗林そう、そうなんですよ。私のチョコ歴は長いです。
きっかけは、ポルトガルのチョコレート屋さんでの会話
栗林さんは、最初からチョコレート屋さんをやりたいと思っていたんですか?
栗林そうですね。セレクトショップをやりたいなあ、という気持ちはあったんです。セレクトショップを始める前は、商社や不動産会社など、チョコレートとはまったく関係のない企業に勤めていました。ただ、チョコレートは大好きだったので、機会があればチョコレートを販売するお手伝いなどをしていました。
2年前くらいかな、ポルトガルに行く機会があって。そのときに、はじめてショコラタリアエクアドルのお店を訪れたんです。
栗林そこで、お店の方といろんなお話をしていて。「チョコレートのセレクトショップをやりたいんだ」と言ったら、「今やっちゃえば?」と言われたんです。それもそうかな、と。勢いで決めました。笑
それで、もともと大好きだったイディリオや、レミさんのところに、帰国したタイミングで輸入させてもらえるかどうか、すぐにメールで打診をしました。ただレミさんは、「忙しいからなあ」ってかんじで、あまり話が進まなくって。なので、もう一度パリに行くタイミングで直接話に行きました。
レミさんって?
栗林フランスのチョコレートブランド「レミアンリ」のことです。打診の結果は、こころよくみんな「いいよ」って。輸入手続きとか、大変なことはたくさんあったんですけど、イディリオとレミさんからのオッケーをもらえたことは、心強かったです。
スイスとポルトガルからやってくる、2つのメインブランド
今日持ってきていただいた、3つのチョコレートについて、説明していただけますか?
栗林はい。これは「イディリオ」というスイスのブランドです。ふたつとも、ダークチョコレートですね。それぞれ5番、12番と番号がふられています。
それから農園の名前だったり、あと「アマゾナス」など、地域の名前だったりが書いていまして……。ええっと、チョコレートの説明をすればいいのでしたっけ?笑
そうです。お願いします。笑
栗林5番のチョコは、わりと結構カカオ感が強めな、しっかりしたチョコレートです。12番のチョコレートは、フローラル感のある華やかなチョコレート。それぞれのフォントは、チョコレートの味や風味を視覚でも楽しめるようにとイメージした字体になっていて、番号ごとに違うんです。
おもしろいですね!
栗林はい、イディリオオリジンは2人の男性が立ち上げたブランドなのですが、彼らは建築事務所などで働いていた方たちで。一人はデザイン担当、もう一人は現地までカカオ豆を見に行く担当、と決まっているんです。
5番や12番といった番号によって、チャートが分かれていたりするのでしょうか?
栗林いいえ、それがなにもないんですよ。たとえば、現地で縁起のよくない番号は抜けていたりします。チョコレートができた順番でもないみたいで。私もよくわかっていません。笑
お次は、大人気の「ショコラタリアエクアドル」のチョコレートですね。
栗林はい。今日は、ミルクのプレーンのものしか持ってこられなかったのですけど。(※2)これはもう、本当にノーマルなミルクチョコレートで、甘みがしっかりしています。
※2、ショコラタリアエクアドルのチョコレートは、中にガナッシュを入れてあるものが多い。この日はガナッシュ入りが売り切れということで、プレーンのミルクチョコレートを持ってきてくださいました。
保管は専用の”チョコ部屋”で
チョコレートを保管するときに、気をつけていることはありますか?
栗林とくにありません。温度と湿度くらいでしょうか。
保管は自宅ですか?
栗林はい。実家を事務所にしているので、そこの一室を、完全に締め切っています。ずっとクーラーかけっぱなしにして、除湿機も使います。
チョコ部屋があるんですね!
栗林そうですね、窓も開けられません笑
どれくらいの大きさなんでしょうか?
栗林8〜10畳くらいかな。けっこう広いと思います。そこに大きめのセラーがあって。
セラーもあるんですね!
栗林夏はチョコを全部セラーにいれて、クーラーを入れて。
それは……、とくに「何もしてない」わけではないですよね笑
栗林笑
夏はワインセラーだけだと温度が上がってしまうので、クーラーをかけっぱなしにしています。
電気代も大変そうです。
栗林大変ですね。払っていないので、わからないのですが笑 実家の親から、いつも怒られています。
笑
チョコレートは「日常的なもの」
チョコレートならなんでも好き、と言う栗林さん。最後に、彼女にとっての「チョコレート」とはなにかを尋ねてみました。
栗林今でも、チョコレートのことにすごく詳しいとか、そういった意識はぜんぜんなくって。ただ、チョコレートが好きなだけ、っていう意識しかないんです。それはもう、ちっちゃい頃から、ずっと。
コンビニで売っているチョコレートも買いますし、チロルチョコも食べます。高級チョコレートしか食べないってわけじゃないんですよ。博愛なので。
栗林さんにとって、チョコレートの魅力ってどこでしょうか?
栗林なんですかね、魅力……かあ。あまりチョコレートを特別扱いして考えたことってなくて。つまりチョコレートは私にとって、日常的な存在だと思います。
アイドルみたいにキラキラしているわけではなく、いつも隣にいるような存在?
栗林そうですね。その存在感こそが魅力だと思います。
愛犬みたいな感じでしょうか……。
栗林あはは、そうかもしれません。
ちなみに、チョコレートは365日、まいにち食べますか?
栗林あっそうです、食べますね。えっ、食べますよね?
食べます。笑
最後に「これから、日本のチョコレート業界でしたいことはありますか」と尋ねると、そんな、なにもありませんよ。と笑いながらも、想いを伝えてくれました。
「日本でも、チョコレートが、もっと文化的に根付いてほしい。バレンタインだけじゃなくて。もっと日常的な食べ物になれば良いなぁと思っています」
最後に、好きなチョコレートと一緒に、写真を撮っていただきました。
チョコレートが大好きな栗林さんの、大好きなチョコレートだけがつまったセレクトショップ、c7h8n4o2。
こちらのリンクから覗くことができます。日常的なものから、ちょっと珍しいものまで。チョコ係、栗林さんのチョコレート愛が詰まったサイトを見てみてください。
▶ 「c7h8n4o2」