赤坂の路地裏にある、家族で営む洋菓子店「アラボンヌー」。代表作「いちごのショートケーキ」は、食のセレクトショップ「DEAN & DELUCA」からもラブコールが来るほどの人気商品。初めて食べてもなぜか懐かしく、子どものころの家族の記憶がよみがえる、とっておきのおいしさの秘密を、パティシエの坂本和哉さんに伺いました。
[3大要素]
いちご / 栃木産のとちおとめ
スポンジ / ベストな焼き時間で
クリーム / 甘さひかえめ、軽やかに
昔ながらのかわいいフォルムに、とちおとめをたっぷりサンド
「いちごのショート」は、かわいらしいデザインですね。思い出の中のケーキのような、なんだか懐かしく、甘酸っぱい気持ちになります。
坂本ショートケーキは、誰もが小さいころから親しんできたケーキですから、素朴にシンプルに、ということをとにかく心がけています。
いちごはどのようなものを使っていますか?
坂本うちでは国産にこだわっていて、今は栃木県のとちおとめのみを使っています。甘みと酸味のバランスが絶妙で、ショートケーキに向いているんです。とちおとめの旬が過ぎれば、「いちごのショート」の販売も終了です。
「いちごのショート」はいつごろまで食べられますか?
坂本その年によって異なりますが、だいたい12月中旬から5月中旬ごろまでですね。今年ですと、母の日(2017年は5月14日)くらいまでは続けたいなぁと思っています。
スポンジもクリームも、常にベストな状態を感覚で見極めて
スポンジにはどのようなこだわりがありますか?
坂本お付き合いのある専門店から毎朝届くたまごを使っています。スポンジは、季節によってベストな焼き時間が変わりますから、細心の注意を払っています。
いつも焼き上がったらオーブンを開けて、手で直接触って確かめるんです。感覚的なものですが、ほんの数十秒焼き時間が変わるだけでも、仕上がりに大きな差がでてくるんですよ。
まさに、プロの感覚ですね。
坂本あとは、味の切れをよくするために、ほんの香りづけ程度にキルシュとシロップを混ぜたものをなじませています。創業時から使っているお気に入りのキルシュは、香りがとてもまろやかで、すごくいい隠し味になるんです。アルコール分は1%未満なので、お子さまにも安心して召し上がっていただけますよ。
クリームはいかがでしょうか。
坂本空気をたっぷりふくませて、軽やかにきめ細かく仕上げています。たっぷりと使っていますが、甘さはひかえめで口溶けがよいので、もたつかずにおいしく召し上がっていただけます。こちらも泡立て加減には細心の注意を払っています。
DEAN & DELUCAからもラブコール! 今では名古屋にまで拡大中
ショートケーキは、いつごろから扱われていましたか?
坂本2000年にお店をオープンしたのですが、当時からすでにショートケーキをつくっていました。当時生まれたばかりの姪っ子の名前をつけて、「ミューショート」という名前でした。今ではすっかり大きくなってしまったので、名前も「いちごのショート」に落ちつきましたが(笑)。
幸いオープンしてまもなく、「DEAN & DELUCA」さんにお声がけをいただいて、主要店舗でショートケーキを始めとする生菓子と焼き菓子を扱っていただけるようになり、お客さまの幅がぐんと広がりました。「DEAN & DELUCA」さんとのお付き合いは、もう14年目になりますね。
「DEAN & DELUCA」のバイヤーさんの先見の明もすごいですね! 今は、どちらの店舗でいただけるのでしょうか?
坂本品川、六本木ミッドタウン、有楽町、恵比寿、新宿、名古屋、大阪店にて召し上がってもらえます。なお、新宿、名古屋、大阪は焼き菓子のみの展開など、取り扱い商品は店舗によって異なりますので、お越しいただく際は事前にご確認をお願いします。
おかげさまで、いちばん人気があるのは「いちごのショート」のようです。赤坂が遠くてなかなか来店できない方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。あとは、2016年の4月から、「NEWoMan(ニュウマン)新宿」のエキナカにも出店しています。
「いちごのショート」以外のおすすめはありますか?
坂本ご好評いただいているのは、「タルトフリュイ」です。もともとわたしが、タルト専門店「キルフェボン」で修業をしていたこともあって、タルトにはこだわりがあるんです。
こちらは、特製のタルト生地と濃厚なカスタードの上に、季節の旬のフルーツをこぼれそうなほどたっぷりと載せました。ボリューム感はありますが口当たりは軽やかなので、ぺろりと完食される方が多いです。
シンプルだけどいちばん大事なことは、大切な人に食べてもらう気持ちでつくること
シェフがお菓子づくりで大切にされていることはありますか?
坂本若いスタッフの子たちにもいつも言っているのは「自分のいちばん大切な人に食べてもらう気持ちでつくってください」ということです。そう思うと、まず、手が抜けなくなります。焼き時間を数十秒変えただけの違いに敏感になります。
そして、そういう気持ちは、必ずケーキの仕上がりにも影響しますし、お客さまにも届きます。もともとこの店は、妻とふたりで始めた家族経営の店ですから、そういう考え方は、自分にとっていちばん大切なことなんです。
シンプルですが、お菓子づくり以外にも通じる、とても大切なものづくりの精神ですね。
坂本うちの厨房の合言葉は、「明るく、仲良く、元気よく働きましょう!」なんです。もちろん技術的なことも大切ですが、きちんと挨拶をする、何かしてもらったら「ありがとう」とお礼を言う。そういう、当たり前のことをしっかりと大切にしていきたいですね。
改めて、坂本シェフにとってショートケーキとはどのような存在ですか?
坂本日本人なら誰しも、子どものころからいちばん親しんできたのがショートケーキではないでしょうか。普通のときも、特別なときも食べてきた大好きなケーキ。これからも、思い出に残るようなショートケーキをお届けしていきたいです。
■ 教えてくれた人
坂本和哉さん
和菓子屋を営む両親のもとで育ち、ヨーロッパ留学中に洋菓子の魅力に開眼。帰国後、「キルフェボン」での修業を経て独立、2000年、赤坂に「a la bonne heure(アラボンヌー)」をオープン。「DEAN&DELUCA(ディーン&デルーカ)」六本木ミッドタウン、丸ノ内、渋谷、青山、成城、品川、名古屋店にてケーキと焼き菓子を取扱中。2017年4月15日、「NEWoMan(ニュウマン)新宿」 エキナカ2Fに出店。
タルトフリュイ 594円
SHOP INFOMATION
NAME | a la bonne heure(アラボンヌー) |
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URL | http://www.alabo.jp |
ADDRESS | 東京都港区赤坂4-3-13 |
TEL | 03-3583-7665 | OPEN | 11:00〜20:00(土12:00〜18:00) |
CLOSE | 日祝定休 |
※他、臨時休業する場合があります