[3大要素]
いちご / とちおとめを使用
スポンジ / 2種類をブレンドして「別立て」に
クリーム / 濃厚なものと軽いものをブレンド

ショートケーキのいちごに大切なのは甘さと酸っぱさのバランス感

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ちょこんと乗ったツヤツヤのいちごがとてもおいしそうです! いちごはどのようなものを使っていますか?

木村特に強いこだわりはありませんが、比較的メジャーで手に入りやすいとちおとめを使っています。とちおとめの魅力は、甘みと酸味の絶妙なバランス。

お菓子に使うフルーツは、そのまま食べるのではなくひと手間加えてから食べることが前提です。甘いスポンジと、甘いクリームに合わせるわけですから、いちごにはほどよい酸味が必要なんです。

別々に食べるのではなく、口のなかでのバランス感が重要なのですね。

木村10年ほど前は「女峰」という品種がとても好きで使っていたのですが、最近はあまり見なくなりました。いちごの品種改良も日進月歩ですから、ベストなものは常に変わります。目が離せませんね。

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生クリームは2種類をブレンドして軽やかさとしっとり感を両立

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クリームのこだわりはいかがですか?

木村個人的に濃厚すぎるクリームは好みでないので、ほどよく軽やかな食感に仕上げています。脂肪分が低すぎるとパサパサしてしまうので、うちでは47%のものと35%のものをオリジナルでブレンドしています。日本では1%刻みで脂肪分が違うものが選べますが、フランスでは、生クリームといえばほぼ35%のものしか選択肢がないんですよ。

日本の方が種類が豊富なんですか? それは驚きです!

木村そもそもフランスの伝統菓子に生クリームを使ったものがあまりないというのもありますが、フランスのものは全体的にとても軽くてさっぱりしていますね。日本のクリームの品質やバリエーションは、世界的に見てもトップレベルだと思いますよ。本当にすばらしいです。

スポンジのさっくり感は丁寧な「別立て」のなせる技

スポンジも、口溶けがとてもよいのに、やわらかすぎず、さっくりとした絶妙な食感がありますね。

木村個人的にはやわらかすぎず、ほどよい歯ごたえがあるスポンジが好きなので、食感にはこだわっています。このさっくり感には秘密がありまして、泡立てるときに「別立て」をしているんです。

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「別立て」とはどのようなものですか?

木村スポンジの泡立て方には「共立て」と「別立て」というのがあります。

「共立て」は、たまごと砂糖を合わせて泡立てる方法。それに対して「別立て」は、まずたまごを卵黄と卵白に分けてから、卵黄は砂糖を一緒に泡立て、卵白は卵白で泡立てて、最後にふたつを合わせる方法です。「別立て」のほうが、手間はかかりますが、さっくりと軽やかに仕上がるんです。

なるほど……! お客さまには見えないところで、たくさんの手間がかけられているんですね。しっかりとした食べごたえがあって存在感抜群ながら、味わったあとは口の中でスーっとやさしく溶けていく。絶妙なバランス感がたまりません。

木村ありがとうございます。食感と口どけのバランスには、とてもこだわっています。

スポンジとクリームの間に入っているシロップが、甘酸っぱくておいしいです。

木村こちらは、木いちごのシロップです。ほのかなベリーの甘酸っぱさが全体のアクセントになりつつ、クリームやスポンジの甘さをぐっと引き立ててくれるんです。

フランスの修業を経たシェフが、日本でショートケーキをつくる理由

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ましかくの姿や、2層になっているスポンジも、視覚的にスタイリッシュで愛らしいですね。

木村スポンジ1cm、クリームはいちごの半径より少し高め、そしてスポンジ1cmというのが、最終的に行きついたベストなバランスです。生地が多すぎるとパサつくし、クリームが多すぎると濃厚すぎますから、そこのバランス感にはこだわりました。

フォルムに関しては、開店当初は三角だったんですが、一年前に四角い形にリニューアルしたんです。もちろん見た目のこともありますが、商売的な理由もあるんですよ。

単純に、四角いほうが、切り分けやすいんです(笑)。作業効率があがるというのもとても重要なポイントで、一度により多くのお客さまにショートケーキをお届けできるようになりました。

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「ラ・ヴィエイユ・フランス」という店名の由来を教えてください。

木村これは、ぼくが修業していたフランスの老舗パティスリーの名前です。1843年パリ創業の、古き良きフランスの伝統菓子を出す名店です。師匠とお店への敬意を込めて、のれん分けのような形で同じ名前を使わせていただいているんです。

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フランスの伝統菓子の世界に「ショートケーキ」というお菓子はないと聞きました。本格的なフランス菓子を学んでこられたシェフが、自分のお店でショートケーキを出すことについて、どのような想いがありますか?

木村確かにフランス伝統菓子の世界ではショートケーキはありません。うちでもつくっている「フレジエ」というお菓子は、フランス版ショートケーキと言えなくはないですが、けっこうお酒も効いていますし、やはり日本のみなさまが頭に浮かべるショートケーキとは別物です。

わたしも、日本で独立してお店を出すことになった当初は、ショートケーキを並べることに少し抵抗がありました。でも、千歳烏山店は住宅街にありますし、お客さまにはお子さまもとても多いんです。それで、みなさんがクリスマスや誕生日にどんなケーキが食べたいかというと、やっぱりショートケーキなんですね。

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確かに、日本のお祝いの場には、ショートケーキがいちばんふさわしいですよね。

木村お客さまが、ショートケーキを食べたがってる。それなら、つくればいいじゃないかという、とても単純な理由ですね。やはり、パティシエとしては、お客さまに喜んでいただけるのがいちばんですから。

それに、ショートケーキはとても単純。いちご、クリーム、スポンジの3要素があればつくれるから、すごくありがたい存在なんですよ。早くつくれるから「Short(ショート)cake」という説もあるくらいですから。

シンプルだからこそ、手を抜けないショートケーキの奥深さ

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現在、お店ではショートケーキはどのような位置づけですか?

木村うちのメインはフランスの伝統菓子なので、看板商品とまでは言えないですが、年間を通して根強い定番商品になっています。フランス版ショートケーキと言われる「フレジエ」と「ショートケーキ」を、セットで買っていかれるお客さまも多いですね。食べ比べをしていただくのも楽しいと思います。

ほかに、お店のおすすめを教えていただけますか?

木村これからの季節だと、こちらの3品はいかがでしょう。

「タルト・ア・ラ・リュバーブ」は、リュバーブ(西洋フキ)を焼きこんだ酸味のある生地に、ふわっと甘いメレンゲが絶妙なバランスです。「エキリーブル」は、レモンが香るバニラ風味のホワイトムースに、イチゴのクリームをしのばせました。「木苺&ピスタチオのエクレア」は、ピスタチオクリームのコクと木苺クリームの甘酸っぱさが相性抜群です。

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左:タルト・ア・ラ・リュバーブ、中央:エキリーブル、右:木苺&ピスタチオのエクレア

どれも、見た目も美しく、とてもおいしそうです! 最後に、シェフにとってショートケーキとはどのような存在ですか?

木村ぼく自身も、小さいときから当たり前のように接してきた特別なお菓子です。フランス菓子ではなく、日本の洋菓子として、とても大切に思っています。非常にシンプルだからこそ、お客さまにもその良し悪しがダイレクトに伝わりますから、真面目に、丁寧につくっていかなければいけないと思っています。

■ 教えてくれた人

木村成克さん
渡仏後、数点の洋菓子屋に勤務し、パリの老舗店「LA VIEILLE FRANCE(ラ・ヴィエイユ・フランス)」のオーナー、ルネ・エルマベシエール氏から本格的なフランスの伝統菓子を学ぶ。2007年、千鳥烏山に「ラ・ヴィエイユ・フランス」をオープン。2012年には、グラシエ(アイスクリーム)を中心に扱う「ラ・ヴィエイユ・フランス」仙川店をオープン。繊細なフランス菓子をつくり出す一方、空手を嗜む男らしい一面も。

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商品リスト
ショートケーキ
520円
タルト・ア・ラ・リュバーブ
500円
エキリーブル
550円
木苺&ピスタチオのエクレア
480円