りんご飴を最後に食べたのは、いつだったか、覚えていますか?

わたしは小さい頃に、親と行ったお祭りで何度かりんご飴を買ってもらいました。ただ、お祭りのりんご飴って、飴が分厚くて、食べるのにすごく時間がかかるんです。

それで、やっとの思いで中身にたどり着いたぞ!と思ったら、肝心のりんごは小さくて、一瞬でなくなっちゃう。宝石のようにきれいで可愛らしい見た目に惹かれて買うものの、食べ終わりにはいつも少しさみしい気持ちになる。わたしにとってのりんご飴は、そんな食べ物でした。

でも、今は違います。

ポムダムールトーキョーのりんご飴を食べてから、わたしのなかの「りんご飴」に対するイメージは、すっかり変わってしまったんです。それはもちろん、いい意味で。

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こだわりの詰まったシンプルなりんご飴。普通サイズのりんごをまるまる一個使用しています!これ、初めて食べるときは「大きすぎるかな?」と不安になるのですが、食べ始めると、あら不思議。驚くほど、サクッと食べられます。その秘密は飴のコーティングの薄さとりんごのおいしさにあります。

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店主の池田さんに、こだわりを尋ねてみました。

飴とりんごの絶妙なバランス。特製りんご飴ができるまで

りんご飴の飴の部分は、極力薄くつくるようにしているのでしょうか?

池田そうです。あまり分厚いと、飴を口に入れたときの食感が強すぎるので、よくありません。飴が薄くないと、口の中で溶けてくれないんです。食べたときに、りんごと飴が一体化する、その状態がすごくおいしいので極力薄くしています

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りんご飴のつくり方は、加熱した飴にりんごをくぐらせるだけ。しかし飴はすぐに固まってしまうので、素早さと、均一さが肝心。これぞ職人技といえます。

ポムダムールトーキョーのりんご飴は、使用しているりんごのおいしさもピカイチ。だから大きさのわりにサクサク食べることができます。

りんごは通年、同じ品種を使っているのでしょうか?

池田時期によって違いますね。ほとんどは、ふじ系のりんごです。サンふじ、もしくは、ふじです。

お店で扱うりんごは、どのような基準で決められていますか?りんごにも、いろんな種類がありますよね。

池田これはよく聞かれる質問ですが、実はりんごというのは、一年中入手することが非常に難しい果物です。なので「この品種がいい」というふうに、わがままは言えません。

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池田たとえば、「僕は津軽が好きだから津軽が欲しいんです!」と言っても、いま津軽を抱えてる倉庫なんか、日本にひとつもないんですよ。そのとき、そのときで、今あるものの中から何が一番ベストなのかを考えて選びます。ですから、これじゃなきゃいけない、というような頑固な発想はありません。

ただ、総合的に考えて「サンふじ」という品種は、非常にバランスが良いりんごです。コンスタントに入手もしやすい。日本国内の流通量一位のりんごですからね。なおかつ使いやすいので、気に入ってよく使っています。

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一番人気はプレーン。りんご飴のフレーバー4種

ポムダムールトーキョーでは、プレーン以外に、シナモン、ココア、それから季節ごとのフレーバーを用意しています。

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左がシナモン、右がココア

池田僕は、本音を言えばプレーンだけでいいと思ってるんですよ。味に自信がありますから。でも、新しい味を考えるのにも、面白さがあります。

新しい味は、どのように決まっていくのでしょうか。お店の他のスタッフと相談しているのでしょうか?

池田基本的には、僕が思いついたものをひとりで試作しています。アイデアが浮かんだら、とりあえずつくってみる。ひと通り試作を終えて、これは商品になりそうだ、という段階になってから、はじめてスタッフのみんなに食べてもらいます。

うちのスタッフは、お客さん第一号になるんですよ。僕は、お客さまとしての意見がほしいので、そういうふうにしています。最終的に判断するのはお客さまなので。

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正式な店名が「りんご飴とシーシャの専門店」の理由

ポムダムールトーキョーは、正式には「りんご飴とシーシャの専門店」です。シーシャ(水タバコ)の存在が、店主 池田さんがりんご飴の専門店を開くことになった原点なのだと言います。

もともとは、シーシャだけのお店を開く予定だったのだとお聞きしました。

池田そうです。ただ、僕がシーシャのお店を開こうと思ったのは、煙に味がついてることや、見た目の特異性など、そういったところに面白さや興味を感じたからではありません。

では、、なぜでしょうか?

池田シーシャというのは、すごく独特な文化です。宗教上の理由でお酒が飲めない国の文化のなかで育ったものです。

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店内に置かれたシーシャの道具

池田日本に住む僕たちなら、飲みに行こうと誘えますが、あちらの方が嗜むものは、せいぜい紅茶くらい。そこに、シーシャというツールがあることによって、成立する空間があったり、繋がることのできたりする人々がいるんです。

日本でも、シーシャ屋さんには独特のコミュニケーションがありますね。たまたま隣の席になったお客さんと、シーシャをきっかけとして会話が始まって、そこから大切な友達になっていったり……ということが起こります。そういうことって、普通に生活していても、あまりありませんよね?

とくに日本は、一人一人がクローズドな性格を持っているので、何の目的もないところで人と人とが結びつく、というようなことは、トラブルでもない限りは起こりにくいと思います。でも、シーシャは、それを生み出すことができる。

ポムダムールトーキョーを開く前は、シーシャ屋さんで働いていたのですが、そういった、他人とつながるきっかけをつくれるところに魅力を感じていました。

正直言えば、「シーシャ」でなくても良かったんです(笑)。例えば「パンケーキ」とかでも良かったのかもしれませんね。ただ、僕にはシーシャが合っていた。それだけです。

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店内のシーシャのメニュー。一番上には「ポムダムール」という、りんご飴をイメージしたオリジナルフレーバーが

使命感に駆られて、シーシャから、りんご飴へ。

池田シーシャのお店を開くために、シーシャ屋さんでバイトをしたりしているうちに、だんだん都内でシーシャ屋さんが増えてきたんです。僕も、お金があればすぐにでもお店を出していましたが、残念ながら資金がありませんでした。

僕には「シーシャを正しく伝えていきたい」という、ある種の使命感のようなものがありました。けれど、実際にシーシャが流行りだしてみたら、少なくとも悪い未来は見えなかった。血眼になって僕が伝えるまでもなく、シーシャは広まっていった。だから、もう、いいかな、って。一気に熱が冷めてしまいました。

そこで、偶然出会ったのが、「りんご飴」です。

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池田僕はりんご飴を小さい頃に食べたことがなくて、大人になってから初めて食べましたんです。全然期待なんかしていなかったのですが、食べてみたらすっごくびっくりした。その日の帰りにパソコン開いて、つくり方を調べました。「本物が食べたい!」って思ったんです。それで専門店を探したのですが、ないんですよね、りんご飴専門店なんて。

ないなら、つくろう!って。じゃないとりんご飴がかわいそうだ、って思ったんです。

それまでに抱えていたシーシャに対する情熱が、「りんご飴」に完全に移行しました。それだけどころか、増幅していきました。

これは、誰もやったことがないし、誰かが正しく伝えてかなきゃだめなものだ!」って。シーシャのお店を開こうと考えたときに感じたものと、同じような使命感がありました。

そこからお金を貯めて、すべて自己資金でこのお店をオープンさせました。当時はまったく貯金がなかったので、工場で1年半働きました。ただ、それを元に融資を受けよう、とはさらさら思っていませんでした。「日本ではじめて何かをやる」っていう人間が、自分の力だけでとりあえずやってみないことには、誰かの夢や希望にはなれないと思った。

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おしゃれで可愛らしい、ポムダムールトーキョーの店内

つくりたかったのは、自分自身の居場所であり、誰かの居場所にもなる空間。

池田僕は、人が用意した居場所に、どうしても馴染む能力がなくて。それだったら、自分で自分の居場所をつくるほうが早いんじゃないか、って考えました。

このお店って、ありがたいことに、すごくお店のファンの方が多いんですね。初めのうちはりんご飴についてくださっていたファンの方たちが、いつしかお店のファンになってくれていました。このお店のやり方だったり、打ち出してる理念や思想に共感してくれているのだと感じます。

お客さんから「ずっとそのままでいてくださいね」って、そういうふうに言っていただけると、このお店をつくってよかったなって思いますね。

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ここまでくると、もしかしたら、僕と、その人たちがつながってるのは——これはさっきのシーシャにも当てはまることなのですが——りんご飴がきっかけにはなっていても、りんご飴はもう、そこまで重要じゃなくなっているんじゃないか、と思うんです。

りんご飴は、もちろん大事なんですよ。でもそれは、ただのトリガーなんです。それをきっかけとして、人と人とが連鎖して、影響を与え合っていく。そういうものをつくりたいという想いがあります。

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入り口近くの壁には、意味深な漫画劇場が……

さいごに、ポムダムールトーキョーのりんご飴を食べに来たことがない方に、メッセージをお願いしたいです。

池田ううーん……。「一度食べてみて」って風には、僕からは言えないかなぁ。

りんご飴は、見た目がすごく綺麗だし、とても魅力的なものだと僕は思っています。僕にはそれがすごく合っていた。だから、今までに「りんご飴」があったおかげで見ることのできた世界が、いっぱいあります。

僕たちのお店に来たことがない、この記事を読んでる方……あなたが、すでに自分が自分でいられるようなものを見つけているのだとしたら、それはすごく幸せなことだと思います。

でも、もしまだ見つかってないのだとすれば、いろいろなものに触れてみてほしいです。そのひとつに「ポムダムールトーキョーに来てりんご飴を食べる」っていうのを、やってみたいことリストに入れてみても面白いんじゃないかなって思います。もしかしたら、僕たちに何かしてあげられることがあるかもしれません。

うまく言えないけれど「そこに何かがあるかもしれない」と思うのであれば、それは、りんご飴だけじゃなくてもいい、旅行でもいい、何でもいいんです。でも、その中のひとつに、うちのりんご飴を入れてみてほしいな、と思います。

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教えてくれた人
池田喬俊さん
りんご飴は見た目だけを利用するかのように商売のためだけにただ消費されてきた時間がとても長い不遇なお菓子が悔しく、無実の罪、誤解を晴らすべく使命感に駆られ2014年に日本初のりんご飴専門店としてオープン。りんごのサイズ、酸味、硬さを見極め、それに似合った飴の厚さを季節、湿度、温度の変化の中日々追求。お店のファンは全国に広がり、百貨店催事にも多数出店している。