2016年春、感度の高いスイーツショップがひしめくNEWoMan新宿のエキナカに、手のひらサイズの愛らしい和菓子を中心としたコンセプトショップ「結」がオープンしました。「結」の母体は、創業380年余の老舗和菓子屋「両口屋是清」。歴史ある名ブランドが挑む、新しい和菓子の形。店長の浅岡沙栄さんにお話を伺いました。

創業380年余の老舗「両口屋是清」が、満を持して新コンセプトショップ「結」をオープン

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ショーケースにかわいらしい和菓子がずらりと並んでいますね。こちらの「結」は、老舗中の老舗である「両口屋是清」のコンセプトショップとお聞きして驚きました。

浅岡はい。両口屋是清は、寛永11年(1634)の創業以来、徳川家御用達として、名古屋で和菓子づくりひとすじに歩んできました。全国に店舗を展開している今でも、和菓子製造は名古屋工場でおこなっております。

そこまで歴史ある和菓子店が、あえていま新しいショップを立ち上げたのはなぜでしょう。

浅岡NEWoMan新宿は、場所柄30〜40代の女性の方がメインインターゲット。「両口屋是清」の顧客である60代以上の方以外にもアプローチをできる場所があれば、という思いから新ブランドを立ち上げるに至りました。「結」という名前には、弊社の和菓子が人と人を結ぶ架け橋になれれば……という思いを込めています。

「両口屋是清」から変わらず受け継いでいること、「結」で新しく挑戦していることがあればそれぞれ教えてください。

浅岡変わらないのは、製法や原料です。小豆は北海道のもの、大納言小豆は丹波のものなどを厳選しています。つくり方は伝統そのままで、製造もすべて本社がある名古屋で行われています。

挑戦しているのは見せ方をアレンジして、かわいさや楽しさをプラスしている点。「結」は扱う商品の数も限られているため、生菓子はすべて丁寧な手作業で、生菓子職人がつくっています。毎朝、前日の夕方6時に名古屋で完成した生菓子が、トラックで高速道路を渡り、朝の7時に直接届けられているんですよ。

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ここに並んでいるのは名古屋でのつくりたてなんですね! びっくりしました。

手のひらサイズの美しい和菓子「なまささら」で日本の四季を愛でる

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こちらの「なまささら」は、食べるのがもったいないほど愛らしいですね。

浅岡ありがとうございます! 「ささら」とは、日本の古語で「ちいさい」「かわいらしい」という意味。その名の通り、一口サイズのおいしさを楽しんでいただく生菓子です。

とうもろこしやトマトなど、「両口屋是清」では扱わないような素材にも積極的にチャレンジしています。常に新しい季節を感じていただけるよう、毎月1日にデザインを一新しますから、楽しみにされているお客さまも多いです。

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左から時計回りに2017年5月、6月、7月の「なまささら」

ビジュアルデザインにも相当なこだわりが感じられますね。

浅岡「結」のコンセプトである、「手のひらサイズの日本の美」を追求し、より美しく見えるサイズ感にこだわりました。小さなキャンバスにどれだけの季節感を盛り込めるかという挑戦です。また、楽しい気分、ハッピーな気分になっていただけるような、分かりやすい愛らしさも目指しました。

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たとえば、こちらは9月の「なまささら」ですが、手に持っているものから時計回りにご説明させていただくと、

・だんご:2色のだんご
・大納言:おはぎ
・芋かのこ:さつま芋の菓子
・着綿:赤いこなしの菓子(9月10日以降は白い綿部分が無くなり菓子名は「紅菊」となります)
・オレンジ:蜜漬けのオレンジ乗せ
・和栗:栗の葉が下にある栗の菓子

というようになっています。

「着綿」というのは、一体どのようなものなのでしょうか。

浅岡こちらは「重陽(ちょうよう)の節句」に基づいた生菓子です。旧暦では9月9日、菊が咲く季節でもあることから「菊の節句」とも呼ばれるんです。この時期に菊の上に真綿をのせ、菊の露を含んだ綿で身体を拭くとよいとされる伝承を、和菓子で模したものです。なので重陽の節句が終わると、生菓子の菊からも「着綿」が外されます。

なんて風流なあしらいなのでしょう……。小さな生菓子に、日本の節句や伝統がぎゅっと濃縮されているんですね! 毎月デザインが変わるということで、職人の方々の生みの苦労もすごそうです。

浅岡和菓子というのはいわゆる「抽象の文化」で、日本の四季や暦、和歌などの知識を抽象的に表すデザインのものが多いんです。そこが日本の美でもあるのですが、知識がないと楽しめないものでもあります。

いま「結」で挑戦しているのは、ひと目でぱっとみて「きれいな花だな」「かわいいな」と伝わる具体的な和菓子づくり。職人もたいへん苦労していますが、そのぶん、色遣いなどにはとても気を遣っています。また、私たち現場の声や、お客さまのご意見がデザインに反映されることもあるんですよ。

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「なまささら」12個入り3240 円。円形の窓から一部が見える粋なパッケージ。

これからも若い世代にアプローチしながら和菓子の世界を新しく広げていきたい

こちらの「あまのはら」は、切る場所によってさまざまな表情の富士山が現われるデザインがとても斬新で、まるで芸術品のようですね。

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浅岡おかげさまで、メディアで取り上げていただくことも多く、入荷してもすぐに売り切れてしまうほどご好評いただいています。元々は「山の日」の制定を記念した新作で、山の四季を一棹(さお)で表現したいという思いからスタートした羊羹です。

富士山の柄をつくるにはかなりの技術を要する難しい商品ですが、お客さまによろこんでいただくため、職人たちも楽しみながらつくっております。ほのかにレモンの風味が香るさっぱりとした味わいで、冷やしてお召し上がりいただいてもおいしいですよ。

「あん」×「チョコレート」の幸福な出会い「ふゆうじょん」

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こちらの「ふゆうじょん」は、また、とてもモダンなデザインですね。あんとチョコレートの組み合わせだなんて、とても新鮮です。

浅岡ありがとうございます。私たちは洋菓子も大好きで、「両口屋是清」の社内でも、おやつの時間に日常的にチョコレートも食べています。みんなが大好きなあんとチョコレート、このふたつを合わせたらきっと楽しい! と思い、開発に至りました。初めてなのにどこか懐かしく感じていただける味になったと思います。

一見チョコレートのお菓子なのですが、口に入れると上品なあんの香りと舌触りがふわりと広がって、とても不思議なおいしさですね!「ビターちょこ」や「きなこちょこ」など、ひとつひとつコーディングのフレーバーが違うのもとてもわくわくします。

浅岡「ふゆうじょん」は、薄さ0.5mmのチョコレートを手作業でコーティングしているんです。薄すぎず、厚すぎず、ベストな厚さをキープしています。

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とても繊細なお菓子なのですね。お客さんからの評判はいかがでしたか?

浅岡「見た目がエクレアみたい」「甘いもの同士の融合なのに、不思議と甘過ぎず落ち着く味」など、うれしい感想をいただいております。お茶もよいですが、コーヒーとの相性も抜群ですよ。

これから「結」として新たに挑戦したいことはありますか?

浅岡みなさまのコミュニケーションの架け橋になるような和菓子をお届けできればという思いはもちろんのこと、この場所自体も私たちとお客さまのコミュニケーションの場になれば嬉しいです。

「両口屋是清」はもともとお殿様のご用聞きでしたから、お客さまのご意見やご要望にお応えするのは得意なんです。たとえば「こういう形の生菓子がほしい」とご相談していただければ、お日にちはいただきますが、ひとつからでも御対応は可能です(費用は応相談)。「結」を通じて、みなさまにも柔軟に和菓子の世界を楽しんでいただけたら、とてもうれしく思います。

■ 商品リスト

「なまささら」1個270円
「ふゆうじょん」6個入り1296円〜
「あまのはら」 3240円

■ 教えてくれた人

浅岡沙栄さん
「両口屋是清」東武百貨店池袋店に9年(うち店長5年)勤務後、NEWoMan新宿店の責任者に抜擢。おすすめは、外袋に好きなメッセージを書いて贈ることができるどら焼き「つぶらか」216円。「卵の風味、粒あんの大きさ、すべてが最高です!」

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SHOP INFOMATION

NAME 和菓子 結
URL http://www.wagashi-yui.tokyo/
ADDRESS 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55 NEWoMan2F エキナカ
TEL 03-3353-5521
OPEN 8:00〜22:00 土日祝のみ8:00〜21:30
CLOSE 不定休

※他、臨時休業する場合があります