ふわふわの生地に、フランボワーズをまんべんなく散りばめた、美しい断面の秘密

平日の、まだ13時すぎ。まだおやつの時間には少し早いというのに、店内は満席。テイクアウトのお客さまもひっきりなしに入ってきて、とりどりのシフォンケーキから、好きなものを選んで持ち帰る。シフォンケーキ通であれば、だれもが最初に名前を挙げるこの店の店主は、小沢のり子さん。

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まるで絵本のなかから飛び出してきたような「フランボワーズシフォンケーキ」には、小沢さんがフランスに住んでいたころ、大好きだったというフランボワーズがふんだんに使われています。淡いピンク色の生クリームで包まれた「フランボワーズシフォンケーキ」のおいしさの秘密について、「ラ・ファミーユ」創業のストーリーとあわせて伺ってみました。

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一番人気という、この「フランボワーズシフォンケーキ」について、教えてください。

小沢プレーンなシフォンケーキに、ヨーロッパ産のフランボワーズをたっぷりと混ぜ込み、焼き上げた生地を、さらにフランボワーズ味の生クリームで包みます。トップには、フレッシュなフランボワーズをのせて。

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真っ赤なフランボワーズが、「これでもか」と散りばめられていて、目にもおいしいケーキですね。

小沢ありがとうございます。スポンジ生地には、空気がしっかりと含まれていて、口に入れた途端に、溶けてなくなってしまうでしょ?

酸味のきいた後味も、あっさりとしていて、それでいて、ほのかな甘さが鼻から抜けていきます。

小沢手間も経験も必要なケーキだから、やっぱり、他ではなかなか味わえないと思います。

難しいのは、どんなところですか?

小沢日本産のフランボワーズは手に入らないので、どうしても、輸入に頼らざるを得ません。フランボワーズの品質、冷凍技術の良いものを選ばないと、良い生地ができても膨らみが悪かったり、生地の中に穴があいたりと、失敗につながります。難しいシフォンケーキのひとつです。

20年作り続けてきても失敗してしまうとは、本当に繊細なケーキなんですね。

小沢ただ、基本的には、シフォンケーキだからといって、特別なことはやっていません。「シフォンケーキとは、こういう素材と製法でつくるもの」という考えが、わたしのなかにはそもそもなくて。ほかのお菓子をつくるときの基礎を応用しているだけ。わたしにとっては、シフォンケーキも数あるお菓子のなかのひとつなんです。

「〜しなければならない」という固定概念がなければ、自由な発想で、オリジナルのケーキがつくれます。それに、わたしの場合、つくるより前に「食べたい」がありますからね(笑)。

小沢さん自身は、どのシフォンケーキが、いちばん好きなのですか?

小沢ぜーんぶ、大好きなんですけど、わたしは、プレーンの生地をスライスして、あいだに生クリームを挟んで、その生クリームには、いちごをたっぷり入れて……。

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なんと、オリジナルアレンジのショートケーキ風!

小沢いちごの季節になると、お店でも販売するんですよ。12月くらいから。普通のケーキよりスポンジがしっとりしてるから、それ食べちゃうと、きっと、よそのショートケーキは食べられなくなっちゃいますよ。

フランスには無いケーキ。伝統を重んじる土地で認められたことがきっかけに

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続いて、「ラ・ファミーユ」についてきかせてください。

小沢実は、オープンしたてのころは、いろんなお菓子を並べる普通のお菓子屋さんだったんです。

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どうして、シフォンケーキを専門に扱うことになったのですか?

小沢駅前にある大きなデパートに入っているような有名なケーキ屋さんには、かなわないと思った。だから、「ラ・ファミーユ」ならではの強みをつくろうと考えたんです。“小さくて無名でも、おいしいお店”をつくろうと。それで、オープン当初から「好きだ」というお客さまが多かったシフォンケーキを選びました。

フランスに行っていたときにも、わたしがつくったお菓子を、フランス人も喜んでたべてくれたんです。シフォンケーキは、フランスにはありません。伝統菓子を重んじるフランス人が受け入れてくれたのを見て、「ああ、これは、“だれにも嫌われないケーキ”なんだ」って確信したんです。

そのころは、まだシフォンケーキが一般に広く知られていないころだったのですが、ちょうど「ラ・ファミーユ」がシフォンケーキ専門店になったあたりから、シフォンケーキの認知度が上がっていって。それで、うちがテレビや雑誌で何度か取り上げられるうちに、「シフォンといえば、ここ」という風に思ってもらえるようになったんです。

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シフォンケーキのレシピは、どのようにして開発したのですか?

小沢当時、おいしいシフォンケーキのつくりかたを教えてくれる人なんていませんでした。レシピ本だって、簡単には見つからなかった。八方塞がりかと思っていたところ、偶然、ある一冊の本に出合ったんです。

それは、お菓子づくりを科学的に説明してある本で、わたしが何度失敗を繰り返してもわからなかった原因のぜんぶが、そこに書いてあった。それまで経験値でやっていたことが、実際に手に触れられるものに変わった瞬間でした。

お店のお菓子≠お家のお菓子。洋菓子教室で教えること

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お店では洋菓子教室も行なっていますよね。どんな教室なのでしょうか?

小沢シフォンケーキの場合は、「ラ・ファミーユ」で培ってきたお菓子づくりのノウハウを教えています。以前フランスで暮らしていたときに驚いたことのひとつが、家庭のお菓子とお店のお菓子が、まったく違ったということ。

日本に“家庭の味”があるように、フランスには“自分の家のお菓子”があって、それを彼らはすごく簡単につくるのです。もちろん、できたものも、ちゃんとおいしい。だから、シフォンケーキ以外のお菓子の場合は、家庭でなるべく簡単にできるように教えています。

そもそものはじまりは、毎日の家事の息抜きのために、東京のお菓子教室に通いはじめたこと。それから、お菓子づくりの基礎を勉強するためにフランスに渡ったという小沢さん。シフォンケーキが、まだ一般に浸透していなかったころからそのおいしさに注目し、独学でその味を模索。おいしいシフォンケーキを自分で生み出してきたからこそ、自由な発想で、お客さまに愛されつづけるお店をつくることができたのでしょう。枠にはまらないオリジナルなシフォンケーキで、これからも私たちを楽しませてくれそうです。

■ 商品リスト

「フランボワーズシフォンケーキ」500円

■ 教えてくれた人

小沢のり子さん
「ラ・ファミーユ」店主。とにかく、食べることが大好き。その気持ちと、フランス菓子の知識をもとに、20年前に池袋にお店を持った。

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