こんにちは、インターン生の宮地祐太です。

今回お話を伺ったのは、白金台にあるミシュラン1つ星のフレンチレストラン「TIRPSE」で、シェフパティシエとして働かれている中村樹里子さん。

彼女は、6月30日までの1年間限定で、デザートのみのコースを提供するテイスティング・レストラン「kiriko NAKAMURA」をオープンした、今話題のパティシエです。自分も期間中に行ったことがあるのですが、そのときの体験が忘れられず、無理を承知で、1年間の期間を終えた「今」についてお話を聞かせていただきました。

記事の最後には、実際に中村さんが提供したデザート「アメリカンチェリーとピスタチオと煎茶のデザート」と「フロマージュブランとグレープフルーツとライチとシャンパーニュ」をいただいた様子もご紹介します。

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中村さんは、製菓専門学校を卒業したのち、大阪のケーキ屋さんや結婚式場、そして「パティスリー ケ・モンテベロ」などのパティスリーの立ち上げに携わりながら、さまざまなジャンルのお店で9年ほどパティシエとして働きました。

その後、それまで自分が日本でつくってきたフランス菓子と本場フランスのお菓子がどう違うのかを確かめるために、フランスへ修行しに渡仏。当初は1年で帰国するつもりが、日本とフランスの食材の質や仕込み、作り方など、すべて異なることがとても面白く、気づいたころには現地に約4年も在仏していたのだそうです。

帰国後、「TIRPSE」でシェフパティシエとして2年ほど働く中ではじめたのが、デザート・テイスティング・レストラン「kiriko NAKAMURA」です。

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初めての挑戦の先で得た、パティシエとしての自信

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1年間限定でオープンした「kiriko NAKAMURA」を終えた今、どんなお気持ちですか?

中村率直に「やってよかったな」と思います。これまで単発的なイベントはやったことがあったんですが、継続的にやる経験がなかったので、最初は躊躇していたんです。でも、オーナーに背中を押してもらったからこそ、これまでにないような「デザートのみのコース」ができたなと思っています。

今回の「kiriko NAKAMURA」で、一番こだわった点を教えていただけますか?

中村今回のレストランは、「デザート」と言っているので、すべて “できたて” で提供したところですね。朝にすべて仕込みを行い、つくりたてのデザートを味わっていただけるようにしました。

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肝心のコースメニューなんですが、この6品のデザートメニューは、どういう順番で決めたんでしょうか?

中村順番というよりは、「素材」から考えました。

季節によって「フルーツ」や「野菜」などの味や美味しさは、まったく違いますよね。それぞれに何を掛け合わせたらお客さまに一番おいしく味わっていただけるか、そのバランスを考えてつくりました。

それに、デザートコースなので、レストランのコースのように、初めはのどごしがいいものや油脂分が少ないものからはじまり、だんだん甘さや味の濃さなどを上げていき、最後の方に少し塩分を乗せて、焼きたてのクレープで締めるというようなバランスの良いコースを組み立てました。

実は先週プライベートで、中村さんのデザートコースをいただいたのですが、最初は軽めで、だんだんちょっと重くなって最後クレープで軽く終わる流れがとても気持ちよかったです。

中村ありがとうございます。コースの中で、トーンや印象を変えて「遊び」を入れたり、洋の中に和の素材も取り入れたりして、今まで食べたことがないような味を体験していただけたかなと思います。

実際、この1年間やってみて良かったなと思いますか?

中村はい。考えたり実際に行動してみたりするからこそ、新しいアイデアが生まれるのであって、何もやらなければ自分にとってプラスにならなかったし、何も残らなかったと思うので、今回のような機会を与えてもらえて本当に良かったと思います。

中村今回やってみたことで、パティシエとして自信がつき成長できたと思いますし、お客さまに対しても今までにない経験を与えることはできたんじゃないかなと思います。

ちなみにですが、どうして「1年間」に限定したんでしょうか?

中村理由は、ずっとやると飽きられるからです(笑)。それに、期間が決まっている方が、私にとっても踏ん張りが効きますし。

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長期休暇を利用して、世界の味を体感しに行く

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オープン初日から連日満席と大盛況の中で終えた「kiriko NAKAMURA」ですが、中村さんの今後のご予定についてお伺いできますか?

中村7月から1ヶ月ほどお休みをいただく予定なので、海外に出て研修するのと、人気のレストランでつくられているデザートを味わいに行く予定です。

場所は主にヨーロッパ圏で、ベルギーやフランス、そして北欧のデンマークなどへ行く予定です。行くお店は、まずベルギーにある「イン・デ・ウォルフ」という今年で閉店してしてしまうレストランと、フランスは現地で働いている友人のお店へ食べ歩きとして訪問し、デンマークは「ノーマ」へ行く予定です。

また、研修先のレストランはペルーにある「セントラル」という、今年の世界ベストレストランランキングで第4位になったお店で、短期間ですけど研修をさせていただく予定です。

「kiriko NAKAMURA」は一旦は終了しましたが、別に私は完全に終わりだとは思っていなくて、またいつかやれたらいいなと思っています。

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中村さん、ありがとうございました! 今回の取材で、中村さんのお菓子に対する「思い」や「情熱」、そして独特な考え方やもっとおおらかな気持ちでいることの大切さなどを感じることができました。

素材を生かした、それぞれ主役級のデザート

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取材が終わった後に、中村さんに6皿のデザートコースの中から、2皿のデザートをご用意していただきました。

1皿目は、フロマージュブランとグレープフルーツとライチとシャンパーニュ

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「名前はないのですか?」と聞いたところ、「使われている素材を知っていただいて、しっかりとそれぞれの味を感じて欲しいので、あえて名前は付けず、使われている素材をそのまま名前となっています」とのこと。素材に対してのこだわりの強さが伺えます。

酸味の効いた紅色のグレープフルーツと滑らかで口溶けの良いフロマージュブランの上に、砕いた白色のメレンゲのサクサク感が良いアクセントに。さらに、バラの香りがついたシャンパーニュのソルベで上品な味わいになり、少しシュワッと炭酸を感じる新感覚のデザートでした。

続いて2皿目は、アメリカンチェリーとピスタチオと煎茶のデザート

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黒を基調とした、シックで大きな円盤のお皿に盛り付けられたこちらのデザートは、一番下に濃厚な抹茶ケーキ、その上にはこれまた濃厚なピスタチオのムース、そして一番上には丸く型どられたホワイトチョコレートと大きめに砕かれたピスタチオのダックワーズの構成になっており、横にはアメリカンチェリーが添えられています。

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ほろ苦く、それでいて上品に甘い濃厚な抹茶ケーキと、濃厚だけど後味さっぱりなピスタチオのムース、そしてサクほろなピスタチオのダックワーズとの相性がとてもバランスがよかったです。濃厚なのにあっさりとしていて、なおかつ上品な味わいにスプーンが止まりませんでした。