赤坂に来たなら絶対に寄りたい、老舗の洋菓子店「しろたえ」。お店の代名詞でもあるレアチーズケーキが有名ですが、40年間変わらないレシピでつくられるショートケーキ「ガトーフレーズ」もぜひ試してほしい逸品です。ショートケーキとしては一風変わったデザインの理由や、40年間変わらないレシピの秘密まで、社長の川越盛一郎さんにお聞きしました。
[3大要素]
いちご / 大ぶりのあまおう
スポンジ / しっとりやわらかに
クリーム / 2種のブレンドに洋酒をプラス
全体の調和を考えて、デザインはごくシンプルに
今日は、「ガトーフレーズ」(フランス語でいちごのケーキの意)のおいしさの秘密についてぜひお聞きしたいです。トップにちょこんと載っているピスタチオが、看板商品の「レアチーズケーキ」とおそろいで、とても愛らしいですね。こういうショートケーキのデザインはなかなか珍しいのではないでしょうか。
川越上にいちごを飾ると、それから召しあがる方が多いでしょう。そうすると、味の全体のバランスが壊れてしまうような気がして、うちでは、上にはいちごを載せていないんです。
お客さまの食べ方まで考えられているのですね! 上にいちごが載っていないぶん、断面から見えるいちごの美しさが際立っています。
川越ありがとうございます。デザインはいつでも、シンプルさを大切にしています。
いちごはどのようなものを使っていますか?
川越あまおうです。やわらかいけれども歯ざわりがしっかりとしていて、とてもショートケーキに合う品種だと思います。なるべく大きなものを選ぶようにしています。スポンジやクリームと合わせたときにとてもおいしいですよね。
昔ながらのしっとり食感に、ジャムや洋酒でアクセントを
スポンジにはどのようなこだわりがありますか?
川越昔ながらのレシピで、ふんわりしっとりと仕上げています。重ねるときに、シロップと洋酒を混ぜたものをスポンジの上に塗っています。こちらは風味づけと、乾燥を防ぐ意味もありますね。
そしてアクセントにレッドプラムジャムを加えています。ジャムは、酸味をまろやかに中和しながら、いちご自身のおいしさも引き立ててくれます。
クリームはいかがでしょうか。
川越クリームは、脂肪分35%と47%をブレンドして、口溶けのよさを追求しました。クリームにも隠し味に洋酒を効かせ、ふんわりと甘いけれどもくどくない、軽やかな食感に仕上げています。
1976年の創業当時から変わらない、唯一無二のスペシャルレシピ
こちらのショートケーキは、いつごろからあるものですか?
川越創業とほぼ同時に完成したものだと思います。レシピも見た目も、1976年当時から変わっていません。
40年以上……! 当時のレシピをずっと守り続けていらっしゃるというのは、ものすごいことですね。
川越いや、決してがんばって守ってきたというわけではないんですが、特に変えるべきところがいまだ見あたらないというか……。ただの無精なのかもしれませんけども(笑)。
いまでも定番商品としてショートケーキが多くの方に愛され続けているというのは、すでに40年前にベストな味が完成されていたということの証拠ですね。現在の日本と、1976年当時と日本では、洋菓子に関する感覚も違っていたのではないでしょうか。
川越そうですね、当時の日本でケーキと言えば、やはりショートケーキかシュークリームか、という感じでしたね。わたしはフランスで修業しましたが、フランスでは、そもそもショートケーキというものがないんですよ。
いざ店を持つとなったとき、提供するかどうか悩みましたが、日本人が日本でケーキを売るのなら、やはりショートケーキは出したほうがよいだろうと考え、売ることにしました。
実際に出してみて、いかがでしたか?
川越やっぱりみなさん、ショートケーキが大好きですね。見てくれはこの通り、派手なものではないんですが、じわじわと人気が高まって、今でもたくさんの方が買ってくださいます。
こんなにしっかりとしたケーキが、今も390円でいただけるというのもうれしいですね。
川越こちらの懐具合もあるので難しいところもありますが(笑)、なるべく手ごろなお値段で、たくさんの方に食べてほしいですからね。
行列が絶えないお店の代名詞的存在「レアチーズケーキ」
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こうして取材をさせていただいている間も、ショーケース前に絶え間なく行列ができていますが、ほとんどの方が「レアチーズケーキ」を選ばれているようですね。お店の代名詞的存在である「レアチーズケーキ」についても教えていただけますか?
川越ありがたいことに、とても多くの方に気に入っていただいていますね。「レアチーズケーキ」も、創業以来ずっと変わらないレシピでつくっているものです。
デンマーク産の2種類のクリームチーズをあわせて、空気を含ませながら混ぜることで、濃厚かつなめらかに仕上げています。土台のビスケットは、バターをたっぷり入れて専用に焼きあげたものです。チーズとビスケットが口の中で混ざり合って、すうっと口に溶けるような食感がおいしいですよ。
この小振りなサイズと、手ごろなお値段も魅力ですね。
川越チーズケーキって、後でしつこくなっちゃうことがあるでしょう。だからこれくらいの大きさがちょうどいいのだと思います。
改めて、シェフがお菓子づくりで大切にされていることはなんですか?
川越どんなケーキをつくるときでも、全体の味のバランスを考えながら細部を決めていくようにしています。ショートケーキだと、いちごだけ、スポンジだけなど、どこか部分が目立ってしまうものではいけません。やはり3つが合わさったときの統一感が、いちばん大切だと思います。
最後に、シェフにとって、ショートケーキはどんな存在ですか?
川越いやぁ、もちろん好きなんですが、やはり、ショートケーキはあまりにもシンプルというか、一般的すぎてね(笑)。どちらかというと、モンブランのほうが愛着があるかもしれませんね。甘露煮を圧力釜で煮てから、裏ごししてつくっているんですよ。こちらもぜひ食べてみてくださいね。
■ 教えてくれた人
川越盛一郎さん
大学卒業後、国内修業を経て渡仏。本格的な西洋菓子を学ぶ。1978年、赤坂に「しろたえ」を創業。小さなサイズのレアチーズケーキは、各メディアにひっぱりだこの看板商品に。現在、ケーキや焼き菓子のほとんどを、創業当時のレシピのままつくり続けている。ちなみに、包装紙や看板などに描かれている少女のイラストは、川越シェフの妹さんがフランス・アルザス地方をイメージして描いたもの。
レアチーズケーキ 260円
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