【旅とおやつ。/札幌編】心の隙間を埋めるやさしい静寂。「chiba house(チバハウス)」
フードイラストレーター
まるやまひとみ
昼と夜で寒暖差のある秋の札幌。日が落ち始め、しんと静まる夕方の空気が私はたまらなく好きです。
初めてひとりで訪れた札幌で出会った一軒のカフェ。夕暮れ時が似合う雰囲気に惹かれ、以来、札幌で必ず立ち寄る大好きなお店になりました。
仕事終わり、日常とは違う旅の途中で私をやさしく包む音。快然たるひとときに溶きほぐされてゆく心。
あなたにも出会ってほしい、とっておきの場所をご紹介します。
※通常、店内の撮影は不可となっていますが、今回は取材ということで特別に撮影をさせていただきました。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
一人の時にこそ出会いたいカフェ
ポツンと光る葉の影絵を目印に。
北海道大学植物園のほど近くにある「chiba house(チバハウス)」。
愛聴しているミュージシャンのレコードにちなんで名付けたというほど、音楽が大好きなご夫婦で営む街に溶け込んだカフェです。
ランプシェードからやんわりとあふれ出す灯りが温もりを作り出す。
必要最低限の照明と落ち着いた家具の上品な佇まい。店内に流れる音楽は、お二人が集めたレコードやCDからセレクト。
お店の空気に馴染む穏やかな曲が多く、ゆっくりとコーヒーを飲むのに適したリズム。
手軽に聴けるCDとは違い、再生するのに針が必要だったり、自分で裏返さなければいけないレコードの不器用さがたまらないと話す店主。ノスタルジックなサウンドに肩の力が抜けていくのを感じます。
何気なく通り抜けていく“音”が心を救う
アーティスト自らが手がけたジャケットもおしゃれ。
あなたが最近耳にした“音”はなんですか?
“音”に耳を傾けることを忘れ、目の前の小さな画面ばかり見ていないでしょうか。
音楽×喫茶という文化は日本独自と言われ、私が生まれ育った横浜にも昭和初期から「ジャズ喫茶」が根付いていました。母がレコードを持っていたり、私自身も楽器を習っていたこともあって音楽はとても身近な存在。それなのに、変わりゆく時代の中でいつのまにか“音”に気づかないようになった気がします。
その日の気候や時間帯、お店の雰囲気を汲み取り音のバランスを調整。
「chiba house」がオープンした2020年は、先の見えないコロナ禍に人も街も疲れ果てていました。そうした中でも常に寄り添ってくれたのは音楽だったといいます。
自分たちと同じように、音楽が訪れた人たちの心を照らし、少しでも前向きな気持ちになればと、大切に音と向き合う日々。聴き入るのではなく、自然に身を委ね、感じるがままに。
カトラリーのこすれる音、本をめくる音、秋の足音。のどかな時間はコーヒーの香りをより濃く浮かび上がらせます。
テーブルに置かれたキャンドルをぼんやり見つめて。
メニューブックを開くと、コーヒー、紅茶に加えアルコールの取り扱いまで。奥様手作りのスイーツにキッシュ。ご主人こだわりのスパイスカレーも提供。一日を通して思い思いに楽しめるラインナップがこれまた魅力的。
さて、今日は何をいただこうかな…
爽やかで涼しげな風が吹いていたこの日にぴったりのケーキがいい。コーヒーはおすすめを聞き、提案していただいたペアリングで。静まり返った外の景色とキャンドルを交互に眺めながらしばし待機。
時間をかけて味わいたい、繊細に溶け合うペアリング(イラストあり)
illustration by まるやまひとみ
今回いただいたのは
●ベイクドチーズケーキ ¥650(税込)
●ブレンドコーヒー ¥650(税込)
オープン当初から作り続けているという「ベイクドチーズケーキ」。喫茶店といえば…から連想してメニューを考えたのだそう。
ネルドリップで淹れる自家焙煎のブレンドコーヒーは、「ミソラ」「バカラック」「ラモナ」の3種類。それぞれ音楽にまつわる名前がついており、そのイメージが味わいに表現されています。
このカップに会うためにコーヒーを注文したくなるほど素敵。
カップやお皿のほとんどは、陶芸家・オノエコウタさんの器を使用。
柔和な色味と質感、光のゆらめきがコントラストを高め、入れたもの、乗せたものに表情をつけます。
ボトムがないのでクリーミーな口溶けを存分に味わえる。
北海道産のクリームチーズや卵など、地元の素材が詰まったシンプルなチーズケーキ。絶妙な焼き加減で内側はレアに似たなめらかさ。焼き目の濃厚さと中のしっとり感を同時に楽しめるなんてとても贅沢。
ほどけた生地からミルクが甘く香り、チーズのさわやかな後味が舌に残ります。コクと酸味の重なりはコーヒーにはもちろん、お酒とのペアリングもおすすめです。
コーヒーの表面からちらりと覗くハシゴがユニーク。
コーヒーは中深煎り「Bacharach(バカラック)」。作曲家・バート・バカラックさんが生んだ色褪せることのない名曲の数々。叙情的なメロディが心に染る彼の楽曲をイメージした、ブラジルベースのブレンドです。
ネルドリップのとろみのあるまろやかさ。グッと引き込まれる深みと、包み込むようなやわらかさが共存する味わい。冷めるにつれ立体感が増していくのをじっくりと堪能したい一杯。
背景に音楽。香りの余韻に浸りながら、またチーズケーキをひと口。
コーヒーは豆での購入も可能です。お気に入りの一曲と一緒におうちでも。
自分と向き合い気づく旅
一音一音に感情が乗った気持ちのいい強弱。
ご主人にお願いし、「ベイクドチーズケーキ」を味わいながら聴いてほしい一曲を選んでいただきました。ピアニストで作曲家の横山起朗さんの「GLASS TOMORROW」より、“water”。潮の満ち引きを思わせるリズムと徐々に重なる音。みずみずしく美しいアンサンブル。頭の中に見えてくる、窓からの隙間風で揺れるカーテンの光景。
控えめながらスッと流れ込んでくる親しみやすい旋律がチーズケーキと調和します。国内外を問わず、個性豊かなアーティストのCDや本を店内にて販売。CDショップでは出会えないような運命の一枚が見つかるかも。
飲み干したあとの哀愁漂うカップに「また会う日まで」と別れを告げて。
都会の喧騒から離れ、デジタル機器から解放された瞬間、ざわついていた心が嘘のように静けさを取り戻す。旅先に安心できる大好きな場所がある喜びを噛み締めながら、夜の街を顔を上げて歩こう。
あなたの中に、忘れ物はありませんか?
音に包まれた空間でコーヒーでも飲みながら、自分の心に耳を澄ませてみてください。
SHOP INFORMATION
| SHOP | chiba house(チバハウス) |
|---|---|
| WEBSITE | https://www.chibahouse.net/ |
| ADDRESS | 北海道札幌市中央区北3西12-2-1 札幌パークマンション1階 |
| TEL | 011-206-8853 |
| OPEN | 【火〜土曜日】12:00〜20:00(L.O. 19:30) 【日曜日】12:00〜18:00(L.O. 17:30) |
| CLOSE | 月曜日、不定休 |
人気の記事
-
【横浜・みなとみらい】限定新作メニューを紹介!「I’m donut?(アイムドーナツ?)横浜臨港パーク」「dacō(ダコー)横浜臨港パーク」横浜ティンバーワーフに同時オープン!
CAKE.TOKYO編集部
-
【東京・自由が丘】生ドーナツ専門店「I’m donut?(アイムドーナツ)」とベーカリーカフェ「dacō(ダコー)」が2025年8月30日ダブルオープン!
CAKE.TOKYO編集部
-
【2025年】駅ナカで手に入る!JR品川駅でおすすめのお土産5選!話題のスイーツをチェック
CAKE.TOKYO編集部
-
【渋谷・宮益坂】10月11日オープン!「I’m donut?宮益坂(アイムドーナツ?)」&平子シェフの新ブランド「Neo Nice Burger(ネオナイスバーガー)」が誕生
CAKE.TOKYO編集部
-
【東京・渋谷】「I’m donut?(アイムドーナツ)」のグルテンフリー専門店が誕生!米粉×生ドーナツの新体験を
CAKE.TOKYO編集部
おすすめ記事
-
【ひとくちのふうけい】山里で輝く、ひとくちの恵み──檜原村の「生はちみつ」
CAKE.TOKYO編集部
-
【京都・お取り寄せ】発酵バター香る和洋折衷もなか「果朋-KAHOU-」の「燦樂-sala-」
CAKE.TOKYO編集部
-
【お取り寄せ】空港で発見!ANAフーズの新食感スイーツ「フルーツを食べるチョコレート」
創り手を訪ねる取材ライター
Yui Ichihara
-
【お取り寄せ】おいしく食べれば、やさしさが広がる。京都「GOOD CACAO(グッドカカオ)」のおやつ
CAKE.TOKYO編集部
-
【お取り寄せ】栗農家とともに作る、愛媛「城川オリジナルモンブラン」のストーリー
CAKE.TOKYO編集部



