皆さん、「カヌレ」を食べたことはありますか?

マドレーヌやブラウニーのような慣れ親しんだお菓子ではないものの、口にするとカリッとした食感としっとりした舌触りが類を見ないお菓子……。

私がカヌレに魅了されたのは、ここ数年前の出来事。ケーキ屋の片隅にひっそりと佇む黒いとんがり帽子のような姿の焼き菓子を見つけ、興味本位で購入したのがきっかけです。

一口食べたとき、味わったことのないようなしっとりとした甘さと食感に、とても感動したことを覚えています。

最近ふと「カヌレが食べたい」と思い、東京にあるお菓子屋を探していて見つけたのがカヌレ専門店「ル・カナール -Le Canard-」でした。吉祥寺か三鷹駅から深大寺方面のバスに乗ること約15分。出迎えてくださったのは笑顔の素敵な店主、中谷優子さんです。レポートは、丹野がお送りします。

lecanard_01

「ル・カナール」のおいしいカヌレ

ル・カナールの営業日は、金土の週2日間。その他の曜日は、予約制で店舗を開けているそうです。

lecanard_02

ル・カナールで取り扱うカヌレはバニラ、ショコラ、抹茶、アールグレイ、ミルク、シナモン、珈琲の中から、5~6種類を販売しています。

店頭価格は各種120円(税込)と、お手頃なのも嬉しいポイント。(通信販売ではバニラ、ショコラ、ミルク、抹茶の4種類。価格は梱包料金が上乗せになります。)

本日のラインナップはバニラ、抹茶、ショコラ、ミルク、アールグレイの5種類。フランスではバニラが主流のため、ミルクやアールグレイは本場では見かけない珍しい味。特に抹茶は日本ならではの味ですよね。

lecanard_03

左から、抹茶、ミルク、ショコラ、アールグレイ、バニラ

食べるときも縦から噛んでしまうと硬いので、焼き色が薄くて崩しやすい真ん中辺りのところを横にして、上から噛むのがおすすめの食べ方。

早速、バニラを一口……。思った以上に硬い!

lecanard_04

表面は今まで食べたことのあるカヌレに比べてカリッと感が強く、しっかりとした食感のある生地。中のしっとりした部分は滑らかな舌触りです。

一口でバニラの風味がしっかりと感じられる上品な甘さと、二口で食べられてしまうサイズ感。もう一個ペロリと食べられてしまうほどのおいしさでした。

味や食感の満足感が高く、小ぶりなサイズは他に類を見ないからこそ今までの印象をガラッと変えてくれるル・カナールのカヌレ。甘いお菓子が苦手な人でも挑戦しやすく、また食べたいと思わせてくれます。

lecanard_05

そんなカヌレをつくっている、店主の中谷さんにお話をお聞きしました。

カリカリ部分がおいしい、ル・カナールの特製カヌレ

中谷カヌレの皮の厚さは、小さく焼いても大きく焼いてもそんなに変わりはなく、中の分量だけが変わってきます。私は、小さく焼いた方がカリカリ部分が多くて、皮と中身が1:1のようなバランスで食べるのがいいかなと思っています。

lecanard_06

中谷さんのつくるカヌレは小ぶりでコロンとした見た目がとても可愛らしく、触るとパリッと硬い表面をしているのが特徴的。

中谷食べた方からはよく「硬い」と言われます(笑)。カヌレを、ういろうのようなネチャッとしたお菓子と思っている方もいて。真逆にある硬くてしっとりしているカヌレを食べて「こんなカヌレもあったんだ!」と驚いてくださる方もいますね。私も、こういう硬いカヌレの方が好きなんです。

lecanard_07

中谷カヌレは長時間火を通しているため、保存食や栄養源として息が長いお菓子です。ただ、表面はパリッと、中はしっとりとした状態の日持ちは2日だと思っています。夏だったら1日かな。

数日経つとパリパリとした表面が湿気ってしまうので、これは「私の思うおいしいカヌレ」ではないなと感じていて。日持ちの期間を短く設定しているからこそ、お客さまに「他とは違う」と言ってもらえるのだと思います。

店主中谷さんがカヌレに出会ったきっかけ

中谷さんがカヌレに出会ったのは、フランスのボルドーへ語学留学に行ったことがきっかけでした。

中谷ボルドーには2年半ほどいたのですが、最初は語学を上達させたいという狙いで留学しました。しかし、あまり上達しなかったんです。刻々と日本に帰国しなければいけない時期が近づき、かけがえのない時間を過ごしたボルドーと結びつくものを探す中で、銘菓でもあるカヌレをはじめようと考えました。

lecanard_08

カヌレをつくりはじめたのは、日本に帰国してからだっただそう。

中谷カヌレのお店をはじめようと考え、老舗の金物屋さんに型を数十個買いに行きました。そのときに「レシピも入れておくわ」とお店の方がカヌレのレシピが印刷された紙片を入れてくださったんです。

帰国後、日本でもカヌレのレシピを探しながらいくつか試作しました。ですが、食べてみるとボルドーで頂いたレシピはいわゆるカヌレの味をしているようで、していない。そのレシピが私にとって一番好きな味で、ご縁も感じました。後から分かったのですが、頂いたレシピはボルドー市の隣街にあるカヌレが美味しいと評判のお店のレシピだったようです。

カウンターには、当時購入してきた型がいくつか並べられています。現在販売しているカヌレは違う型でつくられていますが、以前はこの型を使用してカヌレをつくっていたそう。

lecanard_09

ふと食べたくなる、フランス銘菓カヌレ

中谷カヌレってショートケーキやシュークリームのような需要があるわけではないと思っています。「ちょっと久しぶりに食べてみようかな」というお菓子の立ち位置だと思うので、毎日コンスタントに売っていくのは難しいかなと思っていて。

そんなル・カナールは店舗営業だけでなく、通信販売も人気。購入されるお客さまは関東だけでなく、北海道から沖縄と幅広くいらっしゃるそうです。

中谷珍しいお菓子だからこそ、自分の身の回りに売っていないと言う方も多いです。カヌレを食べたいと思ったときに似たお菓子を探しても存在しないので、カヌレを探すしかないんですよね。そうすると北海道から沖縄の方まで、日本中にいるカヌレ難民(笑)の方が見つけてくださいます。

lecanard_10

中谷3年周期にこの店のカヌレを食べたくなると言ってくださる面白いお客さまがいて、本当に3年ごとに来てくださるんです。「また食べたいな」と繰り返し思ってくださる方が増えていけば、私もずっと続けていけるのかなと思っています。

「ル・カナール」の名前の由来

[split-content]

「Le Canard」というお店の名前は、フランスにいたときから決めていたそう。

中谷Le Canardは日本語で「鴨」という意味なんです。フランスでは自分の大事な恋人や子供を、兎やヒヨコちゃんと呼ぶ習慣があります。そんな愛称の一つに「鴨ちゃん」も実はあるんです。

小さくて可愛らしく愛しいものにつける愛称だからこそ、カヌレも小さくて愛らしいものと思い付けました。他にも理由はあって、ボルドーにいたときに鴨料理をよく食べる地方で鴨が好きになったことと、あとは、単純に鴨が可愛いというのもあります。

ホームページに使用されている鴨のイラストも、フランスの友人に書いてもらったものなのだそう。カヌレへの愛情が感じられる店名ですよね!

lecanard_11

カヌレはフランスボルドーの嗜好品だからこそ、硬さや甘さが店によって大きく異なるのも魅力の一つ。

中谷ボルドーは街中どこにいってもカヌレは置いていて、よく注文していました。焼き加減が大いに関係するお菓子だと思っていて、本場ではうっすらしか焼かないお店もあれば、しっかり焼いているお店もありそれぞれお店や人の個性が出ます。カヌレのサイズも色々取り揃えられていて、一番スタンダードなサイズが私のお店のカヌレより2回りくらい大きいものです。

ただ大きいサイズだと中のしっとりもちもちした部分が多くて、そんなに好きではなかったんです。むしろ硬い皮の方が好きで、小さいサイズに出会ったこともカヌレをつくろうと思えるようになったきっかけでした。

中谷さんのつくるカヌレは、スタンダードなカヌレの型と比べるとかなり小ぶりな印象。サイズによって硬さやしっとり感が違ってくることも驚きです。

lecanard_12

食べた人の舌をじわじわと虜にするカヌレ

「お店ではつくることに専念して、また来てくださるお客さまをお待ちするのが身の丈にあってると思う」

そう話す中谷さんは、おいしいと言ってくださるお客さまを誰よりも大事にし続ける愛情深い方なのだと強く感じました。

lecanard_13

今後はラインナップを少しずつ増やしていきたいと考えているそうです。主張が強過ぎないけれど、食べた人の舌を虜にするカヌレ。

家から少し離れていても、わざわざ足を伸ばして買いに行きたくなるカヌレが深大寺にはありました。これからあたたかくなる季節、合わせて近くの神代植物公園に行くのも良さそうです。

SHOP INFOMATION

NAME ル・カナール -Le Canard-
URL http://le-canard.biz
ADDRESS 東京都調布市深大寺東町4丁目17-15
TEL 080-6673-5721
OPEN 金曜日&土曜日 : 10:30~18:00 日曜日~木曜日 : 完全予約制にて店頭お受渡しのご予約を承ります
CLOSE 日曜~木曜の間で週1回程度の不定休

※他、臨時休業する場合があります