こんにちは。和菓子女子、せせなおこ(@s_nao25)です。

福岡出身の私は、小さい頃から大好きなお店があります。明治38年の創業当時から博多で愛されてきた「石村萬盛堂(いしむらまんせいどう)」です。私が和菓子を好きになるきっかけのお店のひとつ。家族や友達とよく買いに行ったものです。

今回はそんなたくさんの思い出が詰まった、石村萬盛堂を紹介します。

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本店の暖簾をくぐるとぴしっとした気持ちになります

今回お話を伺ったのは、常務の石村慎悟さん。石村萬盛堂に対する強い思いを語ってくださいました。

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石村萬盛堂の歴史から教えてください。

石村石村萬盛堂は私の曽祖父である善太郎により、1905年に創業しました。もともと彼は、神社やお寺をつくる宮寺大工の家系でした。しかし、体が弱く、大工の仕事はできない、その代わりに“神仏にお供えするにふさわしい何か”を探し、お菓子にたどり着いたそうです。

そして、善太郎のおじが和菓子屋を営んでいたこともあり、おじに弟子入りし、28歳の時に暖簾分けして、「石村萬盛堂」がスタートしました。万代にわたって栄えていきますように、という意味を込めて「萬盛堂」という名前がつけられました。

もったいないという精神からできた「鶴乃子」

ふわっふわのマシュマロに濃厚な黄身餡。石村萬盛堂の代表銘菓、鶴乃子についてお伺いしました。

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鶴乃子の誕生について教えてください。

石村もともと福岡には「鶏卵素麺」というお菓子があります。鶏卵素麺は、16世紀頃に南蛮文化とともに長崎を経て博多に伝わり、日本三大銘菓のひとつとされる歴史あるお菓子です。鶏卵を素麺のように仕上げたお菓子です。

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鶏卵素麺1箱 1080円(税込)

石村明治時代、福岡では多くのお菓子屋さんでカステラ、カスドース、鶏卵素麺など、南蛮から伝わったお菓子がつくられていました。鶏卵素麺をつくる過程で卵白がとにかく余る。もったいないから、なんとか使えないかと、試行錯誤をしていたときに、まず最初に「淡雪」をつくったそうなんです。( ※淡雪:卵白を泡立て、寒天で固めたお菓子)

それだけに満足しきれず、淡雪を卵の殻に流し込んで黄身餡を入れたのが鶴乃子の原型だと言われています。その後、海外からゼラチンが輸入できるようになり、一般に知られるマシュマロが完成。

明確には分かっていないのですが、大正時代からはすでに鶴乃子は売られています。約100年間、レシピはほとんど変わっていないんです。

「福岡」と「鶴」の、実は密接な関係

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「鶴乃子」という名前の由来を教えてください。

石村福岡と鶴は実は密接な関係があります。福岡県を上空から眺めると、鶴の形をしていているんです。そして福岡城も鶴が羽ばたく姿に似ていることから、「舞鶴城」とも呼ばれていました。鶴乃子は福岡にちなんだ鶴をモチーフにしたと聞いています。

「うちの鶴は飛ばんとばい!(うちの鶴は飛ばないんだよ)」が、先代の口癖だったそう。というのも、鶴は幸せの象徴と言われているからなんです。鶴が飛んだら幸せが逃げる、だから、パッケージには鶴が卵を抱えている状態(=巣篭もり)を表現しています。そして、ふたを開けると卵が出てくる、というストーリー仕立てになっています。

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鶴乃子 7個入り 820円(税込)

鶴乃子は天皇陛下にも献上されているとか。

石村はい。陛下にお出しする献上鶴乃子は、全て手づくりです。昔ながらの製法で、木型でつくります。サイズは少し大ぶりで、ほくっとした手練りの黄身あんが入っています。献上品はすごく気を使うのですが、非常にありがたいこと。そして、自分たちのお菓子に対する自信にもつながるきっかけとなっています。

20周年を迎える、元祖塩豆大福

私、塩豆大福が小さい頃から大好きです…!塩豆大福のこだわりについて教えてください。

石村塩豆大福はちょうど20年前にできました。当時は、私の母が商品開発をしていたんです。たまたま京都に行くことがあって、草餅や団子など朝生菓子をよく見かけたそう。

特に豆大福が京都で人気を集めている様子を見たときに、福岡はなぜ豆大福が流行らないのかを考えていたそうです。

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塩豆大福 1個 126円(税込)

石村そこで、豆に塩をまぶしてつくってみようと試したところ、タイミングよく塩ブームが訪れて、大人気に。塩は長崎の五島のものを使い、材料も全て国産にこだわっています。形も少し変わっていて、平べったい形。昔から、通常のまるい大福をつくった後にわざわざ平たくするんです。全国でもあまりない形で珍しがられますね。

あまり知られていないのですが、実は石村萬盛堂は塩豆大福の元祖なんです。今年で20周年を迎え、節目の年なので、もう少し知っていただけたらな、と思っています。

地元に愛される、地域の“場所”

本店はとても高級感漂う雰囲気。一方、石村萬盛堂は和菓子・洋菓子どちらも楽しめる和洋併売の店舗「いしむら」を九州に展開しています。

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「いしむら」は、小さい頃からよく利用しています。気軽に足を運べてとても楽しい雰囲気ですよね。

石村ありがとうございます。約20年前に初めて和洋菓子、どちらも買える店舗として、「いしむら」ができました。

当時は、コンビニもお菓子のチェーン店もない時代。本店の少し敷居の高い雰囲気ではなく、普段着でギフトが買えると同時に、今日食べるおやつが買えるお店を地域につくりたいと社長が言ったんです。

和菓子も洋菓子もデパートにいかなくても買える、というコンセプトで、店内に無料でコーヒーが飲めるコーナーをつくったり、お饅頭1個からでもゆっくりできる空間をつくりました。

現在はマンスリーイベントとして、お菓子に限らず、福岡のお祭りや伝統文化の紹介など、様々な教室を開催しています。イベント開催後、若いお母さんが小さい子を連れてきて、「こういう場所があるとありがたいです!」と話してくださった言葉を聞いたとき、かっこつけたことはいくらでもできるけど石村萬盛堂の役目はそこではないと気付かされましたね。

その瞬間瞬間に寄り添い、大切にお菓子を扱う

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外観は創業当時を再現

今年で111周年。これからの目標はなんでしょう。

石村創業してから、ひとつのことをやるというよりは時代に合わせていろんなことを仕掛けてきました。伝統と革新と言うと大げさですが、時代、時代に合わせてやりかたを変えてきたというのをお客さまにご愛好いただけているのかなと思います。

お客さまは日々いろんなお菓子に注目していて、地元のお菓子屋として、お客さんまどう選んでいただけるかといつも考えます。商品も、接客も、自分の手から商品が離れるその瞬間まで、大切にお菓子を扱うという気持ちは大事にしたいですね。

これからも地に足のついた日々の菓子を大切にしながら、特別な日にも使っていただく。創業当時からずっと変わらないものなのでそこは譲らず、守っていきたいと思います。

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小さい頃から大好きなお店の歴史やいろんな思いを改めて知り、すごく感慨深くなりました。これからも福岡を守り、おいしく、そして、たのしいお菓子屋さんであってほしいなと思います。

石村さん、ありがとうございました!

SHOP INFOMATION

NAME 石村萬盛堂
URL http://www.ishimura.co.jp/shoplist/
ADDRESS 福岡市博多区須崎町2-1
TEL 092-291-1592
OPEN 9:00〜19:00
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