『CAKE.TOKYO』を読まれる方なら、きっと大好きなカフェのお気に入りメニューがあるかと思います。

私にとってそれは「東向島珈琲店」の「レアチーズケーキ」。何度食べても飽きることがない、コーヒーにぴったりの逸品です。今日はそんなとっておきのお店とスイーツを紹介します。

「ヒガムコ」の「レアチーズケーキ」

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「東向島珈琲店」は墨田区・東向島地域にあるカフェ。通称「ヒガムコ」。墨田区で生まれ育ったマスターの井奈波 康貴(いなばやすたか)さんが2006年にオープンしたお店です。

「ヒガムコ」で10年以上看板メニューとして愛されているのが、「レアチーズケーキ」です。真っ白でまんまるの「レアチーズケーキ」には、果肉感たっぷりのソースがトッピングされ、レアチーズの甘さにソースの酸味が相性抜群。

ソースは定番のラズベリーとブルーベリーに加えて、季節のソースがあることも。取材時にはゴールデンキウイのソースが登場していました。

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こちらはブルーベリーソース。注文がはいってから、厨房で完成させていきます

創業当時は半年ほどスイーツメニューがありませんでしたが、「デザートはないの?」という声に応える形で、初めて提供したのが「レアチーズケーキ」でした。

「コーヒーに合う喫茶店のスイーツといえばチーズケーキ。ほんわかとした気持ちになってもらえるのはレアチーズケーキだろう!」と「レアチーズケーキ」の提供を決めたそうです。ちなみに今の形にしたのは「レアチーズケーキはタルトの上の柔らかい部分のみを思いっきり食べたかったから」。取材に同行したスタッフとともに「分かる!」とうなずいてしまいました。

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東向島珈琲店のマスター、井奈波さん

「大きくこだわっているのは、手作りであることです。そして、レアチーズケーキにはメディアとしての可能性を感じています」。

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レアチーズケーキは小さなメディア

実は「東向島珈琲店」以外にも「レアチーズケーキ」が食べられる場所があります。現在、石川県・能登半島にあるホテル、墨田区にある観光協会内、台湾にあるカフェ、冬になれば群馬県にあるスキー場でも提供しているそう!

「昨年から始めたのは石川県の能登半島との取り組みです。能登でオープンしたホテルでカフェタイムの来店数が少ないことが課題となり、共通の知り合いの紹介で『ヒガムコ』の『レアチーズケーキ』がいいんじゃないかという話になって提供することになりました。おかげさまでお客さまがたくさん来たそうで、喜んでくれました」。

逆に東向島珈琲店では、能登の特産品であるナツハゼ(ブルーベリーの仲間)やサルナシ(キウイの原種といわれる果実)といった珍しいフルーツを『レアチーズケーキ』のソースにして、能登の魅力を伝えています。

「石川県の特産ってたくさんあるんですよ。それをソースにして『石川県でとれたものなんですよ』と伝える。ナツハゼなんて東京の人は食べたことがないし、石川県にはそういうものがまだまだいっぱいあるんですよね」。

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ノドグロや蟹といったものに比べて、少量生産の特産品はなかなか地域外にまで魅力を伝えきれていない、と井奈波さんは続けます。

「収穫量が少ないけれどきらりと光るものもあって、そういうのは当店とマッチしているんです。流通できるほどの量がなくて地域で消費されるものでも、個人的な付き合いで分けてもらえる。『何それ?』というところから、『石川県に行ってみたい』『興味が湧いた』と思ってもらえたら。四季を通じてとれるものが違うし、中長期的に関わって伝え続けたいです」。

また、台湾・台北にある「富錦樹咖啡店(Fujin Tree Cafe)」では、「東向島珈琲店」の「レアチーズケーキ」をマンゴーなどのソースを添えて提供し、現地オリジナルの味を楽しむことができます。

台湾で「東向島珈琲店」を知った人が、日本を訪れる際にの「東向島珈琲店」に立ち寄るということもあるそうです。

「『レアチーズケーキ』が小さいメディア、ツールとして会話のきっかけをつくり、お互いに『行ってみたい』と通じあえたらいいですね」。

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最大限の「おいしい」を目指して

はじめは「レアチーズケーキ」がこんな風に広がっていくとは思っていなかったという井奈波さん。

「お客さまがおいしいと言ってくれるようになって、その声が大きくなってきたから店の代表選手にして、それをツールとしてもっと喜んでもらおうと思ってやってきました。ソースで生産者さんのことを東京で伝えることは自分でやっていて心地よいことだし、お客さんも喜んでくれるのでこれからも続けたいことのひとつです」。

生産量が増えたり、スタッフが増えたり、他所への配達が始まったりするのに合わせて、ちょっとずつレシピは変わってきたそうです。

「最近になって『よくできるようになってきた』と思えるようになってきました。最大限の「おいしい」を頂きたいのでこれからも追求します」。

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前日16時までの予約でテイクアウトも可能。カップはただのゴミにならないように、その後もコップとして使えるガラス製

前日16時までの予約でテイクアウトも可能。カップはただのゴミにならないように、その後もコップとして使えるガラス製

コーヒーとチーズケーキって幸せ

「喫茶店でコーヒーを飲んでチーズケーキを食べるって幸せじゃないですか?」と笑う井奈波さんが指針にしているのは、「喜んでもらうこと」です。

「喜んでもらうことが一番大事。何事もそれを踏み外したくないんです。『時間・空間・仲間が当店を通じてよくなっていきますように』というのがお店をやる上での思いなので、それを初心として忘れないようにしたい。今の自分が完璧だとは思ってないし、スタッフに対しても自分の言うことが絶対だとは思ってなくて。厳格なルールやルーティンに頼って縛られるのではなく、喜んでもらうことを指針に考え続けてまだまだ成長していきたいです」。

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入口の看板にも書いてる『時間・空間・仲間』。井奈波さんが読んだ本に影響を受けたそう

マスターが迎えてくれる居心地のよい店内に、いつものコーヒーと『レアチーズケーキ』。とてもシンプルな組み合わせだけど、いつ行っても新しい人やものに出会えるのは、マスターや『レアチーズケーキ』が「間」に入ってくれているからのようです。これからも、ワクワクした気持ちでお店を訪れたいなと思いました。

「レアチーズケーキ」を食べに、マスターに会いに、ぜひ「東向島珈琲店」を訪れてみてください。

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SHOP INFOMATION

NAME 東向島珈琲店
URL https://www.facebook.com/higamuko/?locale=ja_JP
ADDRESS 東京都墨田区東向島1-34-7
TEL 03-3612-4178
OPEN 平 日 8:30〜19:00(L.O.18:30) 土日祝日 8:30〜18:00(L.O.17:30)
CLOSE 水曜日、第2・4火曜日

※他、臨時休業する場合があります