2両編成の世田谷線に乗って、降りたのは松原駅。新宿駅から20分ほどの場所とは思えない、空が広い住宅街です。

今回お邪魔したのは松原駅からすぐ、線路に沿って歩いたところにあるお菓子屋さん『aminchi』。お店のメニューはその季節の旬のフルーツを使ってどんどん変わっていきます。

お店に着くと、店長のあみさんが迎えてくれました。

「この子といっしょのインタビューでもいいですか?」

あみさんの背中には小さな赤ちゃん。この日はお子さんといっしょにお話を伺いました。

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18歳からの夢、お菓子を続けるために選んだ道

お菓子屋さんになろうと思ったのはいつごろですか?

あみ高校のときです。地元の宮城の進学校に通っていたんですが、先生に「いい加減進路を決めろ」と迫られて……そっかあ決めなきゃいけないのかあ、と。昔から好きなことを仕事にしたいなあと思っていたんです。そのとき「お菓子の専門学校行く」そして「将来は自分のお店やろう」と決めて進学をして今に至ります。

専門学校は東京だったんですか?

あみいえ、大阪の辻製菓専門学校です。18歳のわたしが知っていた学校が辻製菓だったのと、学校がアルバイト先を紹介してくれて寮に住みながら学校に通える、という理由です。親に学費や生活費の負担をかけずに、学べる環境があったので辻製菓に行きました。

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じゃあもうそれからずっとお菓子の世界に。

あみはい。「これをやる」と決めたらのめり込むタイプなんですよね。卒業後、地元のお菓子屋さんで働きながら貯金して、8ヶ月くらい経ってから上京しました。

上京後、どこかのお店に就職されましたか?

あみ最初は清澄白河のお菓子屋さんでした。それからレストラン、焼き菓子屋さん、いろんなお店で経験を積みましたよ。

お店をオープンするぞ、という思いの強さが伺えます。

あみ18歳の頃、漠然と抱いていた「25歳までにお店をやりたい」という目標に囚われていましたね。

それに、色々なお店で働くなかで、女性の先輩が結婚や出産のタイミングに辞めていくのを見て「お菓子の世界で長く働くには、自分でお店をやらないと」という気持ちが強くなりました。

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ご自身のお店「aminchi」をオープンしたのはいつ、どんなタイミングでしたか?

あみaminchiをオープンしたのは27歳になる年でした。予定より少し遅れてしまいましたが、資金面や独立できると自信を持てたタイミングだったんです。

物件に一目惚れ。シンプルな内装の秘密

松原でお店を開こうと思ったのは、どうしてですか?

あみ主要な街からアクセスがいい場所を探していて、最初は渋谷や新宿付近のエリアを見ていました。だけど、もともとお花屋さんだったこの物件に一目惚れしちゃって即決したんです。実は世田谷線エリアに詳しくなくて、松原でお店やっていけるのかなぁ……と、契約してから不安になったこともありました。

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あみわたし、あじさいが好きなんです。ちょうどこの物件に出会った季節が梅雨の時季で、お店の前にきれいにあじさいが咲く景色も気に入って、「絶対ここにしよう!」と運命を感じました。

お店の内装はシンプルでいて、雰囲気があって素敵です。

あみ20代中盤の全然お金がないときにつくったお店なので、シンプルにしかできなかったのもあります。施工ができる知り合いに相談したり、自分たちで白いペンキを塗ったり、できることをやったお店です。

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あみ窓やカウンターのテーブル、飾り棚もお花屋さん時代のまま残しています。窓ガラスは手漉きで職人さんがつくったものだから、割れてしまったら同じガラスは手に入らないとお花屋さんが教えてくれました。

お菓子への強い思いがあるからこそぶれない、シンプルな中にしっかり世界観のあるお店になってるんですね。

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お店に飾られたドライフラワー。世田谷線沿いには、雨の季節あじさいがたくさん咲きます。

旬のフルーツをたっぷり使ったスイーツ

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フルーツの旬に合わせてメニューを変わっていくことは始めから決めていたんですか?

あみその場でしか食べられない、持って帰ったら崩れそうなくらいにフルーツを乗せたデザートをつくりたいと考えていました。

メニューはどんなふうに決めているんですか?

あみ頭の中でイメージしたものを再現するようにつくっています。何が食べたいかなとか、こういうのがあったらいいなっていうのを試作して、軌道修正して。

2月の『ガトーフレーズ』はどんなイメージでつくったんでしょう。

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「ガトーフレーズ」はフランス語で「いちごのケーキ」の意味。

あみ赤と白の色が際立つ一皿にしたかったんです。スポンジもいちごのパウダーを入れてピンク色にしています。あえてスポンジにいちごは挟まず、いちごが絡んだソースといっしょに食べることでショートケーキが完成するようにつくりました。隣のクリームチーズアイスとソースの酸味で見た目よりさっぱり食べてもらえると思います。

口の中でショートケーキになるって楽しいですね! フルーツの品種や産地によってメニューが変わることもあるんですか?

あみこの時期は基本的にあまおうを使っています。でも特別強いこだわりはないんです。そのとき一番おいしくて、良心価格になる素材を使うようにしています。

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チョコとベリーのタルト。ごろごろのベリーの奥に、チョコレートのムースが隠れています。

続けるために、変わること

焼き菓子もあみさんがすべてメニューをつくっているんですか?

あみ基本のレシピはわたしがつくっていて、そこに何を入れるかは、スタッフにアレンジしてもらっています。パウンドに黒豆を入れたり、マフィンにいちごを入れたり、日によって色々なアイデアが出てくるから、わたしが一番楽しみにしているんですよ。

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むちむちの黒豆が入った、食べごたえのある黒豆のパウンドケーキ。
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さわやかな酸味としっとりな甘みがベストマッチのいちごとホワイトチョコのマフィン。焼き菓子はテイクアウトできます。

最近はスタッフの方に任せることも増えたのですか?

あみそうですね。でも最初は「細々とひとりで続けていけたら」とお店を開いたんです。わたし人と働くのが苦手で、こだわりが強いからひとりで全部やってしまったほうが楽だと思っていたんですけど……お店を続けていくにはやっぱり人の手が必要なんだなって感じたんです。

スタッフさんとといっしょに働くきっかけがあったんですか?

あみ妊娠や出産、膝を悪くしたりして一時はお店を閉めようか悩んでいて。そんなときに出会ったスタッフたちにすごく助けられました。今は彼女たちを信じて、任せて、本当に良かったと思いますし、頭が上がりません。

進路も仲間も、必要に迫られたときの決断がすごくいい方向に進んでいるんですね。

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憧れは、なくてはならない存在

「お店を開く」という強い思いを叶えて、今思うことは?

あみ今度は長く続けたいですね。世田谷線の松陰神社前には「café Lotta」というお店があって、今年でオープンして18年になるそうです。松陰神社前になくてはならないお店なんですよね。店主の桜井かおりさんも、お話ししたりお店に言ったり来ていただくこともあるんですけど、憧れです。ああいうふうに長く続けたいですよね。

18年となると、街とイコールで結ばれるようなお店ですよね。

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あみaminchiはもうすぐ5年を迎えます。あがいているうちに5年も経っちゃって。もっとおいしくしたい、レシピを突き詰めたい、もっと新しいメニューも出したいなと思っています。

お子さんがもう少し大きくなって、時間が取れるようになってから?

あみそうですね。この子を背負いながら無理してお店に立った時期もあったんです。でもやっぱり集中できなくて結果にもつながらない。なので落ち着いたらしっかり取り組みたいと思っています。

柔らかい雰囲気の中にある、あみさんのストイックさを感じます。これからのaminchiさんのデザートも楽しみです。

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取材後、お店の営業が始まると8席のお店はすぐに満席になりました。店内にはデザートを楽しみにしているわくわくとした高揚感がふわりと漂っているのを感じます。

「ていねいにつくりたい、誠実でありたいと思ってつくっているので、ごまかしがないお菓子でありたいとは思いますね。伝わっていたらいいな」

あみさんは少しはにかみながら、まっすぐな笑顔でお菓子のことをそんなふうに話します。ライフステージも季節も移ろう中、変わらない強い思いがあみさんにはあるんだと感じました。

2019/03/05追記→3月にはいちごのパフェが登場です!

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以下の商品リストはすべて季節によりメニュー・値段が変わります。(2019年2月26日時点の商品リスト)

商品リスト
ガトーフレーズ
800円
チョコとベリーのタルト
886円
黒豆パウンドケーキ
360円
いちごとホワイトチョコのマフィン
350円