ソフトクリームの原材料は、牛乳、アガベシロップ、それだけ

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「なかほら牧場」のソフトクリームを食べられる数少ない実店舗が、池袋の東武百貨店地下にあります。「もともと牛乳は苦手だったんですが、入社してから大好きになりました」と話してくれたのは、入社して1年半の渡辺典子さん。

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プレーンな「ソフトクリーム」以外にも、さまざまなアレンジを加えたものや、ヨーグルトといった商品も、お店で食べることができます。

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ひと口食べてみると、意外とあっさりしていることに驚きます。雑味がなく、まるでヨーグルトのように、口当たりはさっぱり。ソフトクリームの色も、真っ白というより、シャーベットのように、少し透明感があります。後味に残るのは、ほのかな甘みとしっかりとしたコク。

渡辺さんも、「いままで食べてきた、どのソフトクリームとも違う」という声を、お客さまからよく聞くそうです。

ソフトクリーム一本に、詰まっているさまざまな想いやストーリー。その秘密について、「なかほら牧場」を運営する「株式会社リンク」代表、岡田元治(おかだがんじ)さんにお話を伺いました。

自然が息づく山奥で。大切なのは、水と草

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岡田元治社長

「ソフトクリーム」をいただきましたが、初めて食べる不思議な味わいでした。ヨーグルトのようにさっぱりとした口当たりで、甘さはそんなに強くない。とにかく濃厚な甘さのソフトクリームを想像していたんです。

岡田余計なものが入っていないから、雑味がないんですよね。甘みも、牛乳本来のものと「アガベシロップ」だけ。「アガベシロップ」はメキシコ原産で、テキーラの原料としても使われています。砂糖の1.4〜1.6倍の甘さを持ち、はちみつよりも甘くて、粘り気も少ない。さまざまな甘味料を試してみて、うちの牛乳には、このシロップがぴったりでした。

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牛乳へのこだわりについても、きかせてください。

岡田爽やかなのにコク深い、自然の牛乳本来の味わいを感じられるこの牛乳は、岩手県の「なかほら牧場」で自由に草を食んでくらす牛から採れるものです。草食、通年昼夜放牧と母乳哺育で、母牛のストレスがほとんどないので、おいしくて健康な牛乳を提供してくれるんです。

また、牛種も、ほとんどが乳脂肪分が高いことで知られるジャージー。低温でじっくり殺菌してあるので、臭みがなく、さらりとした飲み心地。牛乳が苦手な方でも飲みやすい牛乳です。季節によって微妙に味わいが変わるのも特徴ですね。ソフトクリームにも、その味の変化があらわれます。

ソフトクリームのおいしさの秘密は、「なかほら牧場」にありそうですね。どんな牧場なのですか?

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岡田「なかほら牧場」は、なだらかな地形に山林が広がり、野生動物も多く生息する岩手県の北上山系。その、標高700〜850mの窪地に位置しています。「なかほら牧場」の特徴は、3つあります。

まず、水がきれいであること。牛乳の成分の84〜87%は、水分。だから当然、いい牛乳をつくるには、水の良さが大切です。「なかほら牧場」では、山清水を飲むことができます。山の上には、農薬農業も、生活も工場もありませんから。夏はそれをたっぷり飲んで青草を食べるので、さっぱりめの口当たりの牛乳が搾れます。次に大切なのは、草。

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岡田“放牧”ときいて思い浮かべるのは、牛が“牧草”を食んでいる風景でしょう。でも、いまや牧草にも、化学肥料を使うことが多いんです。西アジアを除き、世界で流通している乳業では、ほとんどがそんな“牧草”を使っています。でも“反芻動物”として高度に完成された牛の消化吸収システムにとって必要なのは、化学成分の入っていないきれいな土と水で育つ貧栄養の野草。彼らは、それを反芻で発酵させ、第1胃のなかにいる微生物を増やして繊維と一緒に取り込むのです。その仕組みを無視して、トウモロコシや化学肥料で育てた牧草を食べているのが現状です。

「なかほら牧場」がおこなっている、”山地(やまち)酪農”は、牛たちは一年を通して山で自由に過ごし、太陽と月、雨と土中のバクテリアの力だけで育つ、野シバや野草や木の葉を食べてくらします。皮肉なことに、酪農の歴史の浅い日本の山奥に、本来の酪農の一形態が残っているということなのです。

飼料の理想を追求すると乳量が減り、どうしても値段が高くなってしまうのですが、買ってくれる人たちのことを考えると、やはり体にいいものを届けたい。そういう考えでいるんです。

100%自然由来の水と草で、本来の姿ですくすくと育てられた牛の牛乳からつくられた「ソフトクリーム」なんですね。

岡田そうですね。そして、健康な牛を育てるために大切な要素の3つ目は、”本来行動”つまり、動物が本能のままに活動できる環境の維持です。広い山に一年中、昼夜放牧しており、食事、睡眠、排泄はもちろん、交配、分娩、哺育も牛まかせにしているため、ストレスフリーなんです。山の上り下りで足腰も丈夫になるから、健康そのもの。ほとんど病気にもかかりません。健康な牛から搾った牛乳は、わたしたちの体にとっても、当然悪くないんです。

ぜんぶ牛まかせだと、かえって管理が大変そうですが。

岡田いえいえ。牛は賢い生き物なので、お乳が張れば自分で搾乳小屋にやってきますし、毒のある草は食べない。牛まかせにすることで、酪農家にもメリットが生まれるのです。

牛舎もないのでしょうか?

岡田ありません。搾乳小屋があるだけ。搾乳を終えると、夕方には群れで山に帰っていきます。親子が連れ添って山に戻っていく様子は、ほかの牧場ではまず見られない光景です。

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本当にすばらしい環境が、「なかほら牧場」には広がっているんですね。

岡田自分が死ぬまでに、牧場をなんとか軌道に乗せないといけない。この素晴らしい牧場を、次につなげることが、わたしの役目です。おいしいだけじゃなく、健康的で倫理的でもある「ソフトクリーム」は、牛がしあわせに暮らせる山から届きます。「なかほら牧場」に広がる大自然を感じながら、味わってみてください。

■ 商品リスト

「ソフトクリーム」501円(レギュラーサイズ)

■ 教えてくれた人

岡田元治さん
「株式会社リンク」代表取締役社長。朝はレモンを絞ったオリーブオイル、昼は完全無農薬の玄米おむすび一個、と、夜のお酒にそなえて空腹に耐える食生活をおくる。

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(写真一部店舗提供)