エッグタルトという言葉。なんとダイレクトにおいしそうであることか。卵がたっぷりのフィリングで、サクサクタルトで。……と脳内では最高においしいエッグタルトが完成していて、店頭にあるとだいたい手が伸びる。
しかし、残念ながら東京でエッグタルトを食べると「あれっ? なんか違う」。頭の中のエッグタルトがおいしそうすぎてハードル上げちゃってる!? 卵のフィリングがトロトロすぎたり、タルトがあまり焼けてないサブレ生地だったりと残念ポイント多出なのだ。
さすがに年を重ね、エッグタルトを前にしても冷静になれるようになってきた。「エッグタルトはなんでもおいしいわけじゃない」とキモに命じつつ食べたのが、代々木公園の近くにある「ナタ・デ・クリスチアノ」の「パステル・デ・ナタ」。ポルトガルの味を持ってきました~という謳い文句のエッグタルトだ。
卵のフィリングの部分はおいしいところは結構あるのだ。それでもこちらのフィリングは群を抜いていて、黄身が凝固したプルンという質感がお見事。そして秀逸なのが「タルト」といっていいのか、どちらかというとパイに近いサクサク部分。なんといっても丸いフチがおいしい。丸いまま、バネのようにパカっとはずれるくらい“イキ”がいい。ここはカラリと焼き上がっていて、まさにサクサク。というかサコサコ(この違い、伝わる?)。ほろほろ崩れたりせず、サコッと歯切れがいい。
さらに好きなのが底の部分、フィリングの水分がちょっとしみてるところ。おんなじ生地なんだろうけれど、表情が違う。卵フィリングと一体化したこの底パイが本当に好き。生地が塩っぽくて卵に黄身がたっぷり。その一体感を味わえる。
おすそ分けなどで1個しかないときは、フチを外してサコサコしてみたり、卵のところだけちょびっとかじってみたりするみみっちい私。自分でたくさん買ったときは、1個はそんなふうにみみっちく食べて、次は全体をむしゃむしゃと味わったり。できたてとちょっと置いた場合でも風味が違うから、いくつかは冷蔵庫に入れておいて翌日までなじませたりもする。ああ、エッグタルトがある生活の幸せ!
ポルトガルには行ったことがないけれど、ほんとにこんなにおいしいものがそこかしこに売っているのだろうか。なんだかちょっと怖いくらい。行ってみたいけれど、今はこの代々木のポルトガルで心から満足している。