こんにちは。和菓子女子、せせなおこ(@s_nao25)です。

私は和菓子が大好きで「和菓子女子」と名乗っているのですが、和菓子屋での楽しみは、お店ならではの四季を感じること。

春、夏、秋、冬。それぞれの季節に合わせて変わる店内や商品。お菓子を通じて四季を表現する和菓子屋さんを見ていると、すごくワクワクします。

普段は鹿児島に住んでいるのですが、今回は鹿児島を飛び出して東京へ。

今回訪ねたのは、以前東京観光をしていたとき、たくさん並ぶお菓子に思わず目を奪われ、時間が経つのも忘れてしまったほどのお店。神楽坂駅から徒歩3分の場所にある「神楽坂梅花亭(ばいかてい)」です。

夕方には売り切れてしまう商品も多数あるほど大人気なお店で、話を聞くと、外務省から依頼を受けて、イギリスで和菓子の講演を行ったほど…。神楽坂梅花亭4代目の井上豪さんに、和菓子のこだわりだけでなく、世界から見た和菓子について、いろいろお話をお聞きしました。

baikatei_01
神楽坂梅花亭4代目 井上豪さん

和菓子で季節を感じてほしい

神楽坂梅花亭(以下、梅花亭)の歴史を教えてください。

井上昭和10年に新宿で創業しました。元々は、江戸時代に日本橋で創業した「梅花亭」という暖簾がありまして、当時の職人が後を継ぎ、私の祖父がそこで修行をしました。そこから暖簾分けをした、歴史あるお店です。

baikatei_02

梅花亭というのが、先駆け的なお菓子を発明していたようです。ペリーが来たときにオランダの窯を仕入れて、栗饅頭の原型となる焼き菓子の形をつくったと聞いています。

また、どら焼きの原型をつくったお店でもあります。人口の移り変わりとともに、新宿十二社、池袋、有楽町、13年前に神楽坂にたどり着きました。

baikatei_03
夏にぴったりの「すいか割り」、「金魚鉢」  各460円

季節の和菓子がたくさん並んでいますね。

井上そうですね。今の季節でしたら(※取材時は6月)、水無月や葛桜など喉越しの良いものがオススメです。季節の和菓子を通して、旬のものは体によく作用し、食べると体がすごく楽になる、というのを感じながら食べていただきたいんです。

baikatei_04
夏にぴったりの「すいか割り」、「金魚鉢」  各460円

例えば春のお菓子である草餅と柏餅は似たような素材、形をしているんですが、お餅のつき方を変えて、食感を変えているんです。3月のまだまだ寒い草餅はモチっとした食感。夏に近づく時期の柏餅は歯切れよくプリッとした食感にしています。

季節による体の変化でおいしいと思う食感も変わる。そういった感覚をお客さんに感じ取ってくださいというのは難しいと思うので。なんとなくおいしいではなく、きちんとお伝えすることが、今の時代において大事だと思っています。

素材本来のおいしさを生かす昔からの知恵

直接のお客さまに対するお菓子の説明はもちろん、HPにある説明も丁寧ですね。

井上ありがとうございます。昔からの知恵が伝わればなと思っています。

昔からの知恵、ですか?

井上はい。現代は和菓子に限らず、野菜においても、年中同じ種類が売っています。昔の人は科学的には解明されていなくても、食べると体が涼しくなったり、解毒作用があったりと、そういう知恵を使い、旬を感じながら、和菓子づくりにも取り入れてきました。

だから冷蔵庫がない時代からつくられているものなんかは、冷蔵庫で冷やしてしまうと老化(でんぷんが冷えて硬くなってしまうこと)してしまうんです。

baikatei_05
見た目にも涼しい葛桜。冷蔵庫に入れると硬くなってしまうので気をつけて、と井上さん。

おいしく食べられないだけでなく、人間の体は老化したものを消化できないようになっていて、大量に食べすぎるとお腹を壊してしまうこともあります。微妙に体調を崩す原因になってほしくない、という意味も込めて常温で食べていただくようお伝えしています。

もっと勉強しなくては、と話す井上さん。素材の情報はもちろん、茶道を習ったり、休みの日には郊外に自然をみに行くこともあるそう。元々は美術の勉強をしていたこともあり、自身の五感をフルに使い、調べたことを和菓子に生かすのが楽しいと、生き生きと語ってくださいました。

和菓子文化を世界へ発信

外務省から依頼を受けて、2017年2月にイギリスで和菓子の講演を行った井上さん。在英国日本大使館の一等書記官が梅花亭のお客さまで、日本で一番好きな和菓子屋さんに講演をしてほしいと、井上さんが選ばれたそう。

イギリスでの反応はいかがでしたか?

井上はい、とても反応が良くて、みなさん和菓子に関心を持っていらっしゃいました。今は和食ブームで、和菓子もデザートのひとつとして、とても興味があるんだけど和菓子そのものを見たことがない。熱を使わず、日本から素材を持っていけて、アピール度も高いという理由から、現地では上生菓子を実演しました。みなさん興味津々でしたね。

baikatei_06
イギリスでの生菓子実演の様子

あとは和菓子の歴史や文化についてお話しました。外国の方々はそもそも和菓子ってなんだろう?という疑問を持っていると思い、日本の伝統文化を筋道立てて伝えました。

海外の方は料理に豆を多用するため、甘い豆に抵抗があると聞いたことがあります。あんこに対する反応はいかがでしたか?

baikatei_07
季節の生菓子、「すいか割り」

井上こしあんであれば全く違和感なく食べてらっしゃいました。ただ、豆は食事で食べる甘くないものという固定概念があるため、粒あんだと豆の原型をイメージしてしまうので、形が見えない方がいいのだそうです。

イギリスの方は食への関心が高く、肥満などの問題を気にされる方も多くいらっしゃるんですよね。和菓子は低カロリーで、植物性。「こんな美しい甘いものがあるなんて素晴らしい!ぜひ自分たちでもつくってみたい」とおっしゃっていました。

素材そのものを使うからこそ味わえる旬の味

和菓子というと、どうしても敷居を感じてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。最後に和菓子の楽しみ方を伺いました。

気軽に和菓子を楽しんでもらうための工夫はありますか?

井上工夫していることは、ガラスのショーケースを無くしたことですね。ひとつひとつ包装しなければいけないので手間はかかりますが、お客さまが直接商品に触れられことで1個からでも買いやすいのではないかと考えました。

baikatei_08
旬の完熟レモンを使った爽やかな味わいの「レモン大福」

井上あとは商品の説明をしてあげること。「確か、どこ産の有機レモンを使ってるといってたな」、という情報があるだけで、味わいが変わってくると思っていて。素材の情報が頭にあるとまた一層おいしく感じるものですよね。

和菓子はとても魅力的なもの。いろんな活動を通して啓蒙していきたい、と井上さん。季節や旬を感じる和菓子選びを日常にとりいれてみるのも楽しそうですね。井上さん、どうもありがとうございました!