高温で一気に焼き切る、香り高く、サクサク食感のパイ

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「パステル・デ・ナタ」について教えてください。

佐藤「パステル・デ・ナタ」(以下、エッグタルト)は、ポルトガルの修道院でうまれたお菓子とされています。空港や街中のお菓子屋さんはもちろん、エッグタルト専門店や一番のエッグタルトを決める選手権があるほど、ポルトガルにくらす人々にとって、非常に馴染み深い伝統菓子なんですよ。

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日本でも人気のお菓子ですが、どんな違いがありますか?

佐藤日本で目にしたことがあるものは、ビスケット生地の”マカオ式エッグタルト”だと思います。ポルトガル式のパイ生地のものと比べると、味も食感も、まるで違うことに驚くはずです。

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小ぶりなので何個でも食べられそうです。パイ生地が、サクサクとした食感でかなりしっかりしているので、食べ応えも。バターの香りがしっかりと感じられて、おいしさがにじみ出ています。どのようにして、この食感が生まれるのでしょうか?

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佐藤しっかりしていながらも歯切れがいいような生地を目指しています。生地には2種類の小麦をブレンドして使い、オーブンも、高温で焼きあげています。そうすることで、食べ応えのある食感の生地ができあがるんですよ。でも同時に、焼きムラが生まれやすいので、そのあたりの技術が難しいですね。

また、バターの値段が高いポルトガルでは、基本的にはマーガリンが使われているんです。牛乳も卵も、淡白なものを使っていて。うちでは、軽めのバターに、玉子クリームには脂肪分の高い生クリームを使っています。

最初のうちは、本場の味をそのまま再現しようと思って開発にあたったのですが、レシピや材料をアレンジした方が、おいしくできることに気づいたんです。結果的に、国産の素材をメインに使うことで、本場よりもリッチなエッグタルトに仕上がったと思います。

ポルトガルから届く塩。やさしく強い、味の決め手

中のクリームも、甘さがしっかりとあって、食感も滑らかですね。しっかりめの生地とコントラストがあるのに、口の中でバランスよく絡みあいます。卵にも、やはりこだわりがあるのでしょうか?

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佐藤昔から主人(オーナーシェフである佐藤幸二さん)も私も「松涛カフェ(渋谷Bunkamuraにあるカフェ、現「フランネルスタイルコーヒー」)」のシフォンケーキが大好きだったこともあり、そこで使われている「昔の味たまご」を選びました。雑味がなくて、味も均一でぶれない。エサ、水、環境をきちんと管理して生産される卵で、おいしさはもちろん、体にもやさしいんです。濃厚でしっかりしていて、臭みがまったくなく、いくらでも飽きずに食べられるんです。

生地に、少し塩気を感じますね。

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佐藤そうなんです。実は、“塩”が味の決め手。他の素材はぜんぶ国産ですが、塩だけは、ポルトガル産のものを使用しています。

日本の塩とくらべると、味に違いが出るものなのでしょうか?

佐藤日本のものは、どれだけ入れても味がはっきりしないんです。優しすぎてエッジが効かない。イタリアのものも試しましたが、マイルドなのに塩気がちゃんと引き立っているポルトガルの塩が、いちばんしっくりきました。玉子クリームと合わさったときにも非常にきれいなまとまりかたをするんです。ほどよく塩気があるので、ビールや、微発泡の白ワインとも合うんですよ。

“できたてじゃなくてもおいしい”が、本当の“おいしい”

やはり、できたてがいちばんの食べごろでしょうか?

佐藤できたても、もちろんおいしいのですが、実は、冷凍してもおいしいんです。クリームがひんやりとして、生地は、よりバリバリとした食感になりますよ。実際、「冷凍をしてから食べるほうが好き」というファンも多いんです。常温だと、夏なら1日、冬なら2、3日しかもちませんが、冷凍保存すれば、1ヶ月くらい保存できるので、試してみてください。

冷凍でもおいしいなら、たくさん買い置きしておいて、好きなときに食べられますね。おすすめのアレンジなどは、ありますか?

佐藤本場ポルトガルでは、シナモンをかけて食べるのが一般的です。店内には、シナモンディスペンサーを用意して、その場でかけられるようにしています。最近は、テイクアウト用のシナモンバッグをつくりました。シナモンをたっぷり振りかけたあと、粉砂糖を軽くまぶします。シナモンが香れば、ちょっぴり大人な味わいのスイーツになりますよ。

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お手拭きのようなパッケージがかわいいシナモンバッグ(左)と、テイクアウト用のボックス(6個入り)(箱代54円)
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開拓の余地ある料理で、日本の舌にあたらしい楽しみを

そもそも、どうしてポルトガルのお菓子をやろうと思ったんですか?

佐藤主人は、もともと、海外でイタリアンやフレンチのシェフとして働いていました。日本に帰ってきて、イタリアやフランスの料理を出すお店の多さに驚いて、同じことをやっても「数あるレストランのひとつ」としか思われないだろうと考えたんです。やるなら、日本に少ない、開拓の余地ある国の料理。そうして選んだのが、ポルトガル料理だったんです。

たしかに、ポルトガル料理というと、今でも珍しい気がします。

佐藤確かに珍しかもしれませんね。けれど、米、肉、魚を食べる文化もあるポルトガルの料理は、間違いなく日本人の舌にあうはずだと確信していました。そうして、ポルトガル料理のワインバー「クリスチアノ」やポルトガルの魚料理の店「マル・デ・クリスチアノ」を、同じエリアに出店することになり、その後テイクアウトのお店をなにかと思い、「ナタ・デ・クリスチアノ」を出店することになりました。

テイクアウト専門店に、エッグタルトを選んだのはなぜですか?

佐藤テイクアウト専門店を何にしようかと考えていたとき、ポルトガルのパン屋をしようかという案もあったのですが、パン屋さんは近辺にもたくさんあるし、他店とは違うものを売り出していきたいと思ったんです。

それで、本店「クリスチアノ」で出すデザートのなかでダントツに人気だったエッグタルトをメインにしたお店をしようと。レシピ開発のために、向こうで食べ歩いて、有名な店はほとんど行きました。それ以外のお店も、見つけたら、ぜんぶ入って。そうやって私たちの「ナタ・デ・クリスチアノ」がうまれました。

エッグタルトだけじゃない。肉感しっかりチキンパイ「エンパーダ・デ・フランゴ」

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もちろんエッグタルト以外にも、本場の味をそのままに楽しめるお菓子が豊富に揃う「ナタ・デ・クリスチアノ」。「エンパーダ・デ・フランゴ」も、そのひとつ。ポルトガルでは、エッグタルトの隣には、このチキンパイが必ずと言っていいほど売られているそうです。

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チキンパイについても、きかせてください。

佐藤本場のチキンパイは、さまざまな調味料が使われ、シンプルなものからツナマヨっぽい仕上がりのものまでいろいろですが、うちでつくっているのは、塩とナツメグを入れて、チキンの肉感を感じられる惣菜菓子に仕上げています。

素材や製法へのこだわりもありますか?

佐藤エッグタルトと同じく、”火入れ”が、おいしさの鍵をにぎっています。低温で、12時間じっくり火を入れることで、“鶏ハム”ができあがる。そこに、調味料を混ぜていきます。生でも食べられる「築地宮川」という鶏を使っているから、余計な味付けをしなくても、おいしさ十分なんです。

地元にくらすひと、遠方からわざわざやってくるひと、差し入れのために100個以上を予約するひと、さまざまなお客さまに愛されるエッグタルト。ポルトガルの素晴らしい料理を日本に広めたいという想いから生まれた、本場を超えるほどのリッチなエッグタルトなのでした。

■ 商品リスト

「パステル・デ・ナタ」216円
「エンパーダ・デ・フランゴ」238円

■ 教えてくれた人

佐藤なつみさん
お店づくりからレシピ開発まで、夫婦ふたりでこなす。2017年2月に本店Cristiano’sの姉妹店「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」もオープン。

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